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「日本も頑張れ」、“革命”起こしたエジプトの声援

危機から湧き上がる国造りへの希望

2011年3月25日(金)

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 東日本大地震が発生してから数時間後、その惨状を伝えるニュースはエジプトにも届いていた。ムバラク政権を追い詰めた大規模デモが展開された首都カイロのタハリール広場を訪れると、多くの市民に声をかけられた。

 「日本は大丈夫か? 安全を祈っている。神の御加護を」

 ムバラク政権崩壊後、エジプトは今、新しい国造りに挑もうとしている。その姿を知ろうと現地を訪れたのだが、逆に未曽有の危機に見舞われている日本へのエールをもらった。予期せぬ激励に感激しながら、カイロ市民にムバラク政権崩壊後の心境を聞いて回った。そこから浮かび上がってきたのは、長引くデモや悪化した治安に不安を感じながらも、自由を手にし、自らの手で新たな国を造っていこうという決意と自信だった。

3月11日、タハリール広場でデモを繰り広げるカイロ市民。既存の憲法を改正するのではなく、ゼロから作り直すことを訴えていた
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 ムバラク元大統領の退陣から約1カ月の金曜日、今や毎週恒例となったデモが、タハリール広場で繰り広げられていた。エジプトの首都カイロの中心地に位置し、1月25日から2週間以上に渡って大規模な民主化デモが続いた“聖地”である。さらなる改革を求める横断幕が掲げられ、大音量で音楽が流れる中、ステージでは子供や女性も順番にマイクを握っていく。

 「ムバラク時代の憲法を改正するのでは納得できない。ゼロから新しいものを作らないとダメだ」。医者のアラーエル・ディン・モハメドさん(37歳)は、デモに参加する理由を話してくれた。軍の統治下にあるエジプトでは3月19日、大統領選に向けた憲法改正の是非を問う国民投票が実施され、賛成多数で承認された。取材に訪れたのは、その国民投票の1週間前。タハリール広場に集まっていた市民は、憲法改正を阻止すべくデモをしていたのである。

独裁去り、少数派の不満が噴出

タハリール広場で売られていた風刺画。米国とイスラエルを非難する内容が多かった。親米だったムバラク政権下では、このような風刺画を路上で販売することはできなかったという
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 タハリール広場だけではない。この日、カイロの至る所でデモがあった。タハリール広場から1kmほど離れた国営テレビ局前。ここには、キリスト教徒が集結していた。キリスト教徒の一派であるコプト教を信じる人々で、エジプトでは約8000万人の人口の約1割を占める。エジプトでは少数派であるコプト教徒はイスラム教徒との衝突を避けるために、軍の戦車に守られている国営テレビ局前でデモを続けていた。

軍の戦車が守る国営放送局前で、地位改善を訴えるコプト教徒。ムバラク政権崩壊後、マイノリティーの地位改善要求が高まっている
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 「私たちは、仕事などで(イスラム教徒と)平等に扱われていない。この状況を変えたいんだ」。運転手のレダ・ザリフさん(43)は、コプト教徒の証しとして右手首に入れた十字架の刺青を見せながら、そう話す。

 コプト教徒のデモは、カイロ郊外の村で起きた、ある事件をきっかけに始まった。恋に落ちたコプト教徒の男性とイスラム教徒の女性が結婚前に関係を持ち、それを知った女性の家族が腹を立て、コプト教徒とイスラム教徒の対立に発展。コプト教会が燃やされるという事態に発展した。3月8日にはコプト教徒が大規模なデモをカイロ市内で実施して交通を麻痺させ、イスラム教徒と衝突して死傷者も出した。ムバラク政権下で鬱積していたコプト教徒の不満が、一気に噴出した格好だ。

“デモ癖”に辟易、普通の生活に戻りたい

 一方、タハリール広場周辺で延々と続いているデモに辟易し、一刻も早く平時の生活に戻りたいと願っている市民も多い。タハリール広場から車で数10分走ったある広場では、中流層が集まりデモをしていた。ステージには警察や子供も登壇し、マイクを握った女児は「早く学校に戻りたい」と訴えた。

 学校が再開されても、治安を心配して子供を通学させない親もいるのだという。警察機能が十分に回復していないからだ。警察はムバラク政権下で強権を振り、市民を恐れさせていた。そのため、今も警察を敵視する市民もあり、市民からの“報復”を恐れて職務に復帰しない警察官もいる。取材に訪れた時は、夜中の12時から朝6時まで外出禁止令が敷かれ、警察が足りず市民がボランティアで交通整理をしている姿がいたる所で見られた。

タハリール広場だけがエジプトじゃない

 頻発するデモと警察官の減少による治安の悪化は、ビジネスに大きな影響を及ぼしている。その典型が観光業だ。

 「首相も軍隊も、タハリール広場にいるデモ隊の声しか聞いていない。タハリールだけがエジプトだと思ったら大間違いだ」と旅行会社で働くサエダ・モハメド(40歳)さんは、早口でまくし立てた。タハリール広場でデモが続いていることで、一向に普段の生活を取り戻せないことに憤っている。彼女は、政変後に仕事がめっきり減ったと憤る。

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「「日本も頑張れ」、“革命”起こしたエジプトの声援」の著者

大竹 剛

大竹 剛(おおたけ・つよし)

日経ビジネス記者

2008年9月から2014年3月までロンドン支局特派員。2014年4月から東京に戻り、流通・サービス業を中心に取材中

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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