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「原子力選挙」で環境政党が圧勝

福島第1原発事故とドイツ人の過剰反応

2011年4月22日(金)

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 福島第1原発の事故の衝撃波は、1万キロメートル離れたドイツで小さな「革命」を引き起こしている。このことは、3月28日にメルケル首相が語った次の言葉にはっきり表われている。

 「私は原子力発電に賛成していました。しかし日本での原発事故は、私の考え方を変えました」。メルケル氏はこう語り、福島の事故の影響で、原子力に批判的な立場を取るようになったことを明らかにした。この「転向宣言」は、彼女が自分のエネルギー政策の誤りを認めたことをも示すものだった。メルケル首相に何が起きたのだろうか。

保守王国で緑の党が大躍進

 メルケル氏が率いるキリスト教民主同盟(CDU)は、3月27日にバーデン・ヴュルテンベルク(BW)州で行なわれた州議会選挙で、歴史的な大敗を喫した。

 この選挙は、東日本大震災から約2週間後に行なわれたため、脱原子力が最大の争点となった。反原発を掲げた緑の党が24.2%という史上最高の得票率を記録し、初めてCDUの現職首相を追い落としたのである。ダイムラーやボッシュ、ポルシェなど世界的に有名な企業が本社を持ち、優秀な中規模企業が多いBW州は、CDUが58年にわたって単独支配を続けてきた保守王国。州政府のマップス首相(CDU)は、メルケル氏と同じく原発推進派である。

 このような地域で緑の党が社会民主党(SPD)と連立して初めて州首相を立てるのは、「革命」に等しい出来事である。同党の得票数は、前回の選挙の46万人から2.6倍に増えて120万人に達した。前回の選挙で棄権した人のうち、約27万人が今回は投票所に足を運んで緑の党に票を投じた。州都シュトゥットガルトの第1選挙区では、緑の党の得票率は42.5%という驚異的な水準に達している。

 21世紀に入ってから、ドイツでは左派と右派の間で脱原子力をめぐって激しい攻防が繰り広げられてきた。

 まず2002年にSPDと緑の党から成るシュレーダー政権は、2023年までに原発を廃止する原子力法の改正案を施行させた。

 これに対しメルケル政権は2010年9月に発表した長期エネルギー戦略の中で、「再生可能エネルギーが普及するまでの架け橋として原子力は不可欠なエネルギー」と位置づけ、17基の原子炉の稼動年数を、平均12年間延ばした。メルケル政権は、電力業界と産業界の意見を尊重したのである。マップス氏は、この政策を最も強く支持した政治家の1人だった。同州の電力会社EnBW社の電力の半分は、原子炉で作られている。

「科学者宰相」が受けた衝撃

 メルケル首相は、理論物理学者から政界に転じたという異色の経歴を持つ。社会主義時代の東ドイツでは、ライプチヒ大学で物理学を専攻し、ベルリンの壁が崩壊した時には、東ドイツ・科学アカデミーの理化学中央研究所で科学者として働いていた。彼女の研究にはアイソトープや放射線といった分野も含まれており、原子力についての知識は豊富だったのである。彼女はドイツ統一後に環境大臣に就任してからも、旧西ドイツの反原発運動に対して批判的な態度を取っていた。メルケル氏は物理学者としての知識に基づいて、原子力は安全に使用できるエネルギーだと考えていたのである。

 そのメルケル首相も、福島の事故には強い衝撃を受けた。ドイツのテレビでは3月12日に福島原発の第1号機の天井が水素爆発で吹き飛ぶ瞬間の映像が、繰り返し流された。首相も分刻みのスケジュールの合間を縫って、福島の事故に関するテレビニュースを見ていた。この結果、メルケル氏は震災の4日後に、原子炉の稼動年数の延長措置を3カ月間にわたり凍結するよう命じた。

 「日本のように高い技術を持った国でこのような事態が起きたからには、全てをこれまで通りに続けるというわけにはいかない。福島の事故は全世界にとって痛打だ」と述べ、1980年以前に運転を開始した7基の原子炉を停止させるとともに、国内の全ての原子炉の安全検査を命じた。

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「「原子力選挙」で環境政党が圧勝」の著者

熊谷 徹

熊谷 徹(くまがい・とおる)

在独ジャーナリスト

NHKワシントン特派員などを務めた後、90年からドイツを拠点に過去との対決、統一後のドイツの変化、欧州の政治・経済統合、安全保障問題、エネルギー・環境問題を中心に取材、執筆を続けている。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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