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疑う中国人、信じる日本人

中国人記者が続々と帰国する心理深層

2011年3月23日(水)

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 「僕たちが逃げるように帰るのをみて、君たちは気分を害しただろう。僕はこのまま取材を続けるべきだと思うのだが、同僚がパニックを起こしていて…」

 19日、知り合いの中国人記者Yは福岡空港から帰国する直前にかけてきた電話で、後悔をにじませた沈んだ声で言った。

 11日に東日本で未曾有の大地震が起きてから、知り合いの中国人記者らから次々問い合わせがあった。13日夜には何人かが現地取材のために東京入りした。その中で大手週刊誌のY記者はガイド兼通訳を探しており、当初は留学生を紹介してほしいということだったが、余震が続き2次災害の危険が伴うところに留学生を連れて行き、万が一のことがあれば責任が取れない。ならば、私が自己責任で同行しようということで、14日夕夜、一緒に上越新幹線で新潟に入った。それが前回のこのコラムの締め切りの時である。今回はその続きについて書こう。

若い女性記者は軽いパニックに

 Y記者は30代若手記者ながら、2008年の四川大地震、2010年の青海省玉樹地震の取材経験があり、英語も堪能だ。日本語はできないが、日本での出張取材経験はあった。編集長からこの大災害の際に現地取材のキャップを任され、若い女性記者、カメラマンを伴い3人で東京に来た。

 15日から新潟で車を確保したので、一緒に来てくれないかと連絡が来たのが14日昼だった。14日夜はともに上越新幹線で新潟に行き1泊し15日午前に、総領事館のアドバイスを得て地元県警に取材用の緊急車両証の発行を掛け合うつもりだった。

 ところが14日夜、新潟に着いてから雲行きが怪しくなった。福島第一原発の事故の状況がかなり深刻だという情報が北京の本社経由でY記者にもたらされたからだ。

 「チェルノブイリに匹敵する事故のようだ」「大使館から日本にいる中国人の退避勧告が出ている」…。

 この情報に若い女性記者は軽いパニックになり、仙台にいくべきではないと主張した。彼らは一晩、締め切りも抱えながら、北京本社とのやり取りを繰り返し、取材を続行すべきかどうかの議論を行っていた。

「仙台がダメなら岩手に入るルートを探ってはどうか」
「しかし、その長距離を運転できるだけのガソリンの確保もむつかしい」

 そんなやり取りが続いていた。

 私は日本の新聞やテレビの会見内容を説明するにとどめ、彼らの判断に口出ししないように気をつけたが、福島第一原発から仙台まで90キロあまり、新潟は150キロある。たとえ原発がメルトダウンを起こしても、今すぐその距離に放射能性物質が飛来して健康被害を引き起こすほどではないと考えていた。だがその考えは、中国人記者たちにもたらされる情報とかなり温度差があったようだ。

あまりに素早い帰国の判断

 議論は翌朝には、仙台ルートで現地入りするか岩手方面に行くかというテーマから、東京に退避するかどうかということへと争点が変わっていた。結局、彼らは15日午後に東京への一時退避を決めた。

 この時、Y記者が「君ならどう判断した?」と尋ねたので、「私なら、仙台くらいは放射能をあまり問題視しない。判断を迷うとしたら、危険な場所に運転手を伴うこととガソリンの問題だ。被災地では救援物資の輸送ですら大変な時期で、貴重なガソリンを使うに値する取材ができるかどうかだ。でも、東京に帰る選択はないな。新潟にも取材すべき対象はあるし、新潟で取材をしながら2~3日待って被災地入りする機会をうかがうこともできる」と答えた。

 Y記者は「やっぱりそうかな」と額を押さえたので、慌てて「東京に戻って体制を立て直せばいい」と付け足した。

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「疑う中国人、信じる日本人」の著者

福島 香織

福島 香織(ふくしま・かおり)

ジャーナリスト

大阪大学文学部卒業後産経新聞に入社。上海・復旦大学で語学留学を経て2001年に香港、2002~08年に北京で産経新聞特派員として取材活動に従事。2009年に産経新聞を退社後フリーに。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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名和 利男 サイバーディフェンス研究所上級分析官