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韓国で原発反対運動が拡大し、住民の葛藤が深刻化

李大統領「エネルギー自立のために原発新設は仕方ない」

2011年5月19日(木)

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 韓国のことわざの一つに「遠い親戚よりイウッサチョン」がある。イウッサチョンは「近所に住む人」と「いとこ」を合成して作った言葉。遠くの親戚より近所に住む他人の方が頼りになるという意味である。隣近所の人たちと身内のように親しくする、世話好きな韓国人の生活を象徴することわざだ。しかし、最近は田舎でしか見られない光景となった。

 都会では、庶民であればあるほど引っ越しの回数が多くなる。不動産投資のためにマンションを買い替える。賃貸契約が更新となる2年ごとに子供の教育のために引っ越しする(ソウル大学合格率の高い進学校に近い場所ほど不動産価格が高くなる)。失業のため、より安い賃貸を求めて転々とする。

 一方、田舎に行けば、自分が生まれた村から一歩も離れたことがないお年寄りがたくさんいる。彼らの関係は非常に密度が濃い。「隣の家の箸の数まで知っている」というほどお互いをよく知っており、悲しい時は一緒に泣き、うれしい時は一緒に喜ぶ。都会の生活に疲れ、こうした関係を求めて帰農する(中年になってから田舎に定着して農業を営むこと)人も年々増えている。

サムチョク市で原発誘致反対運動が激化

 江原道のサムチョク市は人口7万人、海と山がきれいなことで有名な土地だ。洞窟観光と水刺身(冷たい出汁に刺身と氷を入れて冷麺のように食べるもの)が名物である。イウッサチョンが助け合う古き良き時代の風習が残る静かな田舎でもある。ところが今、「原発誘致」の賛否をめぐって、イウッサチョン同士が賛成派と反対派に分かれ対立している。イウッサチョンの間にできた溝はそう簡単には埋まりそうにない。

 サムチョク市は2010年末、662万平方メートルの敷地に原発を誘致する申請書を韓国水力原子力に提出した。サムチョク市は「地元経済を発展させるために原発を誘致するべき」と主張している。

 これに対して住民らは「サムチョク原発誘致白紙化委員会」を結成し、「原発誘致に関する行政情報を公開してほしい」と市を相手取って訴訟を起こしている。住民らは自然豊かなサムチョク市のイメージが壊され、住民数が減り、特産物である米や水産物も売れなくなると反対している。

 去年までは、原発誘致に賛成する市民が7割近かった。だが、東日本震災後に様相が一変。サムチョク市の市民だけでなく、半径20キロ圏内にある他の市の市議会も、原発誘致反対声明を発表した。環境団体もこれに加勢している。

風力や太陽発電にまで、反対運動が飛び火

 1977年に韓国初の原発が建てられた慶尚道でも、原発周辺地域の市議会が次々に「原発寿命延長反対」「稼働中止」を求める決議案を採択している。釜山市は原子力安全対策委員会を発足させ、「WHOが公認する国際安全都市造成を目指す」としている。だが、原発がある限り、住民の不安が解消されることはない。

 4月に行われた江原道知事補欠選挙でも、原発誘致に対する姿勢が問われた。選挙直前に「原発誘致賛成」から「反対」に立場を変えた候補もいた。3人の候補は口をそろえて原発誘致反対を訴え、「どんなことをしてでも原発が地元には来ないようにする」と公約した。

 原発の怖さを知った韓国では、NIMBY(Not In My Back Yard、必要はあるが自分の地元には建設してほしくないという心理)と呼ばれる現象が起きている。原発だけでなく、風力発電、潮力発電、太陽発電などすべての発電所を「危険なもの」として建設に反対する運動だ。参加する住民らは「電力は必要だけど、うちの地元には建てたくない」と反対する。

 「環境破壊」「危険」に加えて、彼らが発電所誘致に反対するもう一つの理由は、既に原発を建設した他の地域で起きている問題と関連がある。原発を受け入れる代償としてもらえるはずであった支援金が、20年以上たった今でも、支払われていない。地元経済を活性化するための大学・企業誘致といった約束も守られていない。それどころか、環境が破壊されて、生業である農業や漁業ができなくなり、地元を離れるしかなかったという人も多数いる。「政府機関の言うことは信じられない」「いつ見捨てられるか分からない」といった不安も作用している。

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「韓国で原発反対運動が拡大し、住民の葛藤が深刻化」の著者

趙 章恩

趙 章恩(ちょう・ちゃんうん)

ITジャーナリスト

研究者、ジャーナリスト。小学校~高校まで東京で育つ。ソウルの梨花女子大学卒業。東京大学学際情報学府博士課程に在学。日経新聞「ネット時評」、日経パソコン「Korea on the web」などを連載。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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