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ウランが足りない?

印中、原発増設で争奪戦

2011年6月20日(月)

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 中国で著名な理論物理学者、何祚シウ氏(フーヅォシウ)が5月末、中国科学院発行の新聞に投稿した。「中国の原子力発電は絶対に飛躍的に発展できない」として、原発の耐震安全性やコストに疑問を投げかけ、性急な建設計画を批判した。

 興味深いのは、「中国には豊富なウランがなく輸入も石油や天然ガスより難しい」との指摘だ。たくさん原発を造っても、燃料がボトルネックになれば意味がない。石炭価格高騰で深刻な電力不足に直面している中国ならではの視点で、日本での議論にはあまり出てこないテーマだ。

 3月11日の東日本大震災以降、国際的に取引されている酸化ウランのスポット価格は20%以上急落した。各国の原発の建設計画が不透明になったためだ。だがその後すぐに値を戻し、震災前の水準には届かないまでも、1年前の価格を3割以上上回る1ポンド=56ドル(約4490円)前後で推移している。

 市場では、新興国での原発の建設ラッシュにより、慢性的な供給不足が予測されている。中国やインドの需要の伸びが最大の要因だ。

 世界のウラン埋蔵量は約540万トン。世界一の原発大国へ突き進む中国の埋蔵量は、そのうち3%にすぎない。新疆ウイグル自治区など国内で開発を進めているが、とても全需要は賄えない。3月11日以降、国有企業を通じてアフリカでのウラン権益を確保する動きを進めている。

 片やインドはNPT(核拡散防止条約)に加盟しておらず、これまで豪州などからのウラン輸入ができなかった。ただここにきてカザフスタンやアフリカ諸国との間で権益拡大の動きを加速させている。

 電力会社などはウランの大半を長期契約で調達している。スポット取引で売買されるのは一部で、値動きも激しい。2007年6月には過去最高値の1ポンド=136ドル(約1万1000円)をつけたが、1年後には半額以下になった。

 いずれにしてもウラン価格は上昇トレンドにあると見る投資家が多い。世界的に著名な投資家、ジム・ロジャーズ氏もその1人で、「これからウランなどの原発関連投資を始めたい」と本誌の取材に答えた。

 米露の協定によりロシアから提供されてきた核弾頭解体に伴う高濃縮ウランの供給が2013年までに終わる可能性もあり、さらに需給が逼迫するとの見方もある。

 ウランの有無はその国のエネルギー政策にも直結する。例えば原発建設に積極的なベトナムには未開発のウラン鉱山が確認されている。国産ウランを活用することで、エネルギー自給率を高めるという目的もある。

 日本でも原発推進と並行して、電力会社と商社、そして政府が一体となって海外での権益確保に取り組んできた歴史がある。当面、身動きが取りづらくなるだろうが、新興国を中心とした争奪戦は進む。

 ウランも含め、過去に安定的に調達できた燃料が今後も同じように手に入るとは限らない。日本のエネルギー政策見直しにおいては、こうした川上からの視点が欠かせない。

日経ビジネス 2011年6月20日号147ページより

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「ウランが足りない?」の著者

熊野 信一郎

熊野 信一郎(くまの・しんいちろう)

日経ビジネス記者

1998年日経BP社入社。日経ビジネス編集部に配属され製造業や流通業などを担当。2007年より日経ビジネス香港支局に異動、アジアや中国に関連する企画を手がける。2011年11月に東京の編集部に戻る。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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