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なぜ韓国に「ソーシャルテイナー」が生まれたのか?

芸能人が社会問題に取り組み、世の中を変える

2011年7月13日(水)

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 韓国ではこの頃「ソーシャルテイナー」という言葉をよく耳にする。「Society」と「Entertainer」を合わせた造語だ。社会や政治の問題に対する自分の意見を、ソーシャルネットワークサイトで積極的につぶやく芸能人のことをいう。市民運動や集会にも参加する。

 芸能人が貧しい人のために寄付をしたり、政治家になったりすることは、何十年も前からあった。ところが最近のソーシャルテイナーはちょっと違う。政治家になるわけではない。政党に加入したり市民団体に所属したりすることもない。自分の目線から見て社会の不条理なことや、これは納得いかないということに対して、Twitterとブログを利用して積極的に意見を言う。自分のファンはもちろん、一般の人にも広く自分の意見を聞いてもらおうと現場に飛び込むこともある。

 ソーシャルテイナーと言われる芸能人は「概念のある芸能人」とも呼ばれ、DaumやNateなどポータルサイトの掲示板で称賛されている。韓国で「概念がある」という言葉は、誠実で裏表がない、倫理的でマナーを守る、道理を守るといった意味で使われている。

 彼らは、いろんな分野で「こんなこともあるんだよ」とファンに訴えている。労働組合と財閥企業が解雇を巡って対峙している現場に出かけて労働者を応援する。警察が実力行使して、労働組合員を逮捕しようとするところをTwitterでレポートする。学費が高すぎて、大学に入学すると同時に借金を背負うことになる学生の生活を改善するため、国会の前で一人パネルを持って抗議する。飼い主が気まぐれで捨てたペットを助けようと救助活動に参加する。東日本大震災で被災した朝鮮学校の子供たちを支援しようと呼びかける。

 日本でも似たような活動が見られる。ミュージシャンが、反原発の歌「ずっとウソだった」をYouTubeに投稿して話題になったことがある。このような活動をする人も、韓国ではソーシャルテイナーの一人と言える。

大学と掃除労働者の対立を世に広める

 日本のテレビを見ると、国の政策を辛口に批判する芸能人をよくみかける。しかしそのような人にソーシャルテイナーという修飾語をつけたりはしない。なぜ韓国ではソーシャルテイナーというカテゴリーができたのだろうか。

 The daily(2011年1月17日)、ハンギョレ新聞(2011年1月14日)、キョンヒャン新聞(2011年4月11日)などの報道によると、ソウルにあるホンイク大学で、以下の事件が起きた。同大学が2011年1月1日、170人余りの掃除労働者を解雇したのだ。彼らは1日10~12時間働き、月給約75万ウォン(約6万円)をもらっていた。法律上の最低賃金100万ウォン(約8万円)への賃上げと、休憩時間の確保を要求したところ、彼らが所属している掃除会社は学校と契約を更新することができなかった。ホンイク大学は、円満な解決のため努力しているという告示をホームページに掲載したが、交渉は4月まで続いた。

 それでも解決のめどは立たず、掃除労働者らはホンイク大学の前で集会を始めた。韓国では、賃金や雇用をめぐる集会は珍しくない。街角でよく見かけるものなので、よほどのことがない限りニュースになることはない。筆者も、掃除労働者の問題をみかけても、「お年寄りが苦労している」「かわいそう」というぐらいでそれほど関心を持たなかった。

 しかし芸能人が集会に参加するとなると、マスコミが取材に来る。この問題は女優のキム・ヨジンさん(http://twitter.com/#!/yohjini)をはじめとするソーシャルテイナーがTwitterでつぶやき、集会へ駆けつけたことから、マスコミが紹介し、一般市民にも広く知られるようになった。

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「なぜ韓国に「ソーシャルテイナー」が生まれたのか?」の著者

趙 章恩

趙 章恩(ちょう・ちゃんうん)

ITジャーナリスト

研究者、ジャーナリスト。小学校~高校まで東京で育つ。ソウルの梨花女子大学卒業。東京大学学際情報学府博士課程に在学。日経新聞「ネット時評」、日経パソコン「Korea on the web」などを連載。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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