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採用試験カンニングは役所ぐるみ

満点解答を記した用紙は「親の威光」で渡された

2011年6月24日(金)

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 内モンゴル自治区の区都・フフホト市にある“人材市場(雇用サービス機関)”のビルで、2011年5月28日の午前中に地元のラジオ局、“呼和浩特人民広播電台(フフホト人民放送局)”(以下「放送局」)の専門職採用試験が行われた。フフホト市人事局が公表した「2011年事業組織職員公開募集要項」によれば、放送局の募集人員は6人で、その内訳は編集記者2人、放送司会者4人であった。

 採用試験の応募条件は、編集記者が「専門は限定せず、学歴は高等専門学校および全日制大学の卒業生」、放送司会者が「専門は限定せず、1980年4月1日以降の出生、“普通話(標準語)”検定試験2級甲レベル以上」となっていた。ただし、今回の試験の合格者はさらに、編集記者は「新聞学」、放送司会者は「放送と司会技術」に関する専門知識の試験を受ける必要があるのだという。

 当該採用試験の案内は5月16日に放送局名で発表され、インターネットを通じて広く通知された。その内容は、5月28日午前中に試験を実施するので、試験応募者は5月25日から27日までに、卒業証明書、身分証、標準語検定試験レベル証明の原本あるいはコピーをフフホト市中山西路呼市首府人材市場ビル3階に持参し、その場で資格審査を受けて受験申し込みを行うことであった。5月27日の応募締め切りまでに、資格審査を経て受験料50元(約630円)を支払って出願した人数は410人を上回っていた。

まさに模範解答であることを確認

 6月3日付の全国紙「中国青年報」は、この採用試験で発生した組織的なカンニング事件の顛末を次のように伝えている:

 放送局の採用試験は5月28日午前中に人材市場ビルの4階と5階にある試験会場で行われ、受験番号1番から310番までの受験者が4階の会場、311番以降の受験者が5階の会場に、それぞれ振り分けられた。試験終了後にある受験者が語ったところによれば、5階の会場は会議室で、受験者はひじとひじとがぶつかるほどすき間なく座り、横を向かなくても左右の受験者が机の上に置いている受験票の文字がはっきり読めるほどだった。また、不思議なことに、試験中に受験票の確認は1度も行われなかったという。

 試験は2つの会場同時に9時30分から開始された。受験者たちによる試験問題との格闘が1時間ほど過ぎた頃、5階の会場の前列に座っていた男性受験者が突然立ち上げると、「試験問題の満点解答が書かれたカンニング用紙があります」と大声で叫んだ。その受験者は、「私は○○ラジオ局の『毎日3・15』という番組の記者ですが、この私の前に座っている男はカンニング用紙を持っています」と言って、前列の受験者から取り上げた1枚の紙を頭上でひらひらさせた。

 カンニングを告発された受験者は取り上げられた紙を取り戻そうとしたが、立ち上がった周囲の受験者数人に阻止された。すると、カンニングを告発した受験者が、「皆さん、覚えておいて下さい。こいつの受験番号は266ですよ」<注>と叫び、取り上げた紙を持って会場の前方に歩きながら、「試験問題と同じ内容の解答があるというのに、我々に受験させるとは、いったいどういうことだ。これはカネを騙し取ったのと同じだ。この放送局がこういうインチキ試験をするのはこれが初めてではないんだ」と声を張り上げた。

<注>受験番号266の受験者は本来なら4階の会場で試験を受けているはずだが、どうして5階の会場で受験していたのか。記事はこの点については触れていないが、恐らく組織的なカンニングを行うには5階で受験する必要があったのであろう。受験票の確認は一度も行われなかったことと符合する。

 これに続いて、自分は記者だと名乗る別の受験者が同じように1枚の紙を手にして立ち上がり、受験者全員にその紙を示した。すると、試験監督官の1人が最初にカンニングを告発した受験者に満点解答が書かれているというカンニング用紙を渡すように要求したが、拒否された。そうこうする間に、受験者の多くが提示されたカンニング用紙と試験問題を見比べ、カンニング用紙に書かれている解答が内容も順番も全て試験問題と同一であり、まさに模範解答であることを確認したのだった。

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「採用試験カンニングは役所ぐるみ」の著者

北村 豊

北村 豊(きたむら・ゆたか)

中国鑑測家

住友商事入社後アブダビ、ドバイ、北京、広州の駐在を経て、住友商事総合研究所で中国専任シニアアナリストとして活躍。2012年に住友商事を退職後、2013年からフリーランサーの中国研究者として中国鑑測家を名乗る。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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