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どうして日本人は泣かないのかしら

中国人記者は被災地で何を見たか

2011年4月20日(水)

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 東日本大震災から1カ月が過ぎた頃、私はちょうど香港、広州を旅行中だった。地元の記者、編集者らと会うと、自然に大震災取材の話となった。

 今回ほど各メディアが勢力的に現地に記者を派遣したケースはまれだと言う。日本大使館の発表では3月11~14日の間、記者を対象に臨時で発行した緊急取材ビザは60件以上で、中国メディアの東京特派員やちょうど別件で東京出張取材を行っていた記者なども含めれば初期段階に100人以上が被災地入りし取材したと聞いている。

 CCTV(中国中央テレビ)は私が聞いただけでも地震発生後2日目から5組のカメラクルーが入っている。聞けばヘリコプターをチャーターして最前線取材を行ったそうだ。香港衛星テレビのフェニックステレビも少なくとも2組のカメラクルーが入り、防護服も用意していたという。そういう潤沢な資金で縦横無尽に取材する大メディアだけでなく、地方の都市報や週刊誌まで精力的に記者を被災地に派遣した。

 3月23日付のこのコラム「疑う中国人、信じる日本人」で、私は放射能の影響を恐れて被災地から逃げ出す中国人について紹介したが、退避命令が出るまで最前線で取材していた記者も確かにいた。うち何人かは私もよく知る記者たちだ。今回は、そういう記者たちが東日本の被災地でどのように取材し、何を見て何を感じたかを紹介しよう。

彼女が持っていた現金は7万円

 ある広東の地方紙Pの女性記者A氏は地震発生当時、別件の取材のためにちょうど東京に出張中だった。矢吹晋・横浜市立大学名誉教授と都内の日中友好会館で面談していたところ、強い揺れを感じた。

 広東ではほとんど地震がない。「あまりに強い揺れで、びっくりしたけれども、教授が平常心で話を続けたので、てっきり日本は地震が多いから、このくらいの地震に驚かないのだと思った」とA記者は言う。

 矢吹教授との面談をそのまま終えて、異変に気付いたのは、次の取材約束の相手が時間になっても現れなかった時だった。「時間に厳しい日本人が無断で約束に送れるなんてあり得ない」。確認のために携帯電話をかけようとしてもつながらず、ただごとでないと感じた。しかしまだ、その時はさっきの地震の影響だとはピンとこなかったという。

 やがて取材相手から電車が動かず、約束の場所に行けないとメールがあった。ホテルに戻るとエレベーターが止まっていた。パソコンで電子メールを開くとデスクから、「無事か。すぐに被災地に取材にいってくれ」と指示があった。

 彼女は四川大地震の取材経験があったが、被災地取材の準備など全くしていなかった。装備をそろえる間もなく翌早朝、単身で羽田空港に行き、青森県三沢空港行きと青森空港行きの飛行機のキャンセル待ちに並んだ。午後1時半の三沢行き飛行機にやっと乗ることができた。この時、彼女が持っていた現金は7万円。「泊まるところはどうするつもりだった?」と私が聞くと、「考えてなかった。とりあえず現場に駆けつけなきゃ、と」

 三沢空港で運よく朝日新聞の記者と出会い、車に乗せてもらい岩手県久慈市に入った。午後7時。暗闇の中、コンクリートの建物は津波の力で窓が破られ、窓枠はひしゃげ、木造の建物は梁ごと流されて、その残骸が道路の上に散乱している様子がぼんやり見えていた。「こんな破壊し尽くされた光景を見たことがなかった」

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「どうして日本人は泣かないのかしら」の著者

福島 香織

福島 香織(ふくしま・かおり)

ジャーナリスト

大阪大学文学部卒業後産経新聞に入社。上海・復旦大学で語学留学を経て2001年に香港、2002~08年に北京で産経新聞特派員として取材活動に従事。2009年に産経新聞を退社後フリーに。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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