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「一樹百獲」・・・「富国強兵」の総設計師

その3.山東省淄博市

  • 舩橋 晴雄

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2011年8月9日(火)

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■ 世界最古の実践的エコノミスト

 周が建国した時、その第一の功臣太公望呂尚が封ぜられたのが斉の国である。斉は現在の山東省東部。山東省西部には武王の弟の周公が封ぜられ、魯の国と称した。外様大名の抑えに譜代親藩を配するようなものである。

 斉の国は、「山と海に囲まれ、その間に肥沃な土地が千里と広がり、桑や麻を産し、魚や塩がとれる」(『史記』貨殖列伝)という豊かな国ではあったが、中原からみれば僻陬(へきすう)の地である。建国成った今、太公望といえども身近にいては危険であるという考えが武王にあったのかもしれない。

 この斉が周室の威権が衰えた春秋時代に、天下に覇を唱えることとなる。即ち、春秋五覇の筆頭、斉の桓公の時代(在位紀元前685~643)である。そして桓公の覇業を支え続けたのが名宰相管仲である。

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 「管鮑の交り」という成語となった鮑叔牙との交遊、そして桓公の宰相となるまでの波乱万丈の前半生は、多くの人々の詩想をかき立ててきた。最近の例でいえば、宮城谷昌光著『管仲』などがある。

 本稿では、むしろその後半生、管仲が宰相として斉を天下の強国に押し上げたその経済政策に焦点を当てて考えてみたい。というのも、一国の経済というものを、その全体像として捉え、それを何らかの政策(広義の経済政策)によって左右することを考え、かつその思想に基いて実践したという意味において、管仲こそ、世界最古の実践的エコノミストといってよいからである。

 さらにその経済思想が今日なお魅力的なのは、人間性に対する深い洞察と、常に国全体の利益を考える大局観を忘れていないからである。そこには、後代の儒学者によって金縛りにされたような人間観は見られない。

■ 「富国強兵」の根本

 管仲の経済思想の根本は、第1に、国を富ませるにはまず民を富ませること、第2に、そのためには民の求める所に合致した政治を行うことと要約することができるであろう。

 このことをまず管仲の書と伝える『管子』によって確認しておく。なお、現在の『管子』は漢の劉向によって編纂されたものとされ、全部で75篇が残っているが、このうち、牧民、形勢、権修、立政などのいわゆる経言9篇が管仲自身の作であると考えられている。いずれにしても春秋・戦国時代に、管仲の言行録が広範に読まれていたことは間違いない。

 『管子』の中で最も有名な言葉は、「倉廩(そうりん)みつればすなわち礼節を知り、衣食足ればすなわち栄辱(えいじょく)を知る」(牧民篇)ではないだろうか。

 倉が五穀で満たされていれば、国民は礼儀や節操を身につけるようになり、衣食が充足されれば、国民は栄誉や恥辱を弁えるようになるというのだ。

 これがすべての基本である。

 人間は動物と違って、弱肉強食のジャングルの掟によって生きている訳ではない。しかしながら、それはあくまで人として生きる最低限のもの、「衣食」が満たされて始めて可能なことであり、従って人間社会のリーダーたるもの(管仲の表現では「民を牧する者」)、それらを保障してこそリーダーたり得るのだというのである。

 ここで「衣食」は、経済的基礎といい換えることができるであろう。

 そして経済的基礎が充足されていれば、その国には遠方からでも人が集まり、豊かな土地から逃げ出す人はいなくなる。人口が増え、そして人々が礼節を持って活動すれば、国が豊かにならない筈がないではないか。

 管仲はまずこう考えるのである。

 では、第2の点、民の求める所に合致した政治。民の求める所とは何か。

 「政(まつりごと)の興る所は、民心に順(したが)うにあり。政の廃(すた)るる所は、民心に逆(さから)うにあり」(牧民篇)

 民の求める所とは、佚楽(いつらく)、富貴、存安、生育の四つで、これらを「四順」という。即ち、生きる楽しみであり、生活の豊かさであり、身の安全であり、子孫一族の繁栄である。これと反対に民の憎むところ、憂労、貧賎、危墜、滅絶を除き、「四順」を満たすことこそが、為政者の役割である。

 この「四順」の内容も、為政者はそれに従って政治をすべきだという主張も、現在のわれわれには違和感のない考え方であろう。

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浜田 健一郎 ANA総合研究所 シニアフェロー・前NHK 経営委員長