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デマに耐え切れずまた自殺が…

「知る権利」もあれば「忘れ去られる権利」も必要

2011年6月8日(水)

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 韓国でまたもや、ネット上のデマを苦にして有名人が自殺した。故ソン・チソン アナウンサーは「野球の女神」と呼ばれ、美貌と実力を備えた女子アナとして大活躍していた。野球選手をインタビューした本の出版も目前に控えていた。そんな彼女が、ネット上で広がった根拠のない噂に耐え切れず、5月23日、19階から布団をかぶって飛び降りた。

 彼女は自殺する2週間ほど前、自身のTwitterに「神様助けてください。飛び降りるのは怖いし、首を吊ると痛すぎます。お願い。もう楽にさせてください」とつぶやいた。そのつぶやきを見た同僚アナウンサーが警察と消防署に連絡して救助隊が出動したこともあった。

 その後ファンが声援を送り続けたのが効いたのか、「もう大丈夫」というつぶやきがあった。

有名アナウンサーと野球選手の恋愛をめぐるデマ騒動

 だが、自殺をほのめかすつぶやきがあった同じ日、彼女は自分のHOMPY(Facebookのようなソーシャルネットワークサイト)に「信じてもらえないかもしれないが…」という書き出しで始まる、メッセージを書き込んだ。「7歳年下の野球選手と自分は恋愛だと思っていたのに、相手に弄ばれただけだった」という赤裸々な内容だった。もちろん実名入りだ。

 かなり衝撃的な内容だったため、あちこちのソーシャルネットワークサイトにコピーされ、各種メディアがこぞって報道した。

 HOMPYに登場した野球選手は2軍行きとなった。それからネットでは日に日に噂が膨らみデマが独り歩きするようになった。HOMPYやTwitter上の故ソン アナウンサーの書き込みは削除されたが、既にコピーが広まり、あちこちで悪質なコメントが付加された。「そんな話を書き込むなんて恥知らず」といった批判が続いた。

 故ソン アナウンサーはHOMPYの文章は自分で書いたものではないと否定し、「その野球選手とは1年半も前から交際している。ファンには心配かけて申し訳なかった」とインタビューで答えた。

 ところが今度はその野球選手が、HOMPYに書かれたことをほぼ認めながらも「交際したことはない」と否定した。ネットでは故ソン アナウンサーを「妄想癖があるのではないか」「精神状態がおかしいのではないか」と攻撃した。

 故ソン アナウンサーをネット上で擁護する人もいた。「男女が交際すれば別れることもある。なぜ女性だけがだらしがないと非難されるのか」。だが、彼女は物議をかもしたとして番組を降番させられた。メディアも「読者の知る権利」を振りかざし、ネット上の噂を元に連日、報道した。故ソン アナウンサーは(上記の)インタビューで「(Twitterを)個人的な空間だと思って書いたのに、こんなにことが大きくなるとは思っていなかった」「(ネットで出回っている内容は事実と)違うといっても誰も信じてくれない」とも話していた。「デマを広げた人を探してほしいとサイバー捜査隊に依頼したけどもういい、許す」という発言もしている。

 誰も味方になってくれない。後ろ指を指される。そのことに耐え切れなくなったのか、彼女は母親が目を離した隙に布団をかぶって飛び降りた。

事実であるかに関係なく~ウケそうな書き込みが増える

 韓国ではネット上のデマや悪質なコメントに耐え切れず芸能人が自殺する事件が繰り返し起きている。有名な事件としては、2007年1月に人気歌手のユニが、2008年10月には国民的女優チェ・ジンシルさんが自殺した。当事者がどんなに「違う」「そうでない」と釈明しても、ネットでは「友達の友達から聞いた話」「芸能界に詳しい知人から聞いた確かな情報」というデマが広がるばかりだった。

 ソーシャルネットワークは、ネットを使って、より便利に友達とコミュニケーションするための道具であった。それがいつの間にか、面白いことを書いて目立ちたい、自分のHOMPYに訪問する人を増やしたい、Twitterのフォロワー数を増やしたい、リアル社会での自分は何でもない人だけどネットの世界では注目されたい、といった欲望を満たすための場になった。それがエスカレートして、事実であるかどうかに関係なく、人々がクリックしてくれそうなことばかり書き込まれるようになった。

 故チェ・ジンシルさんの場合は、警察が、あるデマを広げた発信元を逮捕した。ところが逮捕された20代の女性は、チェさんに電話をかけて「たかがそれぐらいのことで、なんで怒ってるんですか」と笑いながら話したという。

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「デマに耐え切れずまた自殺が…」の著者

趙 章恩

趙 章恩(ちょう・ちゃんうん)

ITジャーナリスト

研究者、ジャーナリスト。小学校~高校まで東京で育つ。ソウルの梨花女子大学卒業。東京大学学際情報学府博士課程に在学。日経新聞「ネット時評」、日経パソコン「Korea on the web」などを連載。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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