• ビジネス
  • IT
  • テクノロジー
  • 医療
  • 建設・不動産
  • TRENDY
  • WOMAN
  • ショッピング
  • 転職
  • ナショジオ
  • 日経電子版
  • 日経BP

「君はまだ、東京でやせ我慢しているのか」

SARSを回想、この悔しさをバネに

2011年3月29日(火)

  • TalknoteTalknote
  • チャットワークチャットワーク
  • Facebook messengerFacebook messenger
  • PocketPocket
  • YammerYammer

※ 灰色文字になっているものは会員限定機能となります

無料会員登録

close

 「3・11」巨大地震及び福島第一原発事故が起きた後、福島では県外へ避難する地元住民が急増したと伝えられている。1988年から1991年までの間、福島大学に留学し、上海で仕事をした際、福島県人会の会員でもあった私にとっては、決して他人事ではない。早速、福島市に住んでいる大学の恩師夫妻に電話し、ぜひ東京の我が家に避難してください、と催促した。

 しかし、70歳後半の恩師はいつものような落ち着いた口調で断った。「あまり外出しないので、家の中で本を読めば大丈夫だろう。第一、新幹線も高速道路も全部使えない」。こちらも半分諦め、半分安心した。だが、東京に来ることが、果たして避難といえるのだろうか。なぜかというと、東京にいる外国人は次々と海外へ脱出しているのである(一部の日本人もそうらしい)。

彼は「先見の明」をアピールし始めた

 報道によると、品川にある東京入国管理局の周辺では、再入国ビザを申請するため、長蛇の列ができている。成田空港でも同じような光景がみられるという。仕事の関係で付き合いのある外資系金融機関の方からは、しばらくの別れという連絡も受けた。お昼、いつも通っている会社の近くにある中華レストランの入り口には「地震のため、臨時休業」という張り紙が掲げられた。

 食材が調達できなくなったのか、あの顔なじみで日本語があまり分からない中国人コックさんも日本を脱出したのかなど、勝手に推測するしかない。脱出だとすると、いつも貯金が増えないとため息をつくあのコックさんにとっては、大金をはたいて史上最高値の航空券を買うことは、一大決心であったにちがいない。もし、また会える機会があれば、ぜひ確かめたい。

 震災後、私のところにも見舞いの電話やメールが海外からたくさん舞い込んでいる。中国にいる親戚や友人たちからは、「住むところは用意するから、とにかく家族を連れてすぐ中国に戻りなさい」と何度も催促された。こういう時こそ、親身になって心配してくれた友人がいることは本当にありがたい。

 しかし、明らかに違和感を覚えざるを得ない同情も寄せられた。

 かつて日本の証券会社で勤め、現在は中国の地場証券会社で働いている知人からの電話である。「大変ですね。君はまだ、東京でやせ我慢しているのか」と、電話の向こうから高笑いが聞こえてきた。

 日本の会社を辞めて中国に戻ったのは大正解だったといつも周囲に吹聴している彼は、改めて自分の「先見の明」をアピールし始めた。調子者として定評のある彼の笑いには必ずしも悪意があるとは思わないが、「3・11」以降、ほとんどの方と同様、精神的なストレスが溜まっていることもあって私は途中で耐えられなくなり、彼がまだしゃべっている最中に思わず電話を切ってしまった。

「子供を連れてしばらく東京から離れたらどう?」

 連日、地震酔いに悩まされながら、原発事故に関連するテレビ報道に釘付けになっている。また、ちょうど1歳になったばかりの息子を抱えているため、東京都の水道水から基準値を大幅に上回る放射性ヨウ素が検出されたニュースを見て、怖くないと言ったら嘘になる。家内の実家が北陸にあるので、「子供を連れてしばらく東京から離れたらどう?」と真顔で家内に話すなど、動揺もある。

 しかし、現時点では、家族は東京に留まり、私はいつものように会社に通い(計画停電の影響で早めに帰宅する時もあるが)、息子もいつものように保育園に通っていられるのは、震災地の方と比べて、我々がまだ「日常生活」で恵まれているためだ。

コメント20件コメント/レビュー

本当にどこが安全なのか。最近の韓国のニュースでは、中国からの黄砂を測定したところセシウムが検出されたとの報道がありました。中国の核実験場と有名な西域南路を私も昔長く旅していたので、被爆してるだろうという自覚はあります。今更、ガタガタしても仕方ないので、日本の水道水飲んで生きていくぞ!(2011/04/01)

「肖敏捷の中国観~複眼で斬る最新ニュース」のバックナンバー

一覧

「「君はまだ、東京でやせ我慢しているのか」」の著者

肖 敏捷

肖 敏捷(しょう・びんしょう)

エコノミスト

フリーのエコノミストとして原稿執筆や講演会などの活動をしている。テレビ東京の「モーニング・サテライト」のコメンテーターを担当中。2010年の日経ヴェリタス人気エコノミスト・ランキング5位。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

日経ビジネスオンラインのトップページへ

記事のレビュー・コメント

いただいたコメント

本当にどこが安全なのか。最近の韓国のニュースでは、中国からの黄砂を測定したところセシウムが検出されたとの報道がありました。中国の核実験場と有名な西域南路を私も昔長く旅していたので、被爆してるだろうという自覚はあります。今更、ガタガタしても仕方ないので、日本の水道水飲んで生きていくぞ!(2011/04/01)

私の知り合いの在日中国人も、今回の地震と津波と原発事故という3重ショックに大半が帰国しています。それが「一時帰国」なのか「完全帰国」なのか今のところわかりません。でも、日本という土地で仕事も得て家庭も築いている彼らのこと、心の傷を少しでも母国で癒して戻ってきてほしいと思っています。肖さんのいうように「中国の人たちから同情されたのは悔しい」と今は思っていても、自分たちの職・住・社会コミュニティのある場所に愛着を持って、また日本の復興のために戻ってきれくれればそれでよいと思います。(2011/03/31)

中国が話題に出ると、韓国に飛来する黄砂から高い放射能が検出されたという韓国発のニュースを思い出します。線量としては現在福島県外で計測されているどのデータよりも高かったように記憶しています。その黄砂の線量も日常生活上問題無いとされる量でしたし、中国で甲状腺がん等が多数発生しているという情報も無いので(発覚していないだけの可能性はありますが)中国への旅行を控える気はありませんが、中国にせよ日本にせよ、一般人の騒ぎ過ぎに首をかしげる次第です。原発から50km圏内100km圏内の方の不安はわかりますが、現状から悪化しても100km圏以上に重大な被害が広がる可能性は低いですし(微量の拡散はだいぶあるでしょうが)、情報に耳を傾けさえしていれば十分のような気がするのですが…▼報道関係者の煽りに乗って右往左往している姿はいかがなものかと思うのです。中国でも日本でも韓国でも米国でも、報道の在り方も、情報リテラシーのあり方も。(2011/03/30)

ビジネストレンド

ビジネストレンド一覧

閉じる

いいねして最新記事をチェック

閉じる

日経ビジネスオンライン

広告をスキップ

名言~日経ビジネス語録

小池さんがこの言葉(排除)を述べたことで、「風」が変わっていきました。 ただし、小池さんが言ったことは正論です。

若狭 勝 前衆院議員