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“簡体字禁止令”に見る台湾のジレンマ

選挙向けパフォーマンスか、併呑への危機感か

2011年7月4日(月)

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 周知のとおり、同じ中国語でも台湾と大陸が使っている文字は違う。台湾は伝統的な漢字、いわゆる「繁体字」を使っており、これは比較的日本人にも馴染みやすいものだろう。一方、大陸では「簡体字」を使用している。こちらは文字どおり、繁体字を簡略化したバージョンである。

 簡体字の歴史を話せば長くなるが、かいつまんで言うとこうなる。1949年10月1日、中華人民共和国の建国を契機に簡体字使用の動きが本格化し、1955年1月に「漢字簡略化草案」が発表されて、翌年1月1日には簡体字版の新聞が誕生した。漢字簡略化はその後も進められ、現在は1986年に発表された「簡体字総表」による文字が使用されている。

 ちなみに、台湾では自分たちが使う文字を「繁体字」という一般的な言葉で表現するが、馬英九総統をはじめとする政府関係者はあえてそれを「正体字」と言っている。そこには台湾が使っている漢字こそ正統なものだという意地が表れているようだ。

違法添加物、台湾の食品安全神話が崩壊

 筆者は漢字の専門家ではないし、ここから漢字の話を展開するつもりはない。この話を取り上げたのは、ほかでもない、6月中旬に講演会の講師に招かれて台北を訪れたことがきっかけとなっている。

 筆者はこれまで出張などで台湾に10回以上訪れたことがある。今回は2泊3日という短い滞在であったのだが、テレビや新聞、友人、タクシーの運転手などの情報源に接し、目下、台北で最もホットな話題となっているのが「可塑剤」であることを知った。

 可塑剤はもともと靴やホースなどの柔軟剤として使用される工業用原料である。しかし、一部の不法メーカーが、コストを削減するため、その可塑剤をパームオイルの代替品として食品やスポーツドリンクなどの原料に使ってしまったのだ。これにより甚大な健康被害が起きる可能性があることは言うまでもない。

 今年4月に台湾の衛生部門が食品の安全検査を行った際、偶然、可塑剤を検出した。これが発端となって大騒ぎとなり、ニュースは台湾だけでなく、香港や大陸にも激震となって駆け巡った。

 食品安全問題が日常茶飯事の中国大陸ならまだしも、事件の舞台は台湾である。関連食品や飲料が次々と商品の陳列棚から撤去される光景は台湾の人々にとって実に衝撃的だった。なぜなら台湾の食品メーカーなら信頼できるという神話がこのとき崩壊してしまったからである。

 タクシーの運転手も苦笑いをしながら言っていた。「可塑剤は30年前から既に使われていたそうですよ。そんなことを今さら言われてもねぇ。この30年の間、何もなかったけれども、急に体のあちこちがおかしい気がしてきました」。

政府のホームページから簡体字を削除

 閑話休題。今回のテーマは「繁体字」と「簡体字」である。2008年5月、国民党が8年ぶりに民進党から政権を奪回して以降、台湾では大陸とのヒト・モノ・カネ・情報の交流が一段と活発化した。それとともに、ビジネスチャンスを拡大するため、ホームページで簡体字バージョンを提供する企業なども急増している。

 一応、中国の大学を出ている筆者は、おおよそ繁体字も識別できるのだが、書くとなると自信がない。例えば、『台湾』を繁体字で書けと言われても、全く歯が立たないのだ。そうした大陸の人々に向けての台湾の簡体字による発信は、日本や欧米企業などでも広がっている。そう考えれば、純粋にクライアント・サービスの一環ということになるだろう。

 しかし、馬英九総統はこれを牽制した。政府のホームページから簡体字バージョンを削除するよう命じ、同時に、企業にも同様の措置を講じるよう要請したのだ。ちなみに、大陸では、2000年に発令となった「語言文字法」で繁体字の使用を禁止しており、看板などで繁体字を使用した場合は罰金を科している。無論、ホームページは簡体字一色である。

 では、なぜ馬英九総統は藪から棒にこうした発言をしたのだろうか。

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肖 敏捷

肖 敏捷(しょう・びんしょう)

エコノミスト

フリーのエコノミストとして原稿執筆や講演会などの活動をしている。テレビ東京の「モーニング・サテライト」のコメンテーターを担当中。2010年の日経ヴェリタス人気エコノミスト・ランキング5位。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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