• ビジネス
  • IT
  • テクノロジー
  • 医療
  • 建設・不動産
  • TRENDY
  • WOMAN
  • ショッピング
  • 転職
  • ナショジオ
  • 日経電子版
  • 日経BP

香港の本屋で占う「民主化革命の行方」

「市民社会」なき中国でコンセンサスは得られまい

2011年3月8日(火)

  • TalknoteTalknote
  • チャットワークチャットワーク
  • Facebook messengerFacebook messenger
  • PocketPocket
  • YammerYammer

※ 灰色文字になっているものは会員限定機能となります

無料会員登録

close

 出張でよく香港を訪れる。仕事が終わり東京に戻る飛行機に搭乗する前に、時間があれば空港の中にある本屋に必ず立ち寄るのが楽しみの1つだ。極めて狭く小さい土地という意味の『弾丸の地』と言われる香港で、数百人が同時に飲茶できる大型レストランは珍しくないが、本屋を探すのは至難の業である。

 10年前、石を投げれば本屋に当たるほど書店が沢山あった東京で長く生活していた私は、香港に駐在した当初、香港人がいかに本を読まないかと憤慨したことがある。しかし、空港は違う。売り場面積の広さはともかく、本屋(正確にいえば、本が置いてある店舗)の数は「本屋王国」の成田空港や羽田空港より多いような気がする。

 乗降客数が世界有数の香港空港では、時計やバッグなど世界のブランド品を扱う免税店やお土産店が林立し、テナント料は恐らく安くないはずだが、なぜ、儲けの少ないと思われる本屋が意外に多いのか。香港人の鋭い金銭感覚から不思議に思わざるを得なかった。

「大陸禁書」は誰が購入しているのか

 香港空港の利用回数が増えるにつれ、その謎がだんだん解けてきた。よく観察してみると、本屋は免税店に負けない賑わいをみせている。その人気の秘訣は陳列されている本の中身にある。

 洋書や村上春樹の最新作の中国語版などが置いてあるものの、中国関連、とりわけ政治関連のものが圧倒的に多い。これが空港にある本屋の共通点である。最近、立ち寄った本屋の店頭に陳列されていたのは、胡錦濤総書記の後継者と有力視されている習近平氏の伝記のほか、政府幹部の汚職や腐敗に関する告発本、ノーベル平和賞の受賞者である劉暁波氏の著作など、いずれも話題性の高い内容ばかりだった。

 また、本の帯に印刷されている「大陸禁書」という文字がやたらと目につく。中国大陸では販売禁止という意味である。しかし、このような内容の雑誌や書籍も、香港では堂々と販売されている。

 一方、香港に約6年間駐在した際、周りの香港人スタッフに聞いてみると、「大陸禁書」に興味を示す者がほとんどいなかった。1997年7月に香港が中国に返還されて以来、中国への関心が政治から経済へと変わったのが主因だが、「禁書」のほとんどは中国人が中国人のために書いたもので、香港はただその出版の機会と場を提供したにすぎないと見られていたためでもある。

 だとすると、「大陸禁書」は誰が購入しているのか。販売統計を見たわけではないが、香港空港の本屋で立ち寄るお客さんの雰囲気からみれば、大抵見当が付く。中国人(大陸客)が「大陸禁書」の最大の購買層ではないかと推測できる。

 近年、規制が大幅に緩和された結果、ビジネスや観光などの目的で香港を訪れる中国人が急増し、2010年、その数は延べ2268万人に達し、中国人の海外旅行総数(5740万人)の半分近くを占めるに至った。ブランド品や粉ミルクなどを買い漁る一方、知的好奇心を満たすため、「大陸禁書」を購入する訪問客も増えているとみられる。

 こういった需要があるからこそ、空港にあれだけの本屋ができたわけだ。昔も今も香港人の商魂は衰えを見せていない。

コメント6件コメント/レビュー

香港の本やを通しての観察眼、大変面白く読んだ。日本人の持つ概念とは一味違っていて大いに参考になる。何しろ日本の10倍以上の人口を抱える国だから、日本人の物差しでは測れないものがある。今後のコメントを期待したい。(2011/03/08)

「肖敏捷の中国観~複眼で斬る最新ニュース」のバックナンバー

一覧

「香港の本屋で占う「民主化革命の行方」」の著者

肖 敏捷

肖 敏捷(しょう・びんしょう)

エコノミスト

フリーのエコノミストとして原稿執筆や講演会などの活動をしている。テレビ東京の「モーニング・サテライト」のコメンテーターを担当中。2010年の日経ヴェリタス人気エコノミスト・ランキング5位。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

日経ビジネスオンラインのトップページへ

記事のレビュー・コメント

いただいたコメント

香港の本やを通しての観察眼、大変面白く読んだ。日本人の持つ概念とは一味違っていて大いに参考になる。何しろ日本の10倍以上の人口を抱える国だから、日本人の物差しでは測れないものがある。今後のコメントを期待したい。(2011/03/08)

世界一高級乗用車の売れる国、中国。既に他国の頚木から解き放たれた中国。将来は農奴・奴隷・非支配地民族の反乱は起きるかも知れませんが、市民革命は起きないでしょう。(2011/03/08)

以前拝読した筆者の文章と比べたらずいぶん柔らかくなった気がします。確かにテーマから内容が少々乖離しているではないかと思います。中国の民主化・・・私が生きている間に見てみたく存じます。(29歳、在蘇州から)(2011/03/08)

ビジネストレンド

ビジネストレンド一覧

閉じる

いいねして最新記事をチェック

閉じる

日経ビジネスオンライン

広告をスキップ

名言~日経ビジネス語録

変化を受け入れやすい組織体質があればビジネス上の“地殻変動”が起きた際にも、他社に半歩先んじられる。

井上 礼之 ダイキン工業会長