• BPnet
  • ビジネス
  • IT
  • テクノロジー
  • 医療
  • 建設・不動産
  • TRENDY
  • WOMAN
  • ショッピング
  • 転職
  • ナショジオ
  • 日経電子版

韓国は“競争の激しい格差社会”というのは本当か

日本と韓国どちらの格差が大きいか検証してみる

2011年1月17日(月)

  • TalknoteTalknote
  • チャットワークチャットワーク
  • Facebook messengerFacebook messenger
  • PocketPocket
  • YammerYammer

※ 灰色文字になっているものは会員限定機能となります

無料会員登録

close

 韓国は格差が大きな国との認識が日本では一般的です。日本も格差が拡大していますが韓国に比べたらまだましだ、と考えている人も多いでしょう。しかしこのような考えの根拠は、「受験、就職、昇進の際の競争が日本以上に激しく、脱落すると低賃金を余儀なくされる」、「財閥企業で働く高給取りがいる一方、非正規職でその日暮らしの人がいる」といった断片的な情報を根拠にしている場合がほとんどです。

断片的な情報で格差を論じても意味がない

 一国における所得格差を測るためには、世帯の所得から見る場合が一般的です。その場合は全ての世帯の所得分布を推計できる調査のデータを使って、一部で見られる例外的な現象ではなく、全体的な格差の状況を把握する必要があります。また所得も賃金のみならず、事業所得、財産所得、公的な現金給付などを考慮する必要があります。つまり断片的な情報から韓国の格差の大小を議論することは意味がありません。

 そこで以下では、(1)日韓の所得格差の水準、(2)日韓の所得格差の動向、(3)日韓の所得格差拡大要因を比較して、韓国における格差の姿を正確に把握したいと思います。

 まず日韓の所得格差の水準を比較しましょう。所得格差がどの程度か示す指標としてはジニ係数がポピュラーです。これはゼロから1までの値をとり、1に近づくほど所得格差が大きいことを意味します。

 ジニ係数を見る前に、“相場観”についておさらいをしておきましょう。先進国であれば、ジニ係数は平均である0.311前後に集中しています。OECD加盟30カ国のジニ係数(後述します)の標準偏差は0.055なので、平均的に0.256から0.366の間に集まっていると言えます。よって0.1の差は決定的に大きいと考えられます。最も平等な国のジニ係数が0.1上昇すると、30カ国中22位となり、下から数えた方が早い順位になってしまいますし、0.05上昇しても13位にまで後退してしまいます。

 また日本の所得格差は拡大していますが、25年で0.04足らずの上昇をもって格差が拡大していると判断しています(※1)。よってジニ係数は、0.05の差でも顕著な差となります。

韓国では雇用所得の格差は大きいのか?

 ジニ係数の国際比較をする場合、最も手っ取り早い方法は、2008年に公表された”Income Distribution and Poverty in OECD Countries”(以下「OECD報告書」とします)が示している加盟国のジニ係数を比較することです。この報告では、2000年半ばのOECD加盟国における、世帯人数で調整した世帯可処分所得のジニ係数などを計算しており、所得の概念、対象世帯の範囲を各国とも同じものとすることで国際比較を可能としています。

 OECD報告書によれば日本のジニ係数は0.321、韓国は0.312であり、日本の所得格差が若干大きいことが分かります(※2)(図1)。このジニ係数は、税や公的現金給付など再分配後の所得(=可処分所得)のものであり、再分配がなされる前の所得のジニ係数を見ると、日本が0.372、韓国が0.329と、韓国のジニ係数は日本より顕著に低くなっています。

 つまり元々の所得で見れば韓国の格差は日本よりかなり小さいのですが、韓国の所得再分配機能が弱いことから、再分配後には所得格差の程度の差が縮まっているのです。重要な点は、再分配前の日本のジニ係数が顕著に高いことから分かるように、働くことで得られる雇用所得などの格差は、日本より韓国がかなり小さなことです。つまり韓国は競争が激しく雇用所得の格差が大きいという認識は正しくありません。

※1 「全国消費実態調査」の場合。「所得再分配調査」は0.07の変化
※2 OECDが日本のジニ係数を計算する際に、「国民生活基礎調査」を使っていることには留意が必要。総務省は「全国消費実態調査」の公表資料においてジニ係数を示している。この数値は国際的な枠組みにもとづいた可処分所得、すなわち非経常所得が含まれない可処分所得が使用されており、世帯人数を考慮した調整もされているので、これを日本のジニ係数としてOECDが計算した他国の数値と比較することもできる。最新の数値は2004年のもので0.278となり、このジニ係数と比較すれば日本のジニ係数は韓国より低いという結果が得られる。ただしこの場合も、再分配前の所得のジニ係数は日本の方が韓国より大きくなっている

コメント9

「知られざる韓国経済」のバックナンバー

一覧

「韓国は“競争の激しい格差社会”というのは本当か」の著者

高安 雄一

高安 雄一(たかやす・ゆういち)

大東文化大学経済学部教授

1990年一橋大学商学部卒、同年経済企画庁入庁、調査局、外務省、国民生活局、筑波大学システム情報工学研究科准教授などを経て現職。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

日経ビジネスオンラインのトップページへ

記事のレビュー・コメント投稿機能は会員の方のみご利用いただけます

レビューを投稿する

この記事は参考になりましたか?
この記事をお薦めしますか?
読者レビューを見る

コメントを書く

ビジネストレンド

ビジネストレンド一覧

閉じる

いいねして最新記事をチェック