「中国発 経済観察報」

民営企業のメッカ「温州」の苦境

売上増加も利益は減少、製造業が崖っぷちに

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2011年1月24日(月)

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温州民企報告:去年不賺錢
 経済観察報記者 陳周錫

今週の読みどころ(ミニ解説)

 浙江省温州市は、民間経済が中国で最も発達しているとされる同省の中でも起業家精神が盛んな都市として有名です。東シナ海に面し、後ろ側を深い山に囲まれた温州は、かつては中央政府の目が届きにくい“陸の孤島”でした。このため1970年代末に改革開放政策が始まった直後から、民間経済が“見切り発車”的に最も早く勃興したのです。

 温州の民営企業が製造した衣料、靴、傘などの日用品は、物不足だった当時の中国で人々に大いに歓迎されました。しかし同時に、温州製品は「安かろう悪かろう」の代名詞にもなりました。それから30年、温州は民営企業のメッカとして目を見張る発展を遂げ、市場も中国から世界に広がりましたが、温州製品のイメージは今もあまり変わらないようです。

 今週は、そんな温州の最新事情のレポートです。中国の経済メディアは、草の根の経済活力を測るための“先行指標”としてしばしば温州を取り上げます。温州商人の動きを見れば、中国経済の目下の方向性や問題点が浮かび上がってくるのです。本文中では触れていませんが、民間経済の先進地でなぜ製造業の高度化が進まないのか。その原因を探ることは、日本企業の中国ビジネス戦略にも有効なヒントを与えてくれるはずです。

(岩村宏水=ジャーナリスト)

 春節(中国の旧正月)を目の前に、温州でソファー工場を経営する阿勝*はこの1年を振り返ってみた。結論はひとこと「もうからなかった」だった。

*「阿」は親しい人の名前の前につける呼称。この場合は「勝さん」という意味。

 阿勝だけではない。温州の民営企業のオーナー経営者からは、口々にこんなぼやきが聞こえてくる。

 「2010年は売上高はかなり伸びたが、利益は逆に大幅に減った。状況は世界金融危機の時より悪いくらいだ」

 温州中小企業協会の会長を務める周徳文によれば、温州の中小製造業の利益率はわずか1〜3%しかなく、多くの企業が生き残れるかどうかの瀬戸際に立たされているという。

“薄利多売”しか選択肢はない

 2年前の世界金融危機では、外需の激減によって多くの温州企業が倒産したり、操業の一時停止に追い込まれたりした。一方、最近の経営危機の原因は人件費の上昇、原材料価格の高騰、人民元の対ドルレート上昇などだ。

 経営コストの増加に対し、製品の付加価値を高める有効なすべを持たない企業は、市場から淘汰を迫られている。統計によれば、温州市で2010年に営業許可証を取り消された企業は2000社余りに上り、その半数が製造業とその関連企業だった。世界金融危機が起きた2008年の3000社に比べればまだましだが、生き残った企業も厳しい状況に置かれている。

 昨年12月26日、阿勝は食事も抜きでトラックを運転し、工場から80キロメートルほど離れた大手家具卸にソファーを届けた。阿勝によれば、彼の工場のソファーはよく売れており、昨年の販売量は前年より2〜3割も増えた。「うちのソファーは値段の割に質がいいから、販売店や顧客に好評なんだ」

 ところが昨年下半期から、原材料の価格が大幅に上昇。例えばソファーの中に詰めるスポンジの価格は20%も上がった。そこで阿勝は製品の値上げを打診したが、家具卸の反対にあって実現しなかった。「工場を続けるためには、“薄利多売”しか選択肢はない」と、阿勝は仕方なさそうに言う。

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中国の「経済観察報」は2001年創刊の週刊経済情報紙。発行部数は約68万部。政府系の機関紙ではなく、民間資本によって創刊・運営されている新興経済メディアの草分けの1つ。経済政策から金融、産業まで幅広くカバーするとともに、「理性、建設性」という編集方針を掲げ、センセーショナリズムを排した客観的な報道や冷静な分析に定評がある。北京を中心に、若手インテリ層の支持を集めている。

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