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10年後の中国は“赤い帝国”

マオイズムの下で社会改良は困難

2011年6月30日(木)

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 「向こう10年の中国政治においては、戸籍、医療、教育、格差、物価、福祉などに対する“社会改良”が最重要課題だと言える」
 「権力闘争に決着がつかない状況下で、社会改良は進まない」
 「権力闘争の背後にはイデオロギー闘争がある」
 「イデオロギー闘争を理解しないことには、なぜ社会改良が進まないのか理解できない」
 「10年以内に、中国は“赤い帝国”か“共和国”のどちらかの道に進むはずだ」

 前回のおさらいをしてみた。

 筆者は自らの思考を整理し、目の前に座っているW氏に質問をぶつけた。
 「W先生、それは『大躍進』や『文化大革命』のような極左主義が蔓延したまま、国際世論や普遍的価値観を全く無視した形で、中国が肥大化していくのか? それとも、自由と人権、民主主義、法治主義などグローバルスタンダードを重視した形で、国際社会の一員として国家建設を進めていくのか、という二者択一の問題ですか?」

中国における左派と右派の確執

 この問題の根本はそんなに複雑ではない。昨今の中国国内世論を俯瞰してみよう。

 「民主主義、法治主義、自由主義を唱え、西側諸国と歩調を合わせ、グローバルスタンダードを尊重しながら国家建設を進めていくべき」だと主張する「右派(リベラリスト)」がいる。最近、国内で当局によって拘束されたり、実刑を与えられたりしている。知識人では、ノーベル平和賞を獲得した劉暁波氏が、メディアでは《南方都市報》や《南方週末》が「右派」の代表格である。

 それに対抗するのが、「左派(ナショナリスト)」である。「“商業民族主義”で世論を煽り、中国を孤立させている」と右派が批判する《環球時報》や、『ノーといえる中国』の著者宋強氏などがその代表だ。

 左派の人間はこう主張する。「中国がなぜ欧米の言いなりにならなければいけないんだ。グーグルが出て行きたいのなら出て行けばよい。日本が中国の領土を侵略しようものなら武力行使すら辞さない。劉暁波などという国家転覆罪で牢屋に入った人間は国家の恥さらしだ。そんな人間に手を差し伸べるノーベル平和賞委員会は完全に政治化している。自らの価値観を中国に押し付けようとする遅れた連中だ」。

 W氏が述べているのは、この「左派」の保守的なナショナリストたちが極端に世論をリードし、中国を“赤い帝国”と化してしまうのか? それとも、「右派」のリベラリストたちが「左派」との戦いに勝利し、“真の共和国”へと導くのか、というテーマであろう。

 ちなみに、中国における「右」と「左」は日本や欧米とは逆である。筆者も中国に来てから初めて知って、はっとした。なぜ反対なのかは、いまだによく分からない。ただ、何はともあれ、中国世論に関する議論を進める際、上記における「左」と「右」の関係はきっちり押さえておく必要がある。

今日も続く毛沢東vs鄧小平

 W氏が説教するような口調で筆者に問題提起してきた。
 「加藤さん、“赤い帝国”か“真の共和国”、どちらに進むかは権力闘争の延長あるいは背後に潜むイデオロギー闘争の問題だと言ったよね。この議論をする際、メディアが注目する『左派』と『右派』間の争い、そこから形成される表面的な世論だけに注目していてはいけないよ。より大切なのは、人民解放軍を含めた共産党内部における“党内世論”なんだ」

