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「新世代・出稼ぎ農民」に悲哀はない

世界の工場がみるみる「求人難」になった背景

2011年4月8日(金)

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 2011年の春節(2月3日が旧正月元旦)休みが終わって以降、中国のメディアは継続して“用工荒(求人難)”を報じている。中国語で“○○荒”というのは「○○不足」を表す言葉であり、“用工荒”を直訳すると「労働者不足」となるが、本稿では意訳して「求人難」とする。ただし、ここで言う「労働者」の主体は“農民工(出稼ぎ農民)”であり、基本的に工場労働者を指すと考えてよく、“用工荒”とは彼らを雇おうと募集をかけても応募者が集まらない「求人難」を意味する。

 この“用工荒”という言葉は決して目新しいものではなく、さかのぼると2004年頃から東部沿海部や発達した地域で“招工難(労働者募集難)”という言葉とともに使われるようになり、その後は毎年春節休みが終わると、労働集約型の製造業を中心に叫ばれるようになったものである。

工員たちのストライキやデモ行進が頻発

 2008年9月のリーマン・ショックに端を発した世界金融危機は中国にも多大な影響を及ぼし、不況により2008年末から2009年の春節(1月26日)にかけての約2カ月間に、中国国内では2000万人もの出稼ぎ農民が工場を解雇されて故郷へ戻ったと言われている。

 ところが、筆者が2009年の2月末に出張して広東省東莞市や深セン市を実地調査した限りでは、「2000万人の労働者が失業」というメディア報道とは裏腹に、多数の工場が工員募集を行っていたので驚いた。ただし、どこの工場も求人の年齢条件は16~18歳以上から40歳以下で、40歳を超えても応募可能な工場は見当たらなかった。

 とはいえ、実際は工員を募集する企業が多数ある一方で、倒産して工場を閉鎖した企業も多数あり、2009年の春は悲喜こもごもの状況であった。その後、中国政府が経済回復のカンフル剤として4兆元(約52兆円)の景気刺激策を打ち出したことで、国内の景気は上向きに転じ、落ち込んでいた輸出も徐々に回復し、中国は世界に先駆けて金融危機を克服したのである。こうして2010年の春節休み明けには従来通りの“用工荒”が出現し、企業は賃金値上げや福利厚生の改善により少しでも多くの工員を集めようと競い合った。

 しかし、新規雇用の工員に対する待遇改善の動きが既存の工員たちの待遇改善要求を誘発し、2010年5月1日の“労働節(メーデー)”連休が終わった頃から、中国全土で賃上げを主体とする待遇改善を求める工員たちのストライキやデモ行進が頻発し、経営者側が大幅な賃上げ要求を呑まされる形で決着した。

 こうした流れを受けて、各地方政府は次々と最低賃金基準の引き上げを行い、2010年を通じて全国に31ある1級行政区(省・自治区・直轄市)のうちの30行政区が最低賃金基準の見直しを行い、基準額は平均で22.8%引き上げられた。<注1>

<注1>2010年に改定された最低賃金基準の最高額は上海市の1120元(約1万4000円)であった。なお、最低賃金制度は1992年に深セン市で最初に実施され、1994年以降全国の地方政府に普及したもの。

最低賃金基準は依然として上海市が最高

 2011年も年初から全国各地で最低賃金基準の改定が行われており、3月末時点で全国最高額は3月に改定された広東省で18.2%アップの1300元(約1万6250円)であったが、4月1日に深セン市が従来の1100元(約1万4000円)を20%引き上げて1320元(約1万6500円)としたので、これが最高額となった。なお、同じく4月1日に上海市が最低賃金基準を14.3%アップして1280元(約1万6000円)とした。

 上海市の説明によれば、上海市の最低賃金基準には勤労者個人が納める社会保険料と住宅積立金が含まれておらず、上海市では企業側がこれらを別途支払うことになっているので、個人が納める最低額の社会保険料と住宅積立金を含めると、実質的には約1600元(約2万円)となり、最低賃金基準は依然として上海市が最高額であるとのこと。

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「「新世代・出稼ぎ農民」に悲哀はない」の著者

北村 豊

北村 豊(きたむら・ゆたか)

中国鑑測家

住友商事入社後アブダビ、ドバイ、北京、広州の駐在を経て、住友商事総合研究所で中国専任シニアアナリストとして活躍。2012年に住友商事を退職後、2013年からフリーランサーの中国研究者として中国鑑測家を名乗る。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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