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“中国ジャスミン革命”の実現性

ツイート1本で100人以上を拘束した当局の大慌て

2011年3月2日(水)

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 中国の今年の「お正月映画」で、改革開放後の中国映画史上最高の興行成績を誇った姜文監督・主演の「譲子弾飛」(弾丸を飛ばせ)は、「革命」がテーマだった。

 もちろん、中東で起きている「革命」の連鎖を先取ったものではなく、呼びかけられたが不発に終わった「中国ジャスミン革命」(2月20日、27日)を予想したものでもなくて、単に辛亥革命100周年に合わせただけの企画だろう。だが偶然にしても、この映画に描かれている「革命」への政治暗喩と現在、中国の水面下で動いている何かが符合するようでもあり、よく党中央宣伝部の検閲を通ったものだと驚かざるをえない。

1000人以上の言論人に禁足、100人以上を拘束

 この映画は、民国(中華民国が成立した1912年を紀元とする紀年法)8年を舞台に、革命理想主義者(姜文)と悪徳地主(周潤発=チョウ・ユンファ)の対決を中心に描かれたコメディである。

 革命理想主義者が民衆を扇動しようとしても、民衆はちっともついてこず、地主をやっつけたとたん、民衆が押し寄せて家財道具を奪ってゆく。革命理想主義者の共に戦った兄弟たちまで、女と家財を奪って、馬がひく列車(馬列車=馬列主義=マルクス・レーニン主義の暗喩)に乗って、発展の象徴「上海・浦東」へと走ってゆく、というラストで締められている。

 姜文がこの映画を撮り始めたころは、中東がこんな状況になり、よもや中国当局がこれほどまでに「革命」を恐れることになろうとは思いもしなかっただろう。私はこの連載の1回目で、『“中東革命”で現実味、次の「天安門事件」』(2月9日)と題した原稿を書いた私自身、まさかその直後、本当に「中国ジャスミン革命」を呼びかけるツイートが発信されるとは思っていなかった。

 集会の呼びかけは20日、27日の状況を見る限り、「不発」に終わった。これを見て、中国で「革命」などあり得ないのだ、メディアが騒ぎすぎだった、ツイッターに踊らされたと、評する人もある。だが、わずか1本のツイートによる集会の呼びかけで中国共産党は公安警察、サイバーポリスを大動員し、1000人以上の体制外言論人に禁足をかけ、100人以上を拘束し、国家政権転覆扇動容疑で逮捕者まで出た。軍にはテロ警戒が出され、日常生活に支障をきたすほどネット統制を強化した。

 その恐慌ぶりを見れば、中国当局こそ「革命」の可能性を真に恐れていることが垣間見える。やはり、そこまで恐れるほど中国には危機が内在しているのか、改めて考えてみたい。

毎日どこかで200~300件の集団事件が発生

 1回目の「中国ジャスミン革命」が呼びかけられた20日が「不発」と報道されたあと、何人かの雑誌などの編集者や記者から電話があって「中国で革命があると思いますか」と聞かれた。それで、私は「革命」という言葉を「体制変革」と言い直して、中国国内の状況は体制変革が起こり得る条件というのはかなり揃っていますよ、と説明した。

 1つは貧富の差。貧富の格差の指標「ジニ係数」が上昇しており、国営新華社通信の世界問題研究センター研究員は「2007年で0.48に達していたジニ係数はすでに0.5を超えた」と昨年5月に発言している。ジニ係数0.4を超えると社会不安を引き起こす“レッドゾーン”、0.5を超えると暴動が頻発する“危険水域”と言われている。

 中国は国土が広いので目立たないが、官民衝突や集団抗議など、集団事件と呼ばれるものが2005年で8万7000件と発表された。現在は10万件と推計されている。毎日全国どこかで200~300件の事件が発生している計算になる。

 中国は豊かになりつつあり、貧富の差があっても庶民が底上げを実感する限り、体制変革を望まないですよ、という人もいるが、エジプトもリビアも1人当たりGDPは中国よりずっと高い。むしろ民衆から起こる体制変革の運動は、ある程度の豊かさも必要条件だと言われている。自分の腹が減っていては革命どころではない。

 そして、体制変革を願う人たちは中国内外に存在する。

 チベット族やウイグル族の民族派に対する弾圧は、いまなお耳を疑うほど苛烈だ。邪教として迫害を受けている法輪功や天安門事件の遺族、被害者、いつか祖国に戻りたいと願う亡命華人らも、体制変革を願っている。彼らの組織力や資金力、国内の庶民への影響力がいかほどか不明だが、それを目指して活動している人たちは、少数ながらいるのだ。

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「“中国ジャスミン革命”の実現性」の著者

福島 香織

福島 香織(ふくしま・かおり)

ジャーナリスト

大阪大学文学部卒業後産経新聞に入社。上海・復旦大学で語学留学を経て2001年に香港、2002~08年に北京で産経新聞特派員として取材活動に従事。2009年に産経新聞を退社後フリーに。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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