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中国版「三丁目の夕日」は美しいか

急成長の歪みの中で盛り上がる「毛沢東ブーム」

2011年6月7日(火)

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 中国では、いま、毛沢東ブームが静かに再来しているようだ。断定的な言い方をしないのは、中央政府系マスコミがほとんどこの話に触れておらず、筆者が見たことや聞いたことはあくまで「木」であって「森」ではないからだ。しかし、ブームが起きていることは、やはり確実ではないだろうか。

 いつから始まったのか定かではないが、中央政府の直轄市である重慶市で「唱紅打黒」運動が始まったことが、このブームの1つのきっかけではないかと推察される。

暴力団を一掃し、社会主義を唱える

 「打黒」とは黒社会(暴力団)の一掃運動、「唱紅」とは赤を歌う(社会主義を唱える)ことを意味している。前者は分かりやすいが、後者は中国をあまり知らない外国人や若い世代の中国人には分かりにくいかもしれない。文化大革命のことをわずかに覚えている筆者は、「紅歌」イコール革命の歌だと理解している。なぜなら、あの当時にはやっていた毛沢東氏や社会主義、人民解放軍などをうたった「紅歌」を、筆者は今でもいくつか覚えているからだ。

 重慶市政府が推奨している36曲の「紅歌」リストをみると、『祖国万歳』とか『紅旗の恋』、『延安に行きたい』など、明らかにタイトルから革命歌のように見えるものもあるが、『相思相愛』、『愛のために乾杯』など判別がつかないものもある。

 筆者はこれらの歌をほとんど知らない。ただ、若者が熱中している香港や台湾のラブソングでないことは確かで、どちらかというと、革命歌というよりも、愛国心や団結を呼びかけたり士気を鼓舞したりする大陸民謡というイメージである。やや不適切な表現かもしれないが、つい最近、日本のテレビで繰り返し流されてきた「ACジャパン」のコマーシャルのようなものだと想像すれば分かりやすいだろうか。

 文化や政治体制が違うため、表現の手法が異なるのは当然のことだが、かつて大連を「北方の香港」に変貌させた実績を持つ薄煕来・重慶市書記がこのたび重慶市で行っている「唱紅打黒」は、市書記に就任した後の「新政」であり、象徴的な意味合い以上のものではないはずだと筆者は考えていた。

権力闘争が再び起きている可能性

 しかし、薄煕来氏の試みは「極左運動」ではないかと、中国国内では予想以上の論争を呼び起こしている。

 「極左」あるいは「極右」という表現は、文化大革命時にインターネットがあったなら、間違いなく検索頻度の高いキーワードになっていたはずだ。実際、70年代末期から計画経済体制から市場経済体制への移行を決めた90年代前半にかけても時々は登場していた。しかし、今になってこのような表現を目にする機会が増えたというのは、本当に久しぶりで、いささか不思議な気がする。

 中国の政治や経済の事情に通じた方ならすぐに気づくと思うが、この現象の背景には、昔風にいえば権力闘争、今風にいえば政策論争が再び起きている可能性がありそうだ。

 ご存知のように、「左」は社会主義、「右」は資本主義、その程度が軽い場合は「左傾」、「右傾」、深刻な場合は「極左」と「極右」と、それぞれニュアンスは異なっている。要するに、「社会主義」か「資本主義」かの論争が足元で再燃しているという可能性である。

 既におなじみの「白猫」か「黒猫」か(「黄猫」か「黒猫」か、の説も)の論争は、路線論争が起きるたび、鄧小平氏が「白猫であろうと黒猫であろうと、鼠を取ってくれる猫がいい猫だ」と釘を差して収束した。実際、改革・開放以降の中国経済の快進撃は「猫」が功労者だ。「猫論」という単純明快な説明のおかげで、改革・開放に対する国民の理解と支持が急速に高まったのである。

 では、なぜ、このような論争が再燃しているのか。

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「中国版「三丁目の夕日」は美しいか」の著者

肖 敏捷

肖 敏捷(しょう・びんしょう)

エコノミスト

フリーのエコノミストとして原稿執筆や講演会などの活動をしている。テレビ東京の「モーニング・サテライト」のコメンテーターを担当中。2010年の日経ヴェリタス人気エコノミスト・ランキング5位。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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