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パフォーマンスか本気か?温家宝首相

相次ぐ政治改革発言の裏に透ける権力闘争

2011年5月25日(水)

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 中国の温家宝首相と韓国の李明博大統領が5月21日、22日と訪日した。22日の日中韓首脳会談のための訪日だが、とりわけ注目すべきは温家宝氏の存在感だ。

 菅直人首相、李大統領とともに東日本大震災の被災地の福島県と宮城県を訪れ、原発事故の風評被害を防ぐために、菅首相と一緒にキュウリやサクランボを食べてみせ、お土産を携えて福島市の避難所を訪れ、椅子に座る被災者と地べたにあぐらをかいてにこやかに交流し、しかもその写真が新華社で配信された。この写真は、中国の首相がまるで被災者の前で跪いているように見える絵柄で、中国通の友人に言わせれば「平時ならあり得ない写真」と驚いていた。

やたら目立つ数々の言動の延長線上

 日中首脳会談では、東シナ海ガス田の共同開発について従来なら「環境が整ったら」「急がば回れという言葉もある」などと条約締結交渉の先送りを示唆していたのに、今回はかなり前向きの姿勢を示し、協調路線をアピールした。

 もう1つ驚くべきは、温家宝氏が菅首相や李大統領との会談の席で、北朝鮮の金正日総書記の訪中を確認したことだった。従来、金総書記の訪中については帰国後に確認するのが慣例だ。

 極めつきは、昨年2度にわたって中国公演が延期になっていた人気グループSMAPメンバーと交流し、秋に予定されている北京公演について「両国の友情の種をまき、きれいな花が咲くよう心から祈っています」と歓迎の意を伝えたこと。SMAPは温首相のリクエストに応じる形で中国語版「世界に一つだけの花」をアカペラで披露。温首相は目を潤ませて聞いていたとか。この会見は中国側からジャニーズ事務所に申し込まれたという。

 こういった過剰なまでの日本向けサービスは、尖閣諸島海域で起きた中国漁船衝突事件以来、悪化している対日本感情の好転を狙ったもの、というだけだろうか。一般的に中国の指導者はそれが国内や国際社会でどう報じられ、どう影響するかも考慮する。やはり昨年から続く温家宝氏のやたら目立つ数々の言動の延長線上にあると見るべきではないだろうか。

「映画スターの温」と揶揄

 とにかく昨今の温家宝氏の言動は異様に目立っている。もともと感情表現過多で、ことあるごとに涙ぐみ、四川大地震の被災地では、すぐに救援に動かなかった解放軍が現地に到着したとき「人民に養われているのが分かっているのか」と面罵するなど、庶民に同情的な「人民宰相」として人気を博してきた。中国の若いネット・ユーザーから「温宝宝」あるいは「温爺爺」の愛称で呼び親しまれる。

 ただ、中国の首相としての実務面での評価はそう高くないのではないだろうか。国有企業改革にメスをいれ大量のレイオフを出したことで庶民に憎まれながらも、経済改革の鉄腕をふるった朱鎔基前首相と比較すると見劣りはする。結果からみると、過剰流動性の問題も不動産価格の安定化も農村経済改革も確たる結果は出せず、リーマン・ショック後の経済立て直しについては、世界に金融人脈を誇る王岐山・副首相においしいところをさらわれてしまった感がある。

 だからこそ、「被災地で涙を流す」といった行動も、北京在住の作家で評論家の余傑氏が「温影帝(映画スターの温)」と揶揄するように、大衆に迎合した表面的な演技であるという厳しい批判に遭うのだろう。私も温家宝氏が昨年春ごろからたびたび政治改革についてかなり踏み込んだ支持発言をしていたことについても、単なる引退前の花道を飾るパフォーマンスくらいにしか見ていなかった

 温家宝氏の政治改革に対する積極姿勢は、政治改革の行き過ぎで鄧小平氏の逆鱗に触れ失脚した胡耀邦氏の21回目の命日である昨年4月15日付「人民日報」で、非常に感傷的な追悼文を発表したあたりから突出してくる。

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「パフォーマンスか本気か?温家宝首相」の著者

福島 香織

福島 香織(ふくしま・かおり)

ジャーナリスト

大阪大学文学部卒業後産経新聞に入社。上海・復旦大学で語学留学を経て2001年に香港、2002~08年に北京で産経新聞特派員として取材活動に従事。2009年に産経新聞を退社後フリーに。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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