「ODA削減でいいのか日本」

美しく、そして空しき時を刻む日本

あって当然、対外援助の「表の顔」「裏の顔」

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2011年7月19日(火)

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 最終回は政府開発援助(ODA)の本質と言うか、ODAの「表の顔」に隠された「裏の顔」と言うか、本音の部分に焦点を当ててみた。それは公には誰も議論したがらない領域である。

対外援助の本音と思惑

 さて、ここに1枚の「対外援助の国際比較」表がある。

 興味を引くのは比較項目。この比較表はある研究所が考案したものである。その狙いは米国、英国、ドイツ、日本などの援助国が、対外援助を通してどのような国益を追求しているかを知ろうとしたものだ。比較する項目は「政策」、「直接的国益」、「国家イメージ」などである。

 最初の「政策」項目には、貧困削減、良い統治、紛争解決支援といった国連での政策テーマが羅列されているだけで、一見していかにも「表の顔」。建前の世界という印象だ。

 しかし、「直接的国益」の項目には、各国の短期的、長期的な思惑が鮮明に描き出されていて、対外援助の本音が聞こえてくるようである。

 そして「国家イメージ」に至っては、本音を含むその国のありようが国際社会に反映されたものと言える。

 これまで日本政府や政府援助機関は、国連などの国際社会で議論される援助理念を拝借して、いかにもそれが日本の援助理念のように国民に開示してきた。これでは日本としての本音の政策が見えてこない。日本は対外援助を通して、日本独自のどういう国家の目的を達成させるつもりなのか。それをきちんと国民に伝達してきたとは言い難い。

 「ODAは国家の目的でなく、外交の手段だ」と言われる。だが、その真の目的がはっきりしないまま手段ばかりが目につき、目的喪失のような状態で援助が実施されがちなのが日本の現状だ。これが我が国ODAの最大の問題点であると言われている。

 それでは具体的に、米国、英国、ドイツ、そして日本の対外援助による国益や「国家イメージ」を解説してみたい。

民主化を求める世界の帝王

◆米国

 米国の対外援助に対する基本的な考え方は明快だ。一言で言えば「米国に脅威を与えるものを排除するための手段」として対外援助が存在している。

 その脅威が危険度を増すと、時に軍事介入になるが、そこまで至らずに対外援助の範囲でとどまっているものを「軍事援助」と位置づけることができる。

 当面の最大の脅威はテロ行為で、そのほかでは麻薬、エイズなどが対象になる。2001年にニューヨークを襲った9・11事件後、テロ対策の対外援助が米国最大の関心事となった。「貧困はテロの温床」とも言われる。だから米国は、その「テロ」の1文字に引き込まれて、国連の「貧困削減」という開発目標にも深くコミットしている。

 また、麻薬も米国にとって大きな社会問題であり、その撲滅活動も対外援助の対象である。

 周知のように、大量の麻薬は消費地の米国に向けてメキシコ、カリブ経由で中南米から密輸入される。米国務省の援助白書や研究レポートでは、必ず「地政学に基づく援助戦略」が強調され、中南米の麻薬供給地における麻薬撲滅のための対外援助計画が立案される。その結果は「まあまあ」というレベルだろう。麻薬代替の農業、農村開発援助が実施されている。

 かつて冷戦時代は中南米の共産主義的な国が、「地政学に基づく援助戦略」の対象になっていた。その残滓(ざんし)が今も続いているのが、キューバの封鎖政策である。

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著者プロフィール

荒木 光弥(あらき・みつや)

1967年「国際開発ジャーナル」創刊に参加し、40年以上にわたり代表取締役兼編集長を務める。2003年10月より現職。外務省「国際協力に関する有識者会議」委員、経済産業省「産業構造審議会経済協力小委員会」委員、文部科学省「国際教育協力懇談会」委員などを歴任。主な著書に『途上国援助 歴史の証言−1970年代80年代90年代』(国際開発ジャーナル社)などがある



このコラムについて

ODA削減でいいのか日本

政府は東日本大震災の復興予算を捻出するため、2011年度第1次補正予算で政府開発援助(ODA)経費を501億円削減する。先進国が開発途上国に対して果たすべき役割を自ら一部放棄した格好だ。国際舞台で影が薄くなりつつある日本のプレゼンスが一層低下することは必至。大震災に際して義援金を差し出してくれた数多くの途上国の気持ちに応えるべき時に、こんな姿勢でいいのか。過去の支援活動を通じて多くの国から信頼を寄せられてきた日本の地盤低下は、日本の将来を担う世代に残すべき「ODAによる信頼という無形の資産」を食いつぶすことにもつながりかねない