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国外逃亡者、平均6億円持ち逃げ

「実態研究リポート」は生々し過ぎてサイトから削除か

2011年7月1日(金)

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 中国の各メディアは2011年6月16日付で、中央銀行である“中国人民銀行”が『我が国の“腐敗分子”による国外への資産移転ルートおよび監視方法の研究』という報告書(以下「報告書」)を公表したと報じた。<注1>

<注1>中国語の“腐敗分子”を的確に表現する日本語は見当たらない。強いて言えば「悪徳分子」ということになるが、汚職や職権乱用、国有財産の横領などにより私腹を肥やしたり、巨額の公金を賭博に投じて国家に損害を与えるような輩(やから)を意味する。なお、本来は「腐化変質分子」を指し、革命を推進する中で思想や生活が堕落し、無産階級労働者と人民(民衆)としての本質を失った者を意味する。

慌てた中国人民銀行がサイトから削除?

 この報告書は、中国人民銀行直属の「アンチマネーロンダリング監視分析センター」の専門チームが腐敗分子の国外逃亡経路、人数、金額などの詳細を取りまとめて2008年6月に完成させたものである。だが、“内部資料、注意保存(注意して保管)”と判定されたために対外的に公表されないままになっていたものであるらしい。

 その“内部資料”扱いの報告書が6月14日に中国人民銀行の公式サイトに掲載されたのであった。これは中国人民銀行が起草した「支払い機構のアンチマネーロンダリングとアンチテロ資金管理弁法(案)」の法制化を後押しする目的であった可能性がある。ところが、報告書がサイトに掲載されるや、その内容が注目を集めて社会に波紋を巻き起こしたので、これに慌てた中国人民銀行は翌15日に当該報告書をサイトから削除したものと思われる。

 筆者が報告書の存在を知ったのは6月16日であり、その時点では報告書は既に中国人民銀行のサイトから削除されていた。そこで、めげずにネット検索を繰り返した結果、筆者は報告書の全文を入手することに成功した。報告書は中国人民銀行のサイトから削除されたが、報告書の公表そのものが取り消されたわけではなかった模様である。

家族や愛人が先行して住居

 さて、報告書は67ページ全5章で構成されており、興味の焦点である「国外逃亡した腐敗分子の実態」は第1章から第3章までに記載されている。その要点は次の通りである:

【1】中国“公安部”が2006年5月に発表したデータによれば、カネを持って国外逃亡し、逮捕された経済犯罪容疑者は320人前後で、直接、事件に関連した金額は700億元(約1兆円)近かった。公安機関およびその関係部門が把握している国外逃亡中の経済犯罪容疑者は約800人であるが、彼らがもたらした経済損失および国外に持ち出した金額は不明である。

【2】中国社会科学院の資料によれば、1990年代の半ば頃から2008年6月までに、海外逃亡した中国共産党および中国政府の幹部、公安や司法の幹部、国家事業組織や国有企業の高級管理職、中国資本の海外駐在組織からの逃亡者や失踪者は、合計1万6000人から1万8000人であり、その持ち出した金額の総計は8000億元(約12兆円)に達している。

【3】持ち出した金額が大きく、身分が高い腐敗分子の大多数は、米国、カナダ、オーストラリア、オランダなどの西側の先進国に逃亡している。直接に入国ビザが取れない一部の西側国家の場合は、まずアフリカやラテンアメリカ、東欧の小国に身を潜め、機会をうかがって入国する。逃亡者は香港を中継地として利用する。香港は世界の航空ハブであるし、香港人は英連邦諸国で到着後にビザの発給を受けることができるからだ。これに対して、金額が小さく、身分が低い腐敗分子の大多数は、タイ、ミャンマー、マレーシア、モンゴル、ロシアなどの周辺国へ逃亡している。

【4】資産の国外移転には大別して以下のような『8大ルート』がある:

  1. 現金を身体や荷物に隠す、運び屋に依頼するなどして違法に国外へ持ち出す
  2. “地下銭荘(闇金融)”を経由した違法な国外送金
  3. 架空取引などを通じた違法な国外送金、輸出入の差額を活用した資金の国外移転
  4. 実態のない海外投資を偽装した資産移転
  5. 海外でのクレジットカードによる商品購入やキャッシュカードによる現金引き出し
  6. オフショア金融センターを利用した資金の国外移転
  7. 国内企業が海外で買い付けを利用して、海外で直接に巨額の口銭を受領
  8. 国外にいる親類縁者や愛人などを通じた合法的な資産の持ち出しおよび国外送金

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「国外逃亡者、平均6億円持ち逃げ」の著者

北村 豊

北村 豊(きたむら・ゆたか)

中国鑑測家

住友商事入社後アブダビ、ドバイ、北京、広州の駐在を経て、住友商事総合研究所で中国専任シニアアナリストとして活躍。2012年に住友商事を退職後、2013年からフリーランサーの中国研究者として中国鑑測家を名乗る。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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