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日本経済の復興の行方が、今後の日中関係を決める

  • 瀬口 清之

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2011年5月31日(火)

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 地震、津波、原発事故--3つの打撃が日本を同時に襲った。そんな日本に対して世界中が同情が寄せた。多額の義援金が寄せられただけではない。被災者の捜索要員や原発の技術者など、専門家を派遣してくれた国もある。

 しかし、我々は、これを喜ぶだけでよいのだろうか?

 世界の国々が寄せてくれた「友情」に、日本は真摯に応えているだろうか? 放射能汚染水を海に流したことに対して、中国と韓国は当惑している。さらに、国際政治は「友情」だけで動いているわけではない。好意の背景には「国益」を維持・増大させるための冷徹な計算もある。“借り”はいつかは返さなければならない。

 この連載では、米・中・韓・ロの主要国を対象に、東日本大震災が何をもたらし、日本との関係がどう変わるのか、について専門家の分析を紹介する。

 第3回は、瀬口 清之 キヤノングローバル戦略研究所 研究主幹 に日中関係を分析してもらう。

 4月中旬から下旬にかけて北京と上海を訪問した。その間、中国の友人に会うと必ず家族や親戚の安否を尋ねられ、震災へのお見舞いの言葉を贈られた。日本のことを親身に心配し、復興を応援してくれる中国の友人の温かい心に触れた。

 中国に駐在する多くの日本人も私と同じ気持ちを抱いているが、それを伝える報道は少ない。以下では震災後の中国人の日本に対する見方の変化を紹介しながら、今後の日中関係について考えてみたい。

震災前の日中関係:尖閣沖での漁船衝突事件を契機に悪化

 2010年9月に尖閣諸島で漁船衝突事件が発生し、日中関係は一気に悪化した。その影響で日中双方において、反中・反日感情を持つ人が国民の7~8割に達した。

 その後、反中・嫌中感情を抱く日本人の比率は8割前後のまま推移した。一方、中国では、日本への旅行や安心・安全な日本食への根強い人気などが手伝って対日感情が徐々に改善に向かっていた。ただし、その改善テンポは遅く、過激な意見を持つ人が投稿する割合が高いネット上の書き込みでは、震災直前も8割が反日的な内容だったと言われる。

 そうした状況において東日本大震災が発生し、中国人の対日感情は一変した。

震災直後:被災民のモラールの高さに驚き、日本に対する見方が劇的に変化

 中国のメディアは震災直後から1週間もの間、異例の扱いで今回の震災を大きく取り上げた。24時間いつテレビを見ても、CCTV(中国中央電子台:日本のNHKに相当)を中心に、どこかの番組で日本の震災を報道しているという状態だった。このため、ほとんどの中国人が震災直後の日本の状況をよく知っている。

 被災者の感情に配慮して日本では報じられなかった生々しい映像も、中国のテレビは報じている。このため彼らは、日本人以上に大震災後の悲惨な状況を目の当たりにした。そんな中国人の友人が、日本および日本人に対して感じたことを語ってくれた。その気持ちが集約された代表的なものを紹介する。

 「これほど凄まじい自然災害に普通の中国人が直面すれば、恐ろしさのあまり精神的に混乱していただろう。社会秩序を保つことは極めて難しかったはずだ。それにもかかわらず日本人は我慢強く精神的・肉体的な苦痛を堪え忍び、冷静に秩序を保っていた。略奪、救援物資の奪い合いなども見られなかった。どこでも整然と並んで少ない物資を分け合う姿に、日本人の人間性やモラールの高さを感じた」

 「これまで日本人をよく知らなかった中国人は、震災報道を見て、日本人はこんな立派な国民だったのかと驚いた。また、中国人を差別することなく、日本人と同じように扱い、自分が犠牲になっても中国人留学生の命を助けてくれた日本人がいたことに感動した中国人は多い」

 震災直後の日本政府首脳の姿勢や天皇皇后両陛下の行動に対する評価も高かった。政府首脳は、被災地で演説するなど派手なパフォーマンスを行うことなく、実務的対応に徹した。両陛下はご高齢にもかかわらず被災地を訪問し、床にひざまずいて被災者に優しく言葉をかけられた。

 この結果、中国人の対日感情に劇的な変化が生じた。震災直前まで、中国のインターネット上の日本関連の書き込みは8割が反日あるいは嫌日的内容だった。しかし、これが一変し、9割が親日的あるいは日本を評価する内容に変わった。

 こうした状況下でも一部の中国人は「因果応報だ」などと日本人の不幸を喜ぶ内容の投稿を行った。これに対してその他の中国人から「そんなことを考えるお前は人でなしだ」「そんなことを考える人間がいるなんて同じ国民として恥ずかしい」と厳しい非難が集中したと聞く。

その後:日本政府と東京電力に対する評価は急落

 しかし、福島第1原発の事故発生と、その後の政府及び東京電力の対応の問題点が報道されるにつれて、日本政府及び東京電力に対する不満が急速に高まった。中国人が特に問題視したのは、1)放射能汚染水を事前に通告するなく海洋投棄したこと、そして2)日本の放射性物質が、微量ではあるが、首都北京の放射線量を増加させたことだ。放射能汚染を恐れた北京市民は、北京周辺で栽培された地場のホウレン草などを食べなくなった。

 北京のみならず沿海部では、中国への放射能汚染の影響を過剰に心配する人たちが急増した。それでも日本人に対する高い評価はマイナスの影響を受けていない。多くの中国人が「日本人は立派だが、日本政府と東京電力は評価できない」と感じている。

放射能汚染への過剰反応

 北京の野菜への影響や沿海部での放射能汚染に対する過剰な反応は、中国のメディア報道が招いた一種の風評被害と言える。しかし、日本のメディアも同じことをやってきた。中国だけを批判することはできない。

「震災が変える日本外交~米中韓ロの思惑」のバックナンバー

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