• BPnet
  • ビジネス
  • IT
  • テクノロジー
  • 医療
  • 建設・不動産
  • TRENDY
  • WOMAN
  • ショッピング
  • 転職
  • ナショジオ
  • 日経電子版

“簡体字禁止令”に見る台湾のジレンマ

選挙向けパフォーマンスか、併呑への危機感か

2011年7月4日(月)

  • TalknoteTalknote
  • チャットワークチャットワーク
  • Facebook messengerFacebook messenger
  • PocketPocket
  • YammerYammer

※ 灰色文字になっているものは会員限定機能となります

無料会員登録

close

 これは、台湾の繁体字と大陸の簡体字のどちらが正統なのかという単純な「文字戦争」の話ではない。台湾は来年、総統選挙を控えている。常々、野党の民進党から「親中派」だと攻撃されている馬英九総統だけに、この発言は「批判をかわすためのパフォーマンスにすぎない」として概ね冷ややかに受け止められている。

 しかし、その深層には、台湾のジレンマも透けて見える。経済面で大陸への依存度が強まっており、その影響力が経済以外の分野へも拡散しつつある。その流れをどうせき止めるかが台湾にとって重大な関心事になってきたのだ。

60年の歴史の中で最も良好な関係

 馬英九総統は、「台湾の独立」を主張していた民進党とは対照的に、中台関係については「統一せず、独立せず」という現状維持の方針を掲げている。これに応えて大陸側は、「独立さえ主張しなければ、何でも交渉に応じる」と、馬英九総統の対中姿勢を手放しで歓迎した。このことで中台関係は飛躍的に改善し、事実上、分裂状態が続いている大陸と台湾は、60年の歴史の中で今、最も良好な関係にある。

 最大の成果は、かねてから中台間の懸案事項だった直行便が実現したことである。それまで、台湾から大陸へ飛ぶには香港を経由しなければならなかったが、現在、台湾と大陸を結ぶフライト数は1週間で合計558便に達している。これに伴って、台湾を訪れる大陸からの観光客も急増し、2011年6月28日からは、北京、上海、アモイの3都市を対象に、1日500人を限度として個人による台湾訪問も解禁されている。

 また、ヒトだけでなく、カネの流れも活発になっている。

 2008年6月30日から台湾で人民元の両替業務が始まり、台湾住民は地元の金融機関で1日最高2万人民元まで両替できるようになった。2009年11月16日には、銀行、証券、保険業の交流を促進するため、中台間で金融サービスの監督、情報交換に関する覚書(MOU)も調印された。この覚書が正式に発効した2010年1月15日、大陸の金融当局は、5億ドルの台湾株式市場への投資枠(QDII)を認可した。

 さらに2010年6月、大陸と台湾との自由貿易協定に相当するECFA(両岸経済協力枠組協定)も調印されて、台湾海峡をまたいだヒト・モノ・カネの双方向の流れに一段と弾みがついた。魚心に水心か、馬英九総統は、最新鋭の半導体工場を除き、台湾企業による大陸への投資規制を大幅に緩和した。

景気が悪化すると訪問団がやってくる

 しかし、前述のように、経済面で大陸への依存度が強まれば強まるほど、台湾では「いずれ大陸に飲み込まれてしまうのではないか」という不安と警戒感が募ってくる。というのも、中台間の経済交流は、台湾側では民間主導であるのに対し、大陸側では常に政治的な意図が先行するからである。

 こんな話がある。台湾の景気が悪化すると、株価の下落や失業率の上昇に対する人々の不満が高まり、馬英九総統の支持率は下がる。すると、大陸は地方政府などの訪問団を次々と台湾に送り込み、台湾製品を大量に買い付けたり、台湾への大型投資を決めたりする。つまり、馬英九総統を大陸が暗に支えているということである。

 台湾の知人によると、そういう時、あまりにも大規模な訪問団が来るので、台湾政府の関係者は1日3回もランチを取るほど、歓迎会のはしごをするのだそうだ。私が出席した講演会では、ある有名な台湾の経済評論家が「馬総統の支持率は低ければ低いほどいい。なぜかと言うと、大陸からもっと力強い支援が得られるからだ」とあからさまな発言をしていた。

 しかし、大陸によるこれまでのあまりにも露骨な分断工作を考えれば、台湾も「第2の香港」になるのではないかという危惧が高まるのは極めて自然なことであろう。それゆえ、馬英九総統は「親中派」というレッテルを返上するため、簡体字禁止という奇策に出たと考えられる。

コメント4

「肖敏捷の中国観~複眼で斬る最新ニュース」のバックナンバー

一覧

「“簡体字禁止令”に見る台湾のジレンマ」の著者

肖 敏捷

肖 敏捷(しょう・びんしょう)

エコノミスト

フリーのエコノミストとして原稿執筆や講演会などの活動をしている。テレビ東京の「モーニング・サテライト」のコメンテーターを担当中。2010年の日経ヴェリタス人気エコノミスト・ランキング5位。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

日経ビジネスオンラインのトップページへ

記事のレビュー・コメント投稿機能は会員の方のみご利用いただけます

レビューを投稿する

この記事は参考になりましたか?
この記事をお薦めしますか?
読者レビューを見る

コメントを書く

ビジネストレンド

ビジネストレンド一覧

閉じる

いいねして最新記事をチェック

閉じる

日経ビジネスオンライン

広告をスキップ

名言~日経ビジネス語録

全体の2~3割の人でも理解し、動き出してくれれば、会社は急速に変わります。

中村 克己 元ルノー副社長、前カルソニックカンセイ会長