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中国の「原発安全神話」に温家宝首相が「待った!」

中国人から見た福島原発事故と中国の原子力政策(2)

2011年5月13日(金)

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 福島原発事故が起きるとすぐに、3月12日付の『人民網』(『人民日報』の電子版)は中国中央行政省庁の一つである環境保護部(部は日本の行政省庁の「省」に相当)の張力軍副部長(部長は大臣)のメッセージを載せた。彼は、

中国で現在稼働中の13基の原発装置はすべて正常に運行しており、安全である。モニタリングの結果、13基の放射性物質放出量は、国際及び国内基準と比べてはるかに低い。運行状況は安全で非常に良好である。

 と、中国原発の安全性を強調した。

 また3月14日、『新華社』は中核公司(中核集団)の徐継・首席に取材し、次のコメントを掲載した。

我が国の核安全基準はIAEA(国際原子力機関)による最新の研究成果を採用しており、原子力発電所建設と運行を安全にコントロールすることができる。しかし日本のこの度の事件から教訓を学び取り、自然に対する認識を高め、重大な自然災害に対応できるよう、安全策のレベルをより高めて完全なものにしていなければならない。

 前後するが、『新華網』は3月12日付けで、全国協商会議の委員を務める、中国電力投資集団公司の陸啓洲・総裁のコメントを報道していた。彼は中国原発の安全性に関して、専門用語を用いて具体的に分析している。

日本の原発事故が悲惨な結果を招いているのは、福島の原子炉が第2世代の原発技術しか採用してないからだ。この技術の最大の問題は緊急事態が発生して原子炉が停止した後、その余熱を冷却するのに外部電源を用いることにある。

それに対し我が国(中国)が沿岸部一帯で建設し、かつ今後内陸に向かっても推進していこうと思っている原子力発電所は第3世代の核技術を採用している。それはAP1000と呼ばれる「非能動」安全システムを用いているので、日本のような問題は起きない。非能動原子炉の上には何千トンもの水を入れた箱が設置してあるため、緊急事態が起きた時には、地球の引力と重力のみを利用して原子炉内を冷却できる。外部電源を用いて水を重力に逆らって注入する必要がないため、交流電源や応急発電機などが機能しなくとも、原子炉の安全を確保できるようになっているのだ。だから自然の力を用いて原子炉をコントロールし、燃料棒の余熱の発生を抑制し、その結果、原子力発電所の安全を確保することができる。

 ここにある「非能動」に関して少し説明を加えておきたい。

 これは英語で“Advanced Passive”と呼ばれ“AP”と略称される。英語のpassiveの反対語はactiveだが、これを言い換えれば“non-active”、つまり「非能動」となる。

 中国の原子炉の型として、よく見受ける“CAP”は“China-Advanced-Passive”の頭文字を取ったものである。外部電源を駆動させなければ緊急事態時に原子炉を冷却できない原発技術は“active”で、中国はこの使用を避けている。

大連市紅沿河原発は地震源に近いと網民が懸念

 2011年3月15日の『大連日報』は、もう一歩踏み込んだ解説をした。
 すなわち「日本で発生した地震は、現在建設中の大連市紅沿河原発に、いかなる影響も与えない」という見出しの記事を載せ、その安全性を強調したのである。

 その記事で、原子力発電に関する専門家は概ね次のような内容のコメントをしている。

我が国の原発は地震やその他の自然災害の要素を十分に考慮して建設しているので問題はない。津波防波堤を造り、6.5メートル前後の津波に対する防御が施してある。原子炉の安全性に関しては「国家核(原子力)安全局」の厳重な審査をパスしている。特に大連市紅沿河発電所は「中国改良型加圧水炉CPR1000」の技術を用いているので、安全性は一段と高くなっている。

 地震を考慮していると言っても、大連に建設中の原子力発電所近くの海底には地震帯がある。また津波の防波堤として6.5メートルの砦が構築してあったとしても、今回の東日本大震災がそれでは防ぎきれない場合があることを証明している。

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「中国の「原発安全神話」に温家宝首相が「待った!」」の著者

遠藤 誉

遠藤 誉(えんどう・ほまれ)

筑波大学名誉教授

1941年、中国長春市生まれ、1953年帰国。理学博士。中国で国務院西部開発弁工室人材開発法規組人材開発顧問、日本では内閣府総合科学技術会議専門委員などを歴任。2児の母、孫2人。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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手嶋 龍一 作家・ジャーナリスト