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アラブ民主化の嵐に、疲労困憊の中国メディア関係者

規制「する側」も「される側」も神経をすり減らす

2011年3月4日(金)

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 本連載の前半戦の山場として「中国民主化への道」というテーマを取り上げている。前回コラム「中国で民主化を目指すと、彼は一生を棒に振る」では、中国における民主化は一筋縄には進展しないだろう、という個人的観測を紹介させていただいた。若者、特に大学生という歴史的に重要な役割を果たす人々が、民主化に対して「後ろ向き」になっているからだ。

 中国が民主化すべきか、すべきでないか、どんな民主化が可能で、必要なのか、そのための具体的なアジェンダ、タイムテーブルはどうなのか、という問題は、連載のもう少し後で議論させていただきたい。

 2月に入って以降、「アラブにおける民主化への波」が止まらない。チュニジアから始まって、エジプト、バーレーン、リビアに波及している。ジャーナリストや学者、政府官僚などの先輩がたから、「加藤くんがこのタイミングで、中国の民主化について議論するのはタイムリーだし、大いに意義があると思うよ」という激励のお言葉を頂いた。アラブの動きを意識して、中国における民主化を取り上げたわけでは全くない。結果的に、リアリティーを持った議論になっていけばいいな、と思っている。

公安幹部から深夜の呼び出し

 2月末のある深夜のこと。筆者は拠点とする北京に居た。中国公安部で「社会の安定」を担当する局長から、早急に会いたいという電話をもらった。忙しかったし、眠かったが、筆者は了承し、いつものバーで会うことにした。

 電話で固有名詞は絶対に使わない。常に盗聴されていることを前提に、すべての言動に注意を払う必要がある。

 彼は既にいつものバーで待っていた。黒い革ジャンを着ていた。見るからにやつれていたが、両目はギラギラしていた。握手で再会を祝い、ジントニックを2つ注文した。互いに2口くらい飲んだところで、彼は冷めた面持ちで筆者に切り出してきた。

「貴国のメディアも含めて、西側諸国の関係者は、地球のどこかで、民衆が反体制的な動き、特に民主化へのムーブメントが起こすと、すぐに、次は中国だ!と主張する。いわゆるドミノ理論だ。しかし、そもそもアラブ諸国と中国では、国情や発展段階、国民性も全く異なるでしょう。中国にはああいう過激な宗教もないんですよ。なぜ、こうも簡単に両者をリンクさせるのでしょう? 加藤さん、どう思いますか?」

 古くからの友人だ。回りくどい話は必要ない。考えていることをそのまま伝えた。

 「国際社会における中国の地位がずいぶん向上している。各国が中国の発展段階に注目しているということですよ。誇りに思ってください」

 「もちろん、西側の一部には、自らの価値観・イデオロギーを押し付けたいがために、民主化の波が中国に及ぶことを期待する向きもあります。でも、それは今に始まったことじゃないでしょ」

 「そもそも、貴国の目覚しい発展に嫉妬する人たちは、その国民性や国情なんていう背景はあまり考えない。あなたがたが、自ら進んで、国民性や国情に関する情報として発信すればいいじゃないですか? それをしないで、『ただ西側は中国のことを理解していない』と言うのは傲慢じゃないですか? 理解されない責任と原因はあなたがたにもあるんじゃないですか?」

「アラブの影響を排除するため家にすら帰れない」

 公安幹部は少し考え込んでから、落ち着いた面持ちで反論してきた。
 「我が党の情報開示が足りない、透明性が足りない、態度が傲慢だ、そんなことも今に始まったことじゃないでしょ。からかわないでくださいよ。もちろん、私だって、個人的には、中国が民主化へ向かうほうがいいと思っていますよ。ただ、それは我が党が我が国民と、互いの利益を尊重し、両者を調整する形で、主体的に進めていくべきプロセスであって、外的要因を受けて、クーデターのような形で、仕方なく行われるべきものであってはならない」

 「加藤さんはどう思いますか? ここ数日だって、アラブからの影響を阻止するために、私たちはあらゆる手段を使って、不安要素を潰そうとしている。24時間体制ですよ。しばらく自宅にすら帰っていない。上は相当警戒していますからね」

 相槌を繰り返しながら聞いていた筆者は答えた。
 「歴史を振り返れば、民主国家から独裁国家ではなく、独裁国家から民主国家へという流れが主流です。いや、政治体制はほぼ例外なく、この向きで転換しています。民主国家同士は戦争をしない、というロジックにも一定の道理があるでしょう。特にここ数年、貴党は社会への統制を強化しています。それは転換期における必要経費というか、リバウンドのようなものでしょうね。発展の方向性としては、間違いなく民主化に進まなければならない。それが主体的なアプローチであるべき、という先生の見方には、全く賛同ですよ」

 このような調子で2時間ほど語りあった。午前3時、2人とも酔っ払って、ろれつが回らなくなったあたりで別れた。

コメント7

「加藤嘉一の「脱中国論」現代中国を読み解く56のテーゼ」のバックナンバー

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「アラブ民主化の嵐に、疲労困憊の中国メディア関係者」の著者

加藤 嘉一

加藤 嘉一(かとう・よしかず)

国際コラムニスト

現在米ハーバード大学アジアセンターフェロー。世界経済フォーラムGlobal Shapers Community(GSC)メンバー。中国版ツイッター(新浪微博)のフォロワー数は150万以上。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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