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「中国は今、ファシズム化一直線だ」

目立ちすぎると逮捕、加速する反体制派狩り

2011年4月13日(水)

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 約3カ月ぶりに訪れた北京は、いつにもましてピリピリしたムードだった。まず空港の税関で呼び止められ、荷物を開けて見せるように言われた。荷物の中までチェックされることなどめったにない。

 荷物の中に2月末に上梓した拙著を見とがめられ、「これはどんな本か」と不審そうに尋ねられた。あわてて全国政治協商委員という政治的地位の高い人物のインタビューページを開いて、「中国の女強人(女傑)を私がインタビューしました。いやあ、明後日の便で行く香港大学の研究会で発表する予定があって、その資料として配るんです」などと、まったくの嘘でもない言い訳をして、なんとか事なきを得て通過した。

 翌日、全人代(全国人民代表大会=国会に相当、3月5~14日に開催)期間中は自宅軟禁状態で不自由な目に遭っていた評論家の友人Aと食事をしたとき、彼は笑いながらも、冗談とは言い切れない口調で、こう打ち明けた。「北京では騰彪や江天勇ら人権派弁護士6人を含む十数人の『異見人士』が拘束されたままだ。作家の冉雲飛や前衛アーチストの艾未未といった中国国内で知名度の高い人たちまで拘束された。次は僕かなあ」。彼は全人代が終わり、自宅軟禁が解かれた今も、心の緊張は解けないようだ。

なぜ今になって拘束されたのか

 中国の体制外人士たちは、今の中国の状況について「ファシズム化一直線」だと口をそろえる。全人代直前に「中国式ジャスミン革命」騒動が起き、中国公安当局は、これを口実に人権派弁護士や体制外作家らを次々拘束した。こういった中国の警察国家体質は当初国際社会の大批判を集めそうになっていたが、日本で発生した大地震と続く原発事故に国際社会の関心が流れてしまった。これを幸いとして、中国当局としては、目障りな反体制派狩りを加速している。

 特に4月初旬に香港行きの飛行機に搭乗しようとした艾未未氏が北京の空港で拘束され、そのまま情報がシャットダウンされ、オフィスなどにガサ入れが入った後、経済犯罪の容疑者として公表された事件は、体制外人士に少なからぬ衝撃を与えた。

 艾氏といえば、最近では2008年5月12日に発生した四川大地震で、手抜き工事の校舎の下敷きなどになって死亡した5000人以上の子供たちの名前を読み上げるパフォーマンスアートが知られる。このパフォーマンスは亡くなった子供たちの鎮魂の意味もあるが、地元政府の腐敗によって行われた膨大な数の学校校舎の手抜き工事の責任を認めない当局への抗議も込められており、国内外で高い評価と共感を得た。

 だが、こういった当局批判が拘束理由だとしたら、もっと早くに拘束されていたはずだ。艾氏はこれまでにも当局に呼び出しを受けたり、警告がわりに一時拘留されたりしているが、今回はいつもと様子が違った。

「法律は“異端者”のために曲げられない」

 それは4月6日付けの党中央機関紙・人民日報系国際時事紙・環球時報の「法律は“異端者”のために曲げられない」と題した言い訳めいた論評の掲載からもうかがえる。

 いわく「前衛芸術家と称される艾未未が最近の情報によると、中国警察に“連行”されたらしい。一部西側国家の政府と人権機関がさっそく、中国側にその即刻釈放を要求し、これを持って中国の人権状況が悪化したといい、艾未未を“中国人権闘士”と見なすだろう」「西側のこういうやり方は、故意にシンプルな問題を国家政治や甚だしきは国際政治の問題にすり替え、中国社会の注意力をかき乱し、中国の公共の価値体系を改変しようと試みるものである」

 さらには艾未未を法律のエッジで活動する中国社会の“異端者”であるとして、「このような人物にどう対応するかは、中国社会の経験は不十分で、法律の判例も多くはない。ただ艾未未氏が前に突き進み続けるかぎり、いつかは“虎の尾を踏む”可能性がある」「法律が西側世論の批評によって、この“特殊な人間”の前を迂回し譲歩することはありえない。歴史はいずれ艾未未のような人物に対し評価を下すだろうが、その前に、彼は自分の(行動の)選択に対し、いくばくかの代価を支払う時がくるだろう」…としている。

 この微妙な文面に、北京五輪の競技場設計にかかわった著名建築家であり、文芸界では大臣級の影響力をもつ大詩人・艾青の息子であり、「80后」と呼ばれる1980年代生まれの若者たちにカリスマ的な人気を誇る艾未未の存在に、漠然と危機感を抱いているものの、どういう罪状を問うべきかという当局の躊躇も見て取れる気がする。

 結局10年前後の重刑の可能性がある国家政権転覆扇動罪などではなく、実刑があったとしても比較的軽い「経済犯罪」容疑で取り調べ中であることが公表された。これについてAはこう分析した。

 「(政権転覆扇動罪で懲役11年の判決を受けた)劉暁波氏は国内メディアが長らくその名を封印していたこともあって、今の中国の若者にはあまり知られていない、いわば過去の人。艾青という中国の高校教科書で習うような大詩人の息子で、本人も中国を代表する建築家である艾未未氏を逮捕することの中国社会への影響力は劉氏の比ではない。だから当局内部でも彼を擁護する声はあっただろうし重罪は問えなかったのだろう。しかし、それでも国際的知名度や個人の人間関係がもう免罪符にならなくなったことがはっきりした。むしろ、知名度があること自体が拘束理由になってきた」

 艾未未の拘束理由。それは“目立ちすぎた”ということなのだ。

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「「中国は今、ファシズム化一直線だ」」の著者

福島 香織

福島 香織(ふくしま・かおり)

ジャーナリスト

大阪大学文学部卒業後産経新聞に入社。上海・復旦大学で語学留学を経て2001年に香港、2002~08年に北京で産経新聞特派員として取材活動に従事。2009年に産経新聞を退社後フリーに。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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檜山 敦 東京大学先端科学技術研究センター 講師