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胸にメス入れて勝ち取った労災認定

命がけの塵肺訴訟、職業病認められるまで最低1374日

2011年5月27日(金)

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 2011年5月4日に開催された国務院常務会議は、衛生部など関係部門が作成した「職業病防止治療法改正案(草案)」を原則的に採択した。同草案はさらなる修正を加えた上で、全人代常務委員会の審議に付し、採択されれば正式に施行されることとなる。今回の改正の主体は、中国唯一の労働組合である“中華全国総工会”や公益組織「北京義聯労働法援助・研究センター」(以下「北京京義」)が長年提起してきた職業病診断制度の簡易化である。中華全国総工会の関係者は、「この法案が成立すれば、“開胸験肺(肺の開胸検査)”のような悲しい出来事は二度と起こらないだろう」と述べた。

約2億人が職業病の危険にさらされた職場に

 中国では一般の状況下では、患者が職業病を申請してから認定を経て賠償請求を行うまでに、10段階以上の法的手続きに最低でも1149日、さらに認定手続きに要する225日を加えた、合計1374日を要すると言われている。北京京義の責任者である黄楽平主任は、職業病について、「労働災害は“農民工(出稼ぎ農民)”の人権擁護で難中の難だが、職業病は労働災害を被った“農民工”の人権擁護で難中の難である」と述べている。今回の法改正はこの1374日という約3年9カ月の長い期間を要する診断制度を簡易化して短縮するものであるという。

 3月2日付の全国紙「検察日報」は、上述の北京義聯が2010年12月から2011年2月にかけて全国で実施した調査の結果を次のように報じた: 

(1) 職業病患者に病状が現れる平均年齢:37.5歳
(2) 職業病患者の最大グループ:塵肺患者が70.2%を占める
(3) 職業病患者の勤務先が労働災害保険を付保していない比率:45.6%
(4) 職業病患者の勤務先が養老保険を付保していない比率:55.9%
(5) 職業病患者が勤務先から何らの補償も賠償も受けていない比率:37.8%

 中国政府“衛生部”の資料によれば、全国で約1600万社の企業に有害な職場環境が存在し、約2億人が職業病の危険にさらされた職場で働いているのだというが、上述の調査結果は、その大半が“農民工”である労働者たちの過酷な現実を映し出していると言っても過言ではない。ちなみに、塵肺に次ぐ職業病患者の第2グループは中毒で20%を占める。

咳が出る、痰が出る、息苦しい

 ところで、上記の“開胸験肺”とはどのような悲しい出来事だったのか。その出来事の主人公は、1981年に河南省新密市劉寨鎮の老寨村に農民の子として生まれた張海超である。“新密市”は河南省の省都・鄭州市から西南に40キロメートルに位置する“県級市(市に次ぐ県レベルの市)”で、鄭州市の管轄下にある。中学卒業後は父親を助けて野菜売りをして生活していた張海超は、20歳頃から靴の販売などにも手を染めるようになったが、2004年8月からは友人の紹介で実家からオートバイで数分の距離にある化学原料と化学製品の生産企業、“振東耐磨材料有限公司”(以下「振東耐磨」)で臨時工として働くようになり、2007年10月に退職するまでの約3年3カ月を同公司で勤務した。

 この点について、中国メディアの多くは3年3カ月を通しで勤務したかのごとく報じているが、一説には2004年8月~2005年5月、2005年8月~11月、2006年3月~2007年10月と勤務時期は3回に分かれていたとあり、これだと通算で2年10カ月となる。いずれにせよ、張海超の振東耐磨での勤務期間は3年前後と短かった。なお、張海超は2004年末に結婚し、2005年には女の子を授かり、貧しいながらも親子3人で幸せな生活を送っていた。

 振東耐磨では雑役、砕石・破砕、プレス加工などの各種業務に従事した張海超であったが、2007年8月頃になると身体の不調を感じるようになった。咳が出る、痰が出る、息苦しい。風邪をひいたと思って市販薬を飲んだが、2カ月経っても治癒しない。地元の病院で診てもらうと肺結核だと言うので、数か月にわたって治療を続けたが、これも効果なし。そこで、鄭州市内にある規模の大きな病院を巡って診察を受けると、どこの病院も診断結果は肺結核ではなく、塵肺症の疑いありであった。

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「胸にメス入れて勝ち取った労災認定」の著者

北村 豊

北村 豊(きたむら・ゆたか)

中国鑑測家

住友商事入社後アブダビ、ドバイ、北京、広州の駐在を経て、住友商事総合研究所で中国専任シニアアナリストとして活躍。2012年に住友商事を退職後、2013年からフリーランサーの中国研究者として中国鑑測家を名乗る。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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高坂 晶子 日本総合研究所調査部主任研究員