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“思想官僚”が語る中国の将来

10年後は“赤い帝国”か“共和国”か

2011年6月23日(木)

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 これまでの重慶3部作を総括すると、現代中国政治経済――2012年以降における政局の行方と、ポスト金融危機時代の中国経済成長モデル――を占う上で、薄熙来が推し進めている重慶モデルは示唆に富んでいる、とまとめることができる。

 前回コラムの文末に「つづく」としたのには理由がある。3部作プラスアルファを書きたかったからだ。日本語では上手く表現できないのであるが、筆者自身、現代中国を理解するには、この「アルファ」が大切だと思っている。

 政治体制、経済政策、社会問題、文化現象、若者の素顔。どんなテーマでもそうだが、「なるほど、そうだったのか」で納得して終わりにするのではなくて、もう一歩踏み込んで、複雑な中国事情の奥深くへ入り込んで行く努力をしたい。言わば、現代中国と向き合い、中国人と付き合っていくための姿勢を考えよう、というわけである。

 「重慶と薄熙来の政治経済学」にプラスしたいのは、中国のこれからを展望する上で、避けては通れないテーマ。すなわち「権力闘争」を越えて、その先にある「イデオロギー闘争」という問題である。

伝説の男に会いに行く

 先月末、筆者は重慶市内に位置する隠居場のような空間を訪れた。重慶のある文化人から紹介されたのである。居内で待っていたのは僧侶のような格好をした老人だった。

 話がそれるが、中国で暮らす時に役立つティップスを一つ。中国という、人脈がすべての社会で暮らしていると、状況を理解できないまま、自分の知らないところへ連れて行かれるケースが少なくない。

 この時も、なぜ急にこの人物と会うことになったのか、よく分からないまま出かけていった。時計は18時を回り、日が落ちかけていた。老人は、電気がついていない薄暗い部屋の中で、中国産の煙草をふかしながら、雲南産のプーアル茶を口元に運んでいた。

 「伝説の男はこんな格好をしているのか」

 これまで、多くの知識人から、この男について耳にしていた。彼について書かれたものを読んだこともあったが、筆者がイメージしていた姿とは、全くマッチしていなかった。

 以下、この老人をW氏と呼ぶことにする。W氏は胡耀邦以下、歴代の総書記、国家主席たちに思想面から影響を与えてきた。時のリーダーたちが「政治とイデオロギーをいかにくっつけ、引き離すか」という作業に取り組むに当たり、影でサポートし続けた人物である。絵に描いたようなリベラリスト。決して表には出てこない。「技術官僚」に対比して、W氏のことを「思想官僚」と呼ぶ中国の知識人もいる。

政治改革の前に社会改良が必要

 雑談から入り、お互いの話し方や思考回路が把握できてから、筆者は進んで本題に切り替えた。

 「W先生、来年の18党大会に向けて、政治は動いていきますよね。ここ重慶からウォッチしていると、特別な景色に見えるんでしょうね。政治局常務委員の人選とかいうテクニカルな質問ではないです。2012年を境に、中国政治はどう変わっていくんでしょうか?」

 W氏は煙草をふかしながら、目をつぶって聞いていた。途中、思い出したように、プーアル茶を汚いコーヒーカップに入れて、筆者に差し出してくれた。目で「ありがとうございます」とだけ返した。

 「良い質問だ。重要なテーマだよ。加藤さんはどう思うんだい。僕は君がこの問題をどう捉えているのかを知りたいなあ」

 W氏はなかなか自らの見解を語ろうとしなかった。もったいぶっている感じすら見受けられた。そもそも、人の話をちゃんと聞いているのか、と突っ込みたくなるくらい、リラックスして座っている。

 「長期的に見れば、やはり政治改革、民主化が歴史の分かれ目になると思います。ただ、習近平氏などによって構成されるであろう第18~19党大会の期間は、政治改革は棚上げされると思います。本当の勝負は2022年からじゃないですか?」

 「政治改革の前にやらなければならないことがある。社会改良です。まさに今、重慶で薄熙来書記が取り組んでいるように、人民の生活レベルを向上させ、生活環境を整えないと、民主化につながらないでしょう。戸籍、教育、医療、土地など、改革がうたわれているにもかかわらず、ずっと後回しにされてきた問題に対処するのが、向こう10年における中国政治のミッションだと、僕は思います」

コメント17件コメント/レビュー

やはり結論は赤い帝国ですね。少なくとも現体制からスムーズに共和国になる事だけは絶対ないでしょう。一党独裁の強権で複数の民族を支配していた国家は、民主化したら一つの例外もなく国家として崩壊しているのを見ているのにそれでもなお共和制を選択するなんて為政者としては自殺行為でしかありません。共和国になるとすれば、赤い帝国としての中国で、経済成長も鈍化して民衆の不満を経済発展という希望で吸収できなくって不満が爆発した時でしょう。全国民に公平に経済発展の恩恵をいきわたらせるという今の日本の不況を克服するよりも難しそうな難題をクリアーできなければ赤い帝国にも良い未来はないでしょう(2011/06/30)

「加藤嘉一の「脱中国論」現代中国を読み解く56のテーゼ」のバックナンバー

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「“思想官僚”が語る中国の将来」の著者

加藤 嘉一

加藤 嘉一(かとう・よしかず)

国際コラムニスト

現在米ハーバード大学アジアセンターフェロー。世界経済フォーラムGlobal Shapers Community(GSC)メンバー。中国版ツイッター(新浪微博)のフォロワー数は150万以上。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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いただいたコメント

やはり結論は赤い帝国ですね。少なくとも現体制からスムーズに共和国になる事だけは絶対ないでしょう。一党独裁の強権で複数の民族を支配していた国家は、民主化したら一つの例外もなく国家として崩壊しているのを見ているのにそれでもなお共和制を選択するなんて為政者としては自殺行為でしかありません。共和国になるとすれば、赤い帝国としての中国で、経済成長も鈍化して民衆の不満を経済発展という希望で吸収できなくって不満が爆発した時でしょう。全国民に公平に経済発展の恩恵をいきわたらせるという今の日本の不況を克服するよりも難しそうな難題をクリアーできなければ赤い帝国にも良い未来はないでしょう(2011/06/30)

先に達成すべき課題は、法治主義の確立でしょう。社会的な不公平が、「法の下の不平等」の基づくものである限り、全ての利害関係は、権力闘争とならざるを得ません。全ての共産党員が、多かれ少なかれ、不法な手段で利益を得ているということなら、実現は難しいのかもしれませんが。(2011/06/27)

加藤さんも福島さんもいつもとても勇気をもって中国の痛いところを問題にされ気持ちが良い。中国政府に口封じさせられないか心配する時もある。それにひきかえ日本政府は胡氏や温氏に平身低頭して情けない。中国と喧嘩するぐらい悪いところははっきり指摘する政治家の出現が待たれる。日本の富は中国へ吸い取られ、日本の市場に中国製品が溢れ雇用は奪われデフレは中国のため終わらない。一生懸命、中国の発展を願ってきても相変わらず反日だ。漢民族はうまく満州民族から政権を取り返せた。世界一の大量殺戮を自国民にした毛氏をまだ崇拝とはばかげた国だ。速く共和国への道を歩みだすと日本は安全だ。(2011/06/27)

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三品 和広 神戸大学教授