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希望はソウル大学、だめでも絶対ソウルの大学

“学歴インフレ社会”韓国の教育事情(1)

2011年2月21日(月)

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 韓国のイメージが日本に誤って伝わっている例は数多くありますが、教育に対するイメージ、すなわち、学歴至上主義を背景とした厳しい受験戦争、塾通いのための重い教育費負担、せっかく大学を卒業しても就職できないなどについては、比較的状況が正しく伝わっているようです。

 今回から3回シリーズで、韓国の教育の現状について改めて見てみたいと思います。まずは学歴至上主義を背景とした厳しい受験戦争を取り上げます。

高い進学率には専門大学への進学者も含まれている

 韓国における教育の特徴は、大学進学率の高さです。政府の発表によれば2010年には高校を卒業した人の79%が大学に進学しています。日本政府が公表している大学進学率は56.8%なので、政府の公式値を比較すると、韓国の大学進学率が著しく高いという結果となります。

 ただしこの2つの数値を単純に比較する際には注意が必要です。なぜなら韓国の大学進学者には専門大学への進学者も含まれており、専門大学への進学率が24.6%にも達しているからです。専門大学という日本にない学校の性格をきちんと把握しないと、誤った国際比較となってしまいます。

 専門大学とは、就学年数は2~3年で、主に工学技術の職業人を養成する学校であり、法律で高等教育機関として位置づけられています。卒業すると、Diplomaと訳される「準学士」が得られます。日本では短大に相当すると考えられることが多いですが、実際はそのまま対応するわけではありません。では、専門大学は日本のどの教育機関に相当するのでしょうか。

 高卒という入学要件と2~3年との就学年数によれば、短大、高専の後期課程、専修学校の専門過程に相当します。また政府の統計上の位置づけから考えると、短大、高専の後期課程になります。取得できる学位がDiplomaと訳されることからは、短大、高専の後期課程、文部科学大臣が認定する専修学校の専門過程に相当します(※1)。以上から、専門大学に相当する日本の教育機関は、広く考える場合は、短大、高専の後期課程と専修学校の専門過程、狭く考える場合は短大、高専の後期課程と考えられます。

 日本政府が公表している大学進学率は、大学、短大、高専の後期課程への進学者が反映されています。前述の日韓の大学進学率は、韓国の大学と専門大学への進学者と、日本では大学、短大、高専の後期課程の進学者を比べたものと考えれば、韓国の方が20%以上も進学率が高いという結果となります。

 一方、韓国の専門大学に相当する日本の教育機関を広くとらえ、専修学校の専門課程への進学者を含めた場合、日本の進学率は異なってきます。前述の56.8%に専修学校の専門課程への進学率である15.9%を加えると、日本の大学進学率は72.7%と韓国の進学率に近くなります。

 なお、単純に四年制大学への進学率を比べた場合は、韓国53.0%、日本47.8%と、韓国が5%程度上回っています。

 このように日韓における大学進学率の差は、一般にイメージされているほどは開いていない可能性が高いのですが、日本よりは大学進学率が高いことは間違いありません。とはいえ、韓国の大学進学率は昔から高かったわけではありません。大学進学率は1990年代初頭でも30%前後にとどまっていましたが、1993年前後から急速に高まり、2000年には80%を超える水準に達しました(図1)。高い大学進学率は、最近の特徴なのです。

 では、1990年代前半から大学進学率が急速に高まった理由は何でしょうか。

急速な少子化、経済力向上、大学定員増加が高進学率の背景に

 まず教育サービスの需要側、つまり大学に進学させる家庭側の理由で、具体的には出生率の急速な低下です。ソウル大学のチョヨンジュン教授は(※2)、出生抑制政策により出生率が低下して、1世帯当たりの子供数が減少したため、子供全員を進学させるようになったと指摘しています。韓国では1961年から1995年まで出生抑制政策を講じたこともあり、1960年に6であった出生率が、1984年には2を大きく下回り、1世帯当たりの子供数も減少していきました。

 また1970~80年代における高度成長、さらに1988年に労組が合法化されて以降の賃金上昇もあり、世帯の経済力が高まったことも進学率の高まりの理由として挙げられます。

※1 なお専門大学は設立時の歴史や輩出する人材に注目すると日本の高専に相当する。そもそも専門大学は、1963年に中学卒業後に5年間の教育を行う実業高等専門学校が前身。これはまさしく日本の高専に当たる。しかし5年間の就学期間は長く中途で脱落する学生が続出したので、1970年から高校卒業後2年間の教育を行うように改編された。よって専門大学が輩出する人材も、工学・技術、実学中心となっている。
※2 チョヨンジュン(2010)「大学進学最優先視風潮の費用と根源」(キクセウム他『学校別労働市場ミスマッチ分析と教育制度改善の課題』韓国労働研究院)、121~150ページ。

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「希望はソウル大学、だめでも絶対ソウルの大学」の著者

高安 雄一

高安 雄一(たかやす・ゆういち)

大東文化大学経済学部教授

1990年一橋大学商学部卒、同年経済企画庁入庁、調査局、外務省、国民生活局、筑波大学システム情報工学研究科准教授などを経て現職。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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手嶋 龍一 作家・ジャーナリスト