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「物乞い子供」の写真が続々アップされている理由

根絶ほど遠い誘拐事件、始まった草の根救済運動

2011年2月16日(水)

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 北京の日本大使館や米国資本の高級ホテル「セント・レジス」などがある建国門街は心優しい金払いのいい外国人観光客が多いこともあってか、夕暮れには垢に汚れた子供の物乞いがいつも、何人かいた。

 しかし、私は彼らが近づくとひどくイライラして、焦った。一般に物乞いは組織化されていて、裏では黒社会的な人物が仕切っていることが多い。だから子供に同情して金をやっても、後ろで監視している「母親」役の大人か裏の物乞い組織のボスに吸い上げられるのは分かっている。かといって、か細い手を差し伸べてすがってくる子供を足蹴にすることもできない。どうしたらいいか分からなくなるからだ。

仲間の物乞いには身体障害者もいる

 それである日、「シーカイチェン(10元)、シーカイチェン」と声をあげて、まとわりつく男の子の垢だらけの腕をぐっと捕まえて、「あなたはいくつ? お父さんとお母さんはどこ?」と詰問したことがあった。2007年のクリスマスの頃だ。

 男の子はさすがに最初おびえていたが、そのあと、コンビニでアイスクリームを買ってやると、少し打ち解けて話すようになってきた。買い与えるものがアイスクリームだったのは理由がある。時間がたてば溶けてしまい、あとで物乞い組織の大人たちに巻き上げられることもないだろうから、と判断したからだ。ただ、今思えば凍えるような夕暮れ、もっと体の温まるものを買ってやればよかった。それでも彼は、白く霜のついたアイスクリームのカップに唇をくっつけるようなしぐさで喜びをにじませ、2、3の質問には答えてくれた。

 年齢を聞けば、5歳と答えた。故郷はどこかと聞けば河南(省)と答えた。とりあえず、そう答えろと教えられているのだろう。彼のなまりはどちらかと言えば、山東省なまりだ。私が彼と話しこんでいる様子を遠巻きに眺めている「母親」役について、「本当のお母さんか?」と聞けば違うと答えた。「なぜ、北京にきたの?」「おじさんが、北京で稼いでこいって」「おじさんって血がつながっているの?」「うん」「本当は学校に行く年じゃないの?」「…」

 そのあと、顔を見知りになって、会うたびに、アイスクリームやちょっとしたお菓子で釣って、聞き出したことを総合すると、彼は北京市内の撤去予定の空き家に大勢の仲間の物乞いたちと共同生活し、「老板(ラオバン=ボス)」と呼ばれる男の指示に従って、「母親」役とペアで建国門外界隈に物乞いに出ているのだという。

 彼は血のつながったおじさんから、家が貧乏だから両親を助けるために北京でお金を稼いでこいと言い含められて、その老板に預けられた。老板は「いい人」らしい。つまり虐待などはなく、可愛がってくれるようだ。彼は老板に褒められたくて、毎日物乞いしている。仲間の物乞いには身体障害者もいること、彼自身は農村の暮らしより、北京の暮らしを結構気に入っているようなことを言っていた。

 彼は意外に頭の回転がよく、おそらく本当は5歳より年を食っているだろう。外国人観光客にお菓子などをよく買ってもらっており、それが楽しいようだ。

 私はある時、遠巻きに私たちを見守っている「母親」役の女物乞いに聞こえないように、雅宝路の物乞い組織のアジトに案内してくれとか、老板に故郷から訪ねてきたおばさんといって会わせてくれないかとか、彼に交渉を持ちかけた。物乞い組織の正体を見極めたいと考えた。100元あげるよ、とささやくと、彼はその気になったようだが、結局その親子物乞いは春節前には姿を見かけなくなった。北京市が五輪に向けた市内の管理を強化し、ホームレスや物乞いたちは市外へと追い払われてしまったらしい。

