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アラブ蜂起で“反米イデオロギー”崩壊

東京大学先端科学技術研究センターの池内恵准教授に聞く

2011年4月5日(火)

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 米英仏を中心とする多国籍軍によるリビア空爆で、北アフリカ・アラブ情勢が緊迫している。シリアやイエメンでも大規模デモが勃発し、多くの専門家が「大丈夫だろう」と指摘してきたサウジアラビアでも動乱が広がる可能性もある。

 このアラブ諸国で起きている反政府運動の広がりは、歴史的に見ると、どのように位置づけられるのだろうか。現在、カイロを拠点にアラブ諸国の情勢分析を進めている、東京大学先端科学技術研究センターの池内恵准教授に話を聞いた。

(聞き手は大竹剛=日経ビジネスロンドン支局)

―― 3月29日、リビア問題の打開を目指した外相級会合がロンドンで開かれ、カダフィ政権に対する軍事作戦を継続し、反政府勢力による民主化を支援することを決議した。チュニジアから始まったアラブ諸国の反政府運動の拡大は、歴史的にはどのように位置づけられるのだろうか。

 池内 ロンドン会議に関して、アルアラビーヤやアルジャジーラのアラブア語の衛星放送を見ていると、「カダフィ政権は完全に正統性を失った」という点を特に強調して報道している。アラブ諸国で広がっている反政府運動を歴史的な観点からとらえた場合、この“正統性”という視点が重要になってくる。

政権側が煽った反帝国主義の構図

 アラブ諸国の近代共和制政権では、民族主義に基づいた革命イデオロギーを統治の手段として使ってきた。そのイデオロギーが反帝国主義であり、具体的には反米、反英、反イスラエルといったものだった。

 「人民は帝国主義によって迫害されている。だから我々は、人民を代表して帝国主義に対して戦いを挑んでいる」というように、政権側は国の外に敵を作り、反帝国主義と民族主義の構図を持ちだして、国内をまとめようとしてきた。反帝国主義のイデオロギーが、政権側にとって国民を統治する正統性のよりどころになっていた。

 リビアのカダフィ政権はその典型だった。シリアでもアサド大統領が30日の演説で、「デモが拡大しているのは海外の衛星放送局による陰謀だ」と繰り返し主張したのは、こうしたイデオロギーが背景にある。君主制の湾岸諸国には独自のイデオロギーがあるわけではなく、アラブ諸国全体に反帝国主義に基づいた民族主義イデオロギーが充満していた。

 しかし、フェイスブックなどの情報ツールで武装した多くの若者がデモに参加し、国民が初めて自由に口を開くようになった途端、そのイデオロギーには全く根拠がなかったことが明らかになってしまった。デモの参加者の間では、帝国主義と排外的な民族主義は全くと言ってよいほど問題にされていない。

 外国との関係に注目が集まるのは、自分たちの運動を支持してくれるかどうかという点においてだけだ。「混乱すると米国やイスラエルが介入してくる」「民主化が進むと米国の影響力が増す」と言い、西側諸国の介入を懸念するのは、反帝国主義のイデオロギーを使いたい体制側の論理であって、反政府運動の側にはそのような視点はない。

バラマキ・脅し・イデオロギーの3つで統治

 これまで多くのアラブ諸国では、国民の不満を和らげるためにカネをばら撒き、不満を抑えつけるための武器で脅し、メディア統制やプロパガンダでイデオロギーを浸透させてきた。「バラマキ」「脅し」「イデオロギー」という三位一体の手法で、国民の反発を抑え込んできた。

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「アラブ蜂起で“反米イデオロギー”崩壊」の著者

大竹 剛

大竹 剛(おおたけ・つよし)

日経ビジネス記者

2008年9月から2014年3月までロンドン支局特派員。2014年4月から東京に戻り、流通・サービス業を中心に取材中

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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