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胡錦濤による中国共産党建党90周年談話を“読む”

「社会の安定なしには何も始まらない」

2011年7月7日(木)

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 7月1日午前4時半、筆者はいつものように北京の街へと走り出した。ランニングをしながら、市民たちの素顔に迫る。生活の吐息を感じながら、実際に会話をしながら、草の根レベルで国情に迫る。筆者なりのチャイナ・ウォッチの方法である。

 いつもと同じだ。
 北京は静かな朝を迎えていた。

 だが、政治にとってはいつもと同じ朝ではなかった。中国共産党成立90周年に当たるこの日、政治家たちは天安門に向かって左側に位置する人民大会堂に集結する。ただし、北京市民にとって、気になるのは交通渋滞だけだ。中国共産党の祝賀イベントに際して、各地で交通規制が設けられるからだ。

 午前5時過ぎ、筆者が息を切らせながら天安門広場を通過すると、そこには“いつも”の光景があった。武装警察たちが警備に当たっている。辺りを散歩する老夫婦が何組かいた。天安門の入り口には、毛沢東の写真が高々と掲げられている。

 ここが世界政治の中心なのか。

 この日、胡錦濤国家主席が人民大会堂にて「建党90周年」を祝う『重要談話』を発表した。以前本コラムでも紹介させていただいたが、『重要談話』は、共産党のトップリーダーが思想や国策を公式に提唱するもの。注意深くウォッチする必要がある。様々な出来事の節目において、トップリーダーが何を考え、訴えたがっているのか? 『重要談話』のポイントを抑え、それらが何を意味するのかを解読することは、私たちの中国理解を一層深めてくれる。

前半は優等生的な表現が続いた

 胡錦濤談話の前半部分は、ほぼ一環して社交辞令というか、“政治”辞令的な表現が続いた。中国共産党が成立した時のイデオロギーを堅持し、“歴史に忠実”でないと、この国のリーダーは務まらない。自分がどう思っているかなど関係ないのだ。繰り返すが、大切なのは“歴史とイデオロギーに忠実”であることだ。「発展」や「成長」はその次の段階でしか語ることができない。仮に、歴史より発展、イデオロギーより成長が本音であったとしても、である。

 「中国共産党の誕生は中国近現代史の発展における必然的な産物であり、中国人民が生きるか死ぬかの闘争の中で勝ち取ったものだ。誕生後、中国革命には正しい前進の方向が見つかった。中国人民は強大な精神的支柱を得た。中国の運命には明るい未来が見つかった」

 「90年という月日を経て、中国共産党は3つの大きな事を成し遂げた。一つは、新民主主義革命を達成し、民族の独立、人民の解放を実現したこと。二つ目に、社会主義革命を達成し、社会主義の基本的な制度を確立したこと。三つ目は、改革開放という新しい偉大なる革命を遂行し、中国の特色のある社会主義を創造、堅持、発展させたことである。この3大事が中国人民と中華民族の未来と運命を変えた。近現代における屈辱的で悲惨な時代から抜け出し、偉大なる復興のプロセスへと足を踏み入れたのだ」

 「近現代に入り、中国社会が発展を遂げるに際し、歴史と人民が中国共産党を選んだのだ。マルクス主義を、社会主義の道を、改革開放を選んだのだ」

 前半部分はこのようなフレーズが続いた。

 アヘン戦争、日中戦争を含めた屈辱の歴史を乗り越え、マルクス・レーニン主義の影響を深く受ける形で中国共産党が誕生した。それは後に毛沢東思想、鄧小平理論、3つの代表論、科学的発展観へと受け継がれた。イデオロギーの表面は一貫していても、中身は変わってきた。鄧小平が市場経済を導入した。江沢民が資本家の入党を認めた。

 「発展」の段階で、格差や腐敗が広がり、巨大な既得権益層が生まれた。
 社会の不公正、機会の不平等は、昨今の中国社会における歴史的、政治的、制度的、構造的問題である。胡錦濤はその点を明確に理解し、あらゆる場面で指摘してきた。その精神は、次期リーダーにも受け継がれることであろう。

 もちろん、簡単に解決できる問題ではない。今日の中国共産党は、同党誕生当初から続くイデオロギーの影響を深く残しつつ、社会主義市場経済という前代未聞の経済体制をガバナンスしていかざるを得ないのだから。

 時間が必要だ。答は歴史によってしかもたらされない。

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「加藤嘉一の「脱中国論」現代中国を読み解く56のテーゼ」のバックナンバー

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「胡錦濤による中国共産党建党90周年談話を“読む”」の著者

加藤 嘉一

加藤 嘉一(かとう・よしかず)

国際コラムニスト

現在米ハーバード大学アジアセンターフェロー。世界経済フォーラムGlobal Shapers Community(GSC)メンバー。中国版ツイッター(新浪微博)のフォロワー数は150万以上。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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