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“狂犬”カダフィ、1カ月以内に政権崩壊

専門家に聞くオイル危機の深層(1)

2011年3月9日(水)

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 内戦の様相を呈し始めたリビア。“中東の狂犬”とも呼ばれたカダフィ大佐は「血の最後の一滴まで戦う」と豪語し、反政府勢力に徹底抗戦する構えだ。反政府勢力はベンガジなどリビア東部で勢力を伸ばす一方、カダフィ政権側は首都トリポリを中心としたリビア西部で優勢だという。

 オイルメジャーの社員は相次いで国外退去し、リビアの原油産出量は大きく落ち込んだ。国際エネルギー機関(IEA)は、リビアの原油産出量は危機前の160万バレル/日から約60万バレル/日に減少していると推定するが、情報は錯綜している。正確な情報が取れないためで、エネルギー調査機関の英CGES(Center for Global Energy Studies)は減少幅を5~8割と分析している。

 供給不足懸念から北海ブレント原油は一時120ドルに迫り、ここ数日も115ドル付近の高値で推移している。リビアの減産分を補うために、サウジアラビアが産出量を840万バレル/日から900万バレル/日以上へと少なくとも60万バレル引き上げたと見られているが、市場の不安は十分に解消されていない。

 今後、原油価格はどのように推移するのか。CGESでチーフ・エコノミストを務めるレオ・ドロラス博士に聞いた。CGESはサウジアラビアのアハマド・ザキ・ヤマニ元石油鉱物資源相が設立したエネルギー専門の調査機関で、OPEC(石油輸出国機構)元事務局長代行のファドヒル・チャラビ氏らがエグゼクティブ・ダイレクターとして名を連ねる。ドロラス氏は、英BPでエネルギー研究と計量経済分析を統括していた人物だ。

(聞き手は大竹剛=日経ビジネス・ロンドン特派員)

―― リビア情勢が内戦の様相を呈し、原油価格が高騰している。

 ドロラス 原油価格の高騰は、内戦状況に近づいているリビア情勢を反映したものだが、市場関係者はバーレーンで高まっている政情不安がサウジアラビアに波及することも心配している。マーケットはリビア以外の国も危機に巻き込まれることを懸念しているのだ。だが、現実問題としては、原油生産量が落ち込んでいるのはリビアだけで、サウジアラビアは増産している。サウジの余剰生産能力は約400万バレル/日あり、リビアの生産が回復しなかったとしても、サウジにはそれを補う能力は十分にある。

 それでも、マーケットは将来の供給懸念を拭い去れないでいる。今、原油市場の問題は、デマンド危機からサプライ危機へと潮目が変わったと言ってよい。リビアやチュニジアなどで問題が起きる前は、極東やOECD(経済協力開発機構)諸国からの需要が高まる一方、OPEC(石油輸出国機構)加盟国が増産しないこと、それが原油価格(北海ブレント)を95ドルから100ドルへと高騰させた。しかし、今はOPEC加盟国の1つが供給問題に直面したことによって、価格が100ドルから115ドルへと押し上げられている。

サウジへ動乱が波及する可能性は低い

―― マーケットが心配するように、サウジまで動乱が伝播すると思うか。サウジは北アフリカ諸国より資金力があり、潤沢なオイルマネーを国民にばら撒くことで不満を抑えることもできるかもしれない。国王への支持も比較的厚い。

 ドロラス サウジに波及するとは思わない。理由はあなたが指摘した通りだ。サウジは国民を黙らせるために沢山の資金を費やしている。潜在的な問題があるとすれば、それはサウジ東部。原油を産出しターミナルもあるハサと呼ばれる地域だ。この地域の人口の7割はイスラム教シーア派で、(支配層のスンニ派と多数派を占めるシーア派が対立している)バーレーンの状況と似ている。

 ただし、サウジは今、2つのことに力を注いでいる。1つは軍隊、といっても、正規軍ではなく(治安維持活動を行う)国家警備隊の活用だ。国家警備隊は、77才だがタフで強い権力を持つナイフ王子の統制下にある。そしてもう1つは、賃上げなど多額の資金をばら撒くことだ。

ただし、最悪の事態が起きる可能性も

―― もし、大規模な反政府運動が起きたら、国家警備隊は反乱を押さえ込めるのだろうか。

 ドロラス そう簡単には大規模な反乱は起きないだろう。サウジは閉鎖的な社会で、外国人もそれほど多くはない。報道規制も厳しく、国民は保守的だ。エジプトやチュニジア、そしてリビアとは異なる。エジプトのような大規模な反乱は起きにくいだろう。

 しかし、結局のところ、何が起きるか誰にも分からない。可能性を排除すべきではない。もし、大規模な反乱が起きたら、それは世界にとって最悪のシナリオになる。

 振り返ってみてほしい。チュニジアで民衆が蜂起するきっかけは何だったか。野菜を売っていた1人の男性が警察に捕らえられ、許可証を持っていなかったから野菜を売ってはならないと言われた。彼は絶望し、自らに火を放った。それが革命の引き金となった。

コメント2件コメント/レビュー

リビアの高品質な石油とサウジアラビアのそこまでではない石油という質の差を無視して、増産すれば済むと考えるのは短慮すぎです。リビアの石油を前提した施設ではサウジアラビアの石油は処理できないかできても効率が落ちると考えるべきです。(2011/03/09)

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「“狂犬”カダフィ、1カ月以内に政権崩壊」の著者

大竹 剛

大竹 剛(おおたけ・つよし)

日経ビジネス記者

2008年9月から2014年3月までロンドン支局特派員。2014年4月から東京に戻り、流通・サービス業を中心に取材中

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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記事のレビュー・コメント

いただいたコメント

リビアの高品質な石油とサウジアラビアのそこまでではない石油という質の差を無視して、増産すれば済むと考えるのは短慮すぎです。リビアの石油を前提した施設ではサウジアラビアの石油は処理できないかできても効率が落ちると考えるべきです。(2011/03/09)

世の中には色々な見方があるものですね。私は全く逆の予想をしております。つまり、カダフィは生き残るであろう、一方動乱はバーレーンと、ひょっとしたらサウジにも広がるであろう、と。いずれにせよ、ここ1~2年の中東の情勢が、そのまま21世紀の方向を決定づけることになるのではないでしょうか。(2011/03/09)

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