「我々の使命はアルカイダを崩壊させ、その組織を解体させることだ。ビンラディン殺害の例で分かるように、この目標は小規模な特殊部隊で達成できる。アフガニスタンの何十もの地域に陸軍や海兵隊の大隊を駐留させる必要などない」
オサマ・ビンラディンの殺害に成功したことで、米政府内ではこうした議論に拍車がかかっている。
オバマ政権の現在のアフガン戦略では、今年7月にアフガン駐留米軍の一部撤退を開始させることになっている。そして6月中には、どれくらいの規模の米軍を撤退させるのかについて政権内で正式に決定を下し、世界に発表すると見られている。同時に今後のアフガニスタン安定化への道筋についても、これまでの成果を踏まえて新たな方針を示すことが期待されている。
米軍のアフガニスタンからの一部撤退と今後の関与をめぐり、オバマ政権内では2つの異なる意見がぶつかり合っている。単純化すると、「米軍の早期撤退を求めるグループ」と「早期の撤退には慎重で最低限の撤退にとどめるべきと考えるグループ」の対立である。オバマ大統領の再選キャンペーンが本格化する中、ビンラディン殺害を機に、「米軍の早期撤退を求めるグループ」の力がますます強くなりつつある。
オバマ政権は、もともと「アルカイダ打倒」を対アフガン戦略の基本に据えていたので、ビンラディンを殺害したことで、「一つの区切り」が出来たとする意識が強く芽生えたとしても不思議ではない。しかもバイデン副大統領をはじめ、オバマ政権内には、もともと3万人の米軍増派には反対で、大部隊を投入した対反乱(COIN)作戦には批判的なグループが存在する。
彼らは「タリバンに対する対反乱作戦」ではなく、「アルカイダにターゲットを絞った対テロ作戦」を重視する戦略思考を持っている。要するに大規模の部隊を都市に派遣して治安維持をさせるのではなく、小規模な特殊部隊と無人機などを使ってパキスタン側のアルカイダに焦点を絞った戦争をすべきいう考え方だ。ビンラディン暗殺に成功したことで、彼らの考え方が正しかったのだとする機運が高まっている。
2009年末にアフガン戦略をめぐって政権内で議論が白熱した時、こうしたバイデン副大統領を中心とする「対テロ重視派」に対して、「対反乱作戦(COIN)」を重視して大規模な米軍増派の必要性を主張したのが米国防総省だった。
結局、オバマ大統領は米軍の意向を無視できずに3万人増派に踏み切ったのだが、今、アフガニスタンからの米軍撤退の規模をめぐって、この時の対立が再燃しているのだ。
言うまでもなく、対テロ重視派は、大規模な駐留米軍は必要なく、それゆえ大胆な米軍撤退を進められると考えている。これに対し米国防総省は、今性急に撤退を進めてしまえば、せっかく少しずつ回復させてきたアフガン国内の治安が悪化し、タリバンの勢いがさらに増してしまうとして、撤退規模を最小限に抑えようと考えている。
この政権内の議論が、ビンラディン暗殺作戦の成功により、「対テロ重視派」に圧倒的に有利な形勢となっている。しかも、COIN重視派の筆頭とも言えるペトレイアス・アフガニスタン駐留米軍司令官が、今回のビンラディン暗殺作戦を指揮したCIAの長官に就任することが決まっている。イラク戦争時からペトレイアスを支えたゲーツ国防長官も6月末で退任し、その後任にはパネッタCIA長官が就任することも決まっている。
この政権人事も、今後はCIAや小規模な特殊部隊を主力とした対テロ作戦を重視していくという方針の表れと言えるだろう。
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