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「脱原子力のためなら電気代は高くなってもいい」と言うドイツ人

政府が2022年原発廃止を決定した背景

2011年7月8日(金)

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 前回このコラムを書いてからの1カ月間に、ヨーロッパでは世界の経済史やエネルギーの歴史に残るであろう様々な出来事が起きた。その中でもドイツのメルケル政権が、遅くとも2022年の末までに原子力を完全に廃止すると決めたことは、日本でも大きく報道された。6月6日に行なわれたこの決定で、ドイツは主要工業国として初めて、福島第一原発の事故を契機にエネルギー政策を大きく転換するための重要な一歩を踏み出したのである。彼らはこの変化を「エネルギー革命(Energiewende=エネルギー・ヴェンデ)」と呼ぶ。「Wende」というドイツ語は、変化や変わり目を意味するが、日常会話の中では1989年のベルリンの壁崩壊から、翌年の東西ドイツ統一を指す言葉としてよく使われる。ドイツ人たちは、原子力廃止と再生可能エネルギーの拡大が、ベルリンの壁崩壊並みの大変化になるという意味合いを込めているのだ。

 ドイツ連邦議会は、この国のエネルギーシステムを大幅に改革するための8つの法案を、6月30日に圧倒的多数で可決した。このうち原子力法の 改正案など7件については、州政府の代表が構成する連邦参議院での票決は必要なく、連邦議会だけの可決で成立。さらに7月8日には、建物のリフォームと省エネを促進する法律が連邦参議院で可決される予定だ。これで8つの法案が全て成立する。

 福島の事故からわずか4カ月。メルケル政権は猛スピードで「エネルギー革命」の法的基盤を打ち立てた。

 私は最近日本に滞在して6回講演を行なったが、ドイツの脱原子力政策と再生可能エネルギーの拡大に関する講演への反響が一番大きかった。6月7日には、TBSの依頼でラジオの生番組に出演し、1時間半にわたりドイツの原子力発電廃止と自然エネルギー拡大の背景について解説した。福島の原発事故をきっかけに、日本人の間でドイツのエネルギー政策についての関心が大きく高まっていることを感じた。福島事故の終息へ向けた具体的な出口が見えない中、国民の間で「エネルギー政策を何とかしなくてはいけない」という気持ちが強まっているのだろう。

「締切日」を確定して市民にアピール

 さて前回お伝えしたように、メルケル首相は福島事故の直後に3カ月にわたる「原子力モラトリアム(猶予期間)」を発令し、1980年末までに運転を開始した、ドイツで最も古い7基の原子炉を停止させた。それまで原子力擁護派だったメルケル氏は、「福島の事故を見て原子力のリスクについての見方を変えた」と語っている。

 この他に2007年以来変圧器の火災などのトラブルを繰り返したクリュンメル原発が、2009年から停止したままになっていた。メルケル政権は、これら8基の原発を再稼動せず廃炉にすることを決定。残りの9基の原発についても、次の表に示すようなスケジュールで徐々に停止することを決めた。

ドイツ原子炉の廃止スケジュール

福島事故後の原子力モラトリアムで、2011年3月に止められた原子炉(7基)
原子炉 運転開始 処分
ビブリスA号機 1975年 運転再開せず廃炉
ビブリスB号機 1977年 運転再開せず廃炉
イザー1号機 1979年 運転再開せず廃炉
ブルンスビュッテル 1977年 運転再開せず廃炉
ネッカーヴェストハイム1号機 1976年 運転再開せず廃炉
フィリップスブルク1号機 1980年 運転再開せず廃炉
ウンターヴェーザー 1979年 運転再開せず廃炉
2007年以降トラブルで止まっていた原子炉(1基)
クリュンメル 1984年 運転再開せず廃炉
現在運転中の原子炉(9基)
原子炉 運転開始 運転停止年
グラーフェンラインフェルト 1982年 2015年
グントレミンゲンB号機 1984年 2017年
フィリップスブルグ2号機 1985年 2019年
グローンデ 1985年 2021年
グントレミンゲンC号機 1985年 2021年
ブロクドルフ 1986年 2021年
イザー2号機 1988年 2022年
エムスラント 1988年 2022年
ネッカーヴェストハイム2号機 1989年 2022年

コメント26件コメント/レビュー

脱原発を批判する論者はそのデメリットを指摘するが、いずれも視野が狭く、原発維持のデメリットと比較することもあまりしていない様に思う。安全保障の面では、ウランもその他の資源同様輸入している。その上、攻撃目標にされた場合のダメージが甚大な点をどう考えるのか。何より問題なのは放射性廃棄物で、地層処分(単に深く埋めるだけだが)したものを非常に長期間管理しなければならない。それこそ子孫に莫大なコスト負担を強いることになる。また、電力需要ピークが偏っており、それに対する対応が問題になっているのに、年間の稼働率を云々してミスリードする論が多いことにも閉口する。地震や災害、放射性物質の特性など、人類の知恵ではどうにもならないことを、さもコントロールできるかの様に言う方が非科学的と思うが。(2011/07/14)

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「「脱原子力のためなら電気代は高くなってもいい」と言うドイツ人」の著者

熊谷 徹

熊谷 徹(くまがい・とおる)

在独ジャーナリスト

NHKワシントン特派員などを務めた後、90年からドイツを拠点に過去との対決、統一後のドイツの変化、欧州の政治・経済統合、安全保障問題、エネルギー・環境問題を中心に取材、執筆を続けている。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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記事のレビュー・コメント

いただいたコメント

脱原発を批判する論者はそのデメリットを指摘するが、いずれも視野が狭く、原発維持のデメリットと比較することもあまりしていない様に思う。安全保障の面では、ウランもその他の資源同様輸入している。その上、攻撃目標にされた場合のダメージが甚大な点をどう考えるのか。何より問題なのは放射性廃棄物で、地層処分(単に深く埋めるだけだが)したものを非常に長期間管理しなければならない。それこそ子孫に莫大なコスト負担を強いることになる。また、電力需要ピークが偏っており、それに対する対応が問題になっているのに、年間の稼働率を云々してミスリードする論が多いことにも閉口する。地震や災害、放射性物質の特性など、人類の知恵ではどうにもならないことを、さもコントロールできるかの様に言う方が非科学的と思うが。(2011/07/14)

「ドイツ国内の脱原子力のためなら電気料金の値上げは覚悟する、ただし、ドイツ国外で原子力発電で安い料金で作られた電気は自由に輸入してよい」というのでは、他国にリスクを負わせることを制度化しているだけではないでしょうか?身近なところから(嫌な)原発はなくなって欲しいというドイツの国民エゴに迎合しているだけの政策に思えるのですが、、、。(2011/07/14)

日経の読者もマスコミの情報に洗脳されている人が多いように思われます。世の中の脱原発の流れはもう止められない。問題は、いかにソフトランディングするかの過程をどうするかである。化石燃料による発電は、ピーク時の調整に使うだけになる日がそう遠くないと予想する。大規模な発電から小規模な発電を多数設けて、発電も地産地消になっていくと思われる。(2011/07/14)

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