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相互交流が生んだ日本人学生の驚き、中国人学生の気づき

『80後』エリートの旺盛な情報欲

2011年1月20日(木)

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 2005年、日中関係は荒れていた。所属する北京大学のすぐそばで「反日デモ」が起きた。四川省の成都、上海、遼寧省の瀋陽などの都市でも大規模なデモ集会が行われ、中国国内には日本に対するネガティブキャンペーンが充満していた。デモの現場には、「日本の国連常任理事国入りが気に食わない」というナショナリズムをむき出しにする民衆が横断幕を掲げ、日本の国旗を燃やしていた。昨日のことのように覚えている。

 日中双方の国内で、感情的に相手を憎むだけの世論がインタラクティブに作用していた。筆者は「これはいけない。両国には経済、文化などこれだけの相互依存関係があるのに。もったいない」と感じた。北京大学と東京大学の学生に声をかけ、「悪循環を突破するための行動を若者が起こそうじゃないか」と提案し、具体的に企画を始めた。

日中の若者フォーラム『京論壇』を創設

 その結果が『京論壇』という若者フォーラムである。北京大学と東京大学の学生から参加者を選抜し、毎年、相互訪問させる。『京』は言うまでもなく、東京、北京の共通項を抽出したものだ。スタッフ含めて、両大学合わせて50人程度の少数精鋭制のグループ。言語はあえて第三言語である英語に設定した。2006年夏の初回は、経済協力、安全保障、歴史認識、環境問題の4つをテーマにした。ディスカッションしたのはもちろんのこと、官庁訪問、政治家との対談、企業とのセミナー、工場へのフィールドワークなど、多種多様な活動を国境をまたいで行った。期間は2週間。最後は、東京で報告会を実施した。

 東京・北京両大学の先生方にはアドバイザー、講師として大変お世話になっている。両国の社会、特に企業家の皆さんからの支援がなければフォーラムは成り立たない。もちろん、メディア関係者の協力も「発信力」という意味で、欠かせない。筆者は同論壇の創始者の一人として、今後とも積極的に若者の気合と知恵を社会に発信し、相互交流の発展に貢献していきたいと考えている。

 今年の夏が第6回目になる。少なくとも筆者が生きている間は続いていくだろう。適当な時期に本連載でも、議論の様子を取り扱いたい。

日本人学生の驚き「国民は何も知らない、ことはない」

 北京大学のキャンパス内に「未名湖」という綺麗な湖がある。マラソンを趣味にする筆者は、未名湖を囲む1周1.5キロのコースをよく走ったものだ。北京は、夏は暑く、冬は寒い。春と秋は極端に短い。皮膚感覚で言うと2週間くらいだろうか。

 2006年に実施した第1回フォーラムの北京セッションが終わった9月中旬、筆者は、東京大学からの参加者数人と未名湖を散歩していた。お世辞にも空気が澄んでいるとは言えない北京であるが、未名湖の畔では、なぜか様相が異なる。際立った秋の夕日が美しく、心を暖めてくれた。

 参加者の女子学生が言った。

 「加藤さん、素晴らしいフォーラムを企画してくれてありがとう。対中観が180度変わりました。私は中国をまるっきり誤解していた。もちろん、北京大学の学生が中国の今をどれだけ体現しているかは検証が必要でしょう。でも、少なくとも、私たちが日本で感じているような、共産主義体制下で国民は何も知らない、生活に自由が全く無い、どこまでも統制が効いている、という状況ではないんですね。北京の古き街を歩いても感じましたが、住民たちは外国人と接することに違和感が無いし、包容力を持って、多様性を受け入れている」。

 筆者は参加者に、まさに中国のそういう素顔を体感してほしかった。勝手にうれしくなり、はしゃいでいると、もう一人の男子学生が続けて語りかけてきた。

 「俺、反省したよ。北京大学の学生はとにかく英語がうまい。グローバルな視野、国際化への適応という点では東大生をはるかにしのいでいる。彼らは色んな方法を使って世界の情報に接している。欧米の新聞を読み、英語の本をオリジナルで読み、トレーニングの一環として翻訳なんかもしていた。それに比べて俺たちは民主主義、言論の自由とかいう上からの押し付けに甘んじて、努力を怠っていた。このままじゃいけないと思ったよ」。

 2週間の日中合同合宿の成果だった。筆者は両国のこれからを担うエリートたちに、お互いに刺激を与えあってほしかった。英語の使用を徹底し、目の前に存在する時事問題を歴史的に、構造的に、実質的に解明しながら、信頼関係を築き、己を省みることを通じてともに成長していく。我ながら、有意義なプラットフォームを構築することができたと思っている。『京論壇』を支持してくれているすべての関係者に、この場をお借りして感謝の意を申し上げたい。

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「加藤嘉一の「脱中国論」現代中国を読み解く56のテーゼ」のバックナンバー

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「相互交流が生んだ日本人学生の驚き、中国人学生の気づき」の著者

加藤 嘉一

加藤 嘉一(かとう・よしかず)

国際コラムニスト

現在米ハーバード大学アジアセンターフェロー。世界経済フォーラムGlobal Shapers Community(GSC)メンバー。中国版ツイッター(新浪微博)のフォロワー数は150万以上。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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