• BPnet
  • ビジネス
  • IT
  • テクノロジー
  • 医療
  • 建設・不動産
  • TRENDY
  • WOMAN
  • ショッピング
  • 転職
  • ナショジオ
  • 日経電子版

暴漢が開き直り「おれの親父が法律だ」

今度は副県長一家が刺傷事件、公安が事件隠蔽に荷担か

2011年7月8日(金)

  • TalknoteTalknote
  • チャットワークチャットワーク
  • Facebook messengerFacebook messenger
  • PocketPocket
  • YammerYammer

※ 灰色文字になっているものは会員限定機能となります

無料会員登録

close

 2011年6月、中国のあるネット掲示板に「山西省永和県の副県長“馮双貴”の親族4人が夜間に民家へ押し入り、主人に暴行した末に刃物で刺して重傷を負わせた」という内容の文章が書き込まれた。

 その書き込みによれば、馮双貴の次男で、暴行に参加した“馮源”は、被害者から「国法というものはないのか。他人の家に勝手に侵入して暴行を働くとは何ごとだ」と詰問されると、すかさず「俺の親父は県長だ。永和県では俺の親父が国法だ」と応えたという。その横暴極まりない態度がネットユーザ-の反感を買い、当該書き込みは多数のネット掲示板に転載され、大きな反響を巻き起こしたのだった。

爆竹を鳴らした邪気ばらいがきっかけ

 事件は5月10日午後1時半頃に永和県で発生した交通事故に起因する。この交通事故はガソリンスタンドの出口で発生したもので、馮双貴のしゅうとめ(妻の母親)がクルマにはねられて死亡した。同日の18時頃、このガソリンスタンドの改造工事で取り壊し作業を請け負っていた“柳文”が、地元の風習に従って、事故現場で爆竹を鳴らして邪気ばらいをしたが、これが馮双貴一族の不満を募らせた。柳文は「二度と同じような事故が起きないように」と縁起を担いだのだが、馮双貴一族はこれを誤解して、しゅうとめの急死で残された家族が悲しみに暮れている時に、わざわざ爆竹を鳴らして邪気を追い払うとは、「ざまみろ、いい気味だ」と思っているのに違いないと考えたのだった。

 しゅうとめの遺体を墓地に埋葬してから2日後の5月17日の夜10時頃、白い喪服に身を包んだ、馮双貴の妻の“康燕”、次男の馮源、義弟(妻の弟)の“康龍”、義妹(妻の妹)の“康麗”の4人が清めの酒、線香と紙銭<注1>を持って柳文の家を訪れた。4人は柳文の家の門前で線香と紙銭を燃やし、大声で柳文に対する悪口雑言の限りを尽くし、それから殴り込みをかけた。家に侵入すると、康龍は持参した刃物で柳文の左太股を刺して重傷を負わせた上に殴る蹴るの暴行を加えた。また、康麗は柳文の頭髪をつかんでその耳に悪態をつき、康燕は柳文を拳で2発殴り、馮源は柳文の頭部と顔面に蹴りを入れた上に拳で殴った。

<注1>中国で死者を弔うために燃やす紙製のお金

 それでも飽き足らぬ彼らは、液晶テレビ2台、コンピューターのモニター、家具などを手当たり次第に破壊し、乱暴の限りを尽くしてから悠然と引き揚げたのだった。この殴り込みの最中に柳文が「国法というものはないのか」と彼らの不法を質したのに対して、馮源が発したのが「俺の親父は県長だ。永和県では俺の親父が国法だ。明日また来てお前をやっつけてやる。お前はどう思う」という言葉だった。

 柳文の傷は目と左太股が深刻で、特に左太股の傷は深く、永和県での治療は不可能と判断されて隣接する臨汾市へ搬送された。だが、途中で出血多量による出血性ショックで一時は人事不省に陥ったほどであった。

土下座をして事件調査開始を要請

 山西省永和県は省都・太原市から南西に約220キロメートルに位置する、陝西省との省境に近い農村であり、行政的には臨汾市の管轄下にある。永和県は全国に約600カ所ある“国家級貧困県(国家認定の貧困県)”の1つで、経済は立ち遅れ、住民の生活は困窮の中にある。山西省内で最も立地条件が悪く、人口も最少<注2>、経済力も最小、財政収入も最低というのが永和県の実情である。馮双貴はその貧困県の副県長であり、その家族や親戚が地元住民に対して優越感を持っていた。意に沿わぬことがあれば、馮双貴の副県長としての権威を笠に着て、黒を白として横車を押すことが常態化していたことは想像に難くない。彼らには、住民のほとんどがカネも名誉も何もない虫けら同然の存在に思えていたのだろう。

<注2>2010年11月に実施された第6回国勢調査の結果では、永和県の人口は6.4万人。この85%程度を農業人口が占める。

 上述の書き込みによれば、馮双貴は永和県の政治と法律を管轄していたことから、地元の公安局はこの事件の届けを受理しようとはしなかったという。このため、柳文の妻子が永和県の主要な指導者を訪ねては土下座して懇請を繰り返した。その結果、公安局はようやく重い腰を上げてしぶしぶ事件の調査に動き出したのだった。

コメント4

「世界鑑測 北村豊の「中国・キタムラリポート」」のバックナンバー

一覧

「暴漢が開き直り「おれの親父が法律だ」」の著者

北村 豊

北村 豊(きたむら・ゆたか)

中国鑑測家

住友商事入社後アブダビ、ドバイ、北京、広州の駐在を経て、住友商事総合研究所で中国専任シニアアナリストとして活躍。2012年に住友商事を退職後、2013年からフリーランサーの中国研究者として中国鑑測家を名乗る。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

日経ビジネスオンラインのトップページへ

記事のレビュー・コメント投稿機能は会員の方のみご利用いただけます

レビューを投稿する

この記事は参考になりましたか?
この記事をお薦めしますか?
読者レビューを見る

コメントを書く

ビジネストレンド

ビジネストレンド一覧

閉じる

いいねして最新記事をチェック

日経ビジネスオンライン

広告をスキップ

名言~日経ビジネス語録

トップの身の丈が組織の限界を作る。

多田 荘一郎 GEヘルスケア・ジャパン社長兼CEO