 大きなコップでプーアール茶を口に運び、葉巻を吹かす。いつのまにか重慶の街は暗くなっていた。時計の針は21時を回っている。彼は念を押すように続けた。

コメント15件コメント/レビュー

今迄の筆者の記事と違い、ようやく現代中国が抱える問題の本質に触れる所まで来た様に思います。但し、他者の考えを紹介するのみで筆者の考察が無いのが残念です。 ◆来たるべき赤い帝国、太子党を中心に運営される帝国などは、目新しくはなく、党指導部から革命の第一世代がいなくなった今、極めて当然の帰結でしょう。中国では他者や社会に対して、してはいけない事があるとの自制を持たない人物が多くおり、それが共産党による寡頭制政治と相まって帝国化に突き進んでいると見えます。私腹を肥やす党官僚や乳幼児を犠牲とする粉ミルクで儲ける私企業家など、根っこは同じです。欧米ですと神への信仰、日本で言えばお天道様や人の道という様な自制は無いのです。党内に民衆(中国人民)の側に立つ政治家がおらず、国益と私益を維持する党官僚しか居ない今、王権神授説と同義の社会民主主義国家建設のイデオロギーは革命によってのみ打ち倒されると見るべきなのです。ソ連や東欧のイデオロギー国家が辿ったように。 (muff)(2011/07/01)

「加藤嘉一の「脱中国論」現代中国を読み解く56のテーゼ」のバックナンバー

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「10年後の中国は“赤い帝国”」の著者

加藤 嘉一

加藤 嘉一(かとう・よしかず)

国際コラムニスト

現在米ハーバード大学アジアセンターフェロー。世界経済フォーラムGlobal Shapers Community(GSC)メンバー。中国版ツイッター(新浪微博)のフォロワー数は150万以上。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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記事のレビュー・コメント

いただいたコメント

今迄の筆者の記事と違い、ようやく現代中国が抱える問題の本質に触れる所まで来た様に思います。但し、他者の考えを紹介するのみで筆者の考察が無いのが残念です。 ◆来たるべき赤い帝国、太子党を中心に運営される帝国などは、目新しくはなく、党指導部から革命の第一世代がいなくなった今、極めて当然の帰結でしょう。中国では他者や社会に対して、してはいけない事があるとの自制を持たない人物が多くおり、それが共産党による寡頭制政治と相まって帝国化に突き進んでいると見えます。私腹を肥やす党官僚や乳幼児を犠牲とする粉ミルクで儲ける私企業家など、根っこは同じです。欧米ですと神への信仰、日本で言えばお天道様や人の道という様な自制は無いのです。党内に民衆(中国人民)の側に立つ政治家がおらず、国益と私益を維持する党官僚しか居ない今、王権神授説と同義の社会民主主義国家建設のイデオロギーは革命によってのみ打ち倒されると見るべきなのです。ソ連や東欧のイデオロギー国家が辿ったように。 (muff)(2011/07/01)

今でも国民の監視状況からも対外的にも十分「赤い」帝国だと思いますが・・・元々共産党は社会改良を旗印に政権を奪取したはずですが、実現できたのが「下々の平等な貧しさ」だけでした。「戦術としてマオイズムに肩入れし、大衆を煽りながら」といっても本当に昔に戻りたい人はロシア同様、年金生活者くらいでしょう。大衆の不満もその内容からすれば党に向かうはずで、書かれているほど単純ではないと思います。何か混乱があればその時、日本にちょっかいを出すのは何方かのご指摘の通りかと。(2011/07/01)

会社にしても、国家にしても創業者のDNAが、環境変化によってその存在意義を失うまでは、その会社・国家の理念を支配する。毛沢東が秦帝国を意識して新中国を曲がりなりにも支配(実態はロックフェラー家の市場支配と言う経済的な理由による方針転換で、国民党からコントロールし易い共産党による一党独裁へ支援方針を変えた結果、共産党支配の中国と言われる支配権力構造が出来あがっただけ。民衆の支持などはなから存在していない)、本質は世界に覇権を唱える事に在る。中国は歴史的にアジアの覇者であったが、毛沢東以降は世界の覇者となる事を目指している。人民解放軍は国軍でなく、共産党の軍隊である為、中国民衆の考えとは異なり共産党の方針に沿い戦闘行為を行う。問題は既に文民統制が崩れ、軍が党の運営に大きな影響を与えている事で。歴史的に見れば、これはどの国でも起きており、中国のみ軍が暴走しないとは言えない。紛争が起きる事は留めがたく、日本政府もこの見通しで国家運営を進めて頂きたい。(2011/07/01)

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