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薬品漬け「健美豚」の恐ろしい副作用

中央テレビの特別番組が最大手加工企業の悪事を暴いた

2011年4月1日(金)

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 毎年3月15日は「国際消費者権利デー」である。これは国際消費者機構が1983年から実施している消費者運動の統一行動日であり、米国のケネディ大統領が1962年3月15日に発表した「消費者利益の保護に関する特別教書」中で提起した、消費者が持つ4つの権利、すなわち、「安全の権利」、「知らされる権利」、「選ぶ権利」、「聞いてもらう権利」にちなんで制定されたものである。中国では1993年に消費者の9つの権利を定めた「消費者権益保護法」が制定されたが、「国際消費者権利デー」の実施はそれより前の1987年からで、毎年3月15日には消費者権利の保護に関わる各種活動が展開され、新聞や雑誌は特集を組み、テレビやラジオは特別番組を放送する。

中央テレビが特別番組で「真相」を放映

 2011年3月15日、中国の国営テレビ“中央電視台(中央テレビ)”は特別番組「“健美猪(健康で美しい豚)”の真相」を放映した。この番組は中国国内の豚肉の安全性に大きな一石を投じ、国民はその驚愕の事実に呆然とし、2008年に発覚した粉ミルクのメラミン混入事件の再来とばかり騒然となった。特別番組の概要をまとめると次の通りである:

【1】江蘇省南京市建鄴区で比較的規模の大きい迎賓食品市場では、“痩肉型(赤身タイプ)”の豚肉の売れ行きが常に良い。記者が理由を訊ねると、“肥肉(脂身)”が少ない低脂肪だからで、昨今はダイエット志向で“肥肉”の多い豚肉は食べる人が少なくて売れないのだという。普通の豚肉は皮の下に厚い脂肪の層があるが、この豚肉はその脂肪層がほとんど無い。販売員にその理由を聞いても分からないというので、「商品検査合格証」を見せてもらうと、南京市建鄴区沙洲村にある食肉処理場の名が記載されていた。

【2】記者がこの食肉処理場を訪ねて話を聞くと、毎日1000頭以上の豚を処理しているが、豚全体に占める“痩肉型”の豚の割合は80~90%を占めているという。この“痩肉型”の豚は、体形が非常に良く、背中が丸くて腹は引っ込み、お尻は丸くて大きく、筋肉はしっかりしている。まるで運動選手のようだから、この業界ではその健康美を称(たた)えて“健美猪”(以下「健美豚」)と呼んでいる。記者は“痩肉型”の豚の生産方法を尋ねて回り、その秘密は飼育中の特殊な飼料にあることを聞き出す。そこで、「健美豚」の生産地を問うと、河南省の孟州市だという。

【3】河南省孟州市は有名な豚の生産地であり、豚は仲買人経由で市場へ運ばれる。記者はある仲買人に同行する形で孟州市に入り、どの養豚場でも「健美豚」が飼育されていることを確認する。そこで「特殊な飼料」について聞き込みを行った結果、それが「薬」とよばれる白い粉末を混ぜた飼料であることを確認する。「薬」とは何か。調査を進めると、“痩肉精(赤身エキス)”と呼ばれる禁止薬品であり、市販はされておらず、豚肉を買いに来る仲買人やブローカーが養豚農家に密かに販売するものであることが判明した。

約1250円払えば、検査なしで通行可能

【4】“痩肉精”は何も表示がない銀色の袋に入っていて、価格は1キログラム当たり200~300元(約2500~3750円)で、飼料500キログラムに対して120グラムの割合で添加するのだという。豚の体重が90キログラムくらいの時に“痩肉精”を加えた飼料の給餌を始め、体重が120キログラムくらいになるまで約1カ月間、この添加飼料の給餌を続ける。給餌を止めて1週間程経過すると、検査をしても“痩肉精”の成分は検出されなくなるので、出荷可能となる。

【5】出荷された「健美豚」は仲買人に買われて南京市にある食肉処理場へと輸送されるが、それには地元の検疫部門で検査を受けて、動物検疫合格証、輸送車の消毒証明書、非疫病地区証明書を取得する必要があり、この3つの証明書が確認されると耳にはめる標識を受領することができる。地元の孟州市の検疫部門は200元(約2500円)さえ払えば、一切の検査を行わないまま3つの証明書を発行して耳標識を授与する。さらに河南省と江蘇省と省境にも検査所があるが、こちらは100元(約1250円)払えば、検査なしで通行可能。従い、合計250元(約3750円)の支払いさえすれば、孟州市から南京市の食肉処理場まで一切の検査なしで豚を運ぶことができる。1台のトラックで120頭の健美豚を運べるとすれば、1頭当たり20元(約250円)であるから、経費と考えれば安いものである。

【6】一方、河南省には中国最大の豚肉加工企業である“双匯集団”があり、孟州市に隣接する済源市には同集団傘下の“済源双匯食品有限公司”があり、豚の解体処理・加工を主要業務としている。同社の門前には“誠信立企、徳行天下(誠実と信用をもって企業を運営し、道徳をもって天下を行く)”と書かれた看板が立っている。親会社である“河南双匯集団”はテレビで“十八道検験、十八個放心(十分な検査で十分な安心)”というコマーシャルを流して製品を宣伝している。

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「薬品漬け「健美豚」の恐ろしい副作用」の著者

北村 豊

北村 豊(きたむら・ゆたか)

中国鑑測家

住友商事入社後アブダビ、ドバイ、北京、広州の駐在を経て、住友商事総合研究所で中国専任シニアアナリストとして活躍。2012年に住友商事を退職後、2013年からフリーランサーの中国研究者として中国鑑測家を名乗る。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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手嶋 龍一 作家・ジャーナリスト