コメント7件コメント/レビュー

物乞い自体は中国に限らず珍しくも無いし、格差は米露の国土の広い大陸でも大きい。日本でもほんの60年前には珍しくも無い話だったのであって、今の格差程度になってから1世紀も経っていない。特に中国は国土が広く人口も多いのであるから、GDP(消費総量)の総量が上がったところで富の底上げに至るにはまだ相当の時間が必要なことは考えるまでも無い。中国にスポットをあてるのであれば、こういった一般論で説明しきれない中国特有の現象を取り上げるか、或いは極所にスポットをあてた特異点を知りたいし、物乞いにスポットをあてるのであれば一部先進国も含めた諸国と比較するか、或いは印中にしか見られない共通点に注目する等の記事が読みたかった。過去からの時間軸の中で物乞いの子供にスポットがあたるようになった中国の文化的制振土壌的或いは世間の空気的な変遷でもよかった。本記事はそういったフックは随所に見当たるものの、目新しさが無かったのが残念だった。(2011/03/17)

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「「物乞い子供」の写真が続々アップされている理由」の著者

福島 香織

福島 香織(ふくしま・かおり)

ジャーナリスト

大阪大学文学部卒業後産経新聞に入社。上海・復旦大学で語学留学を経て2001年に香港、2002~08年に北京で産経新聞特派員として取材活動に従事。2009年に産経新聞を退社後フリーに。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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記事のレビュー・コメント

いただいたコメント

物乞い自体は中国に限らず珍しくも無いし、格差は米露の国土の広い大陸でも大きい。日本でもほんの60年前には珍しくも無い話だったのであって、今の格差程度になってから1世紀も経っていない。特に中国は国土が広く人口も多いのであるから、GDP(消費総量)の総量が上がったところで富の底上げに至るにはまだ相当の時間が必要なことは考えるまでも無い。中国にスポットをあてるのであれば、こういった一般論で説明しきれない中国特有の現象を取り上げるか、或いは極所にスポットをあてた特異点を知りたいし、物乞いにスポットをあてるのであれば一部先進国も含めた諸国と比較するか、或いは印中にしか見られない共通点に注目する等の記事が読みたかった。過去からの時間軸の中で物乞いの子供にスポットがあたるようになった中国の文化的制振土壌的或いは世間の空気的な変遷でもよかった。本記事はそういったフックは随所に見当たるものの、目新しさが無かったのが残念だった。(2011/03/17)

18世紀の英国産業革命のとき子供が工場で長時間働かせられていたことを思い出せば、急速に経済発展したのだから無理もない。40数年まえの文化大革命の頃は飢餓で死んでいってたのだから。木の根っこや、きのこを探したり、1つの焼き芋を数人がじっと見つめて牽制しあったり。以前はラジオ中国語応用編でその頃の話が聞けたけど最近はない。子供の人身売買はアジア各国で暴力団が主にしている。日本では清国人に買われた、からゆきさんの話が有名。むかし国交のなかったフィリッピンのトンド地区でたくさんの子供の物乞いを見た。今、日本以外のアジアの経済成長率は高いので良くなる筈だ(2011/02/18)

中国に行ったことの無い方々、或いは名所旧跡への観光やオリンピック・万博でしか訪中した経験しかない方々にはインパクトの有る記事かと思います。しかしながら、幼い子供の物乞いは中国に限らず、貧しい国々では見かけるものであり、単純に「格差や体制の問題」とまとめてしまわないで、中国特有の事情にまで斬り込み、開示してこそ福島氏の記事と思いますが、如何でしょうか? ◆GDPが世界第2位の国で、しかも共産主義社会の実現を標榜してきた国で、何故この様な現状に至ってしまったかを解き明かしていただければと。 もちろん、1人当りGDPが同程度のアルバニアとかフィジーとかタイと比較しても良いでしょうし、政治体制以外で中国人の気質や考え方(地方によって異なるが)を基に分析しても良いでしょうし。先ずは、中国に対する一般論から掘り下げていただければと。(2011/02/16)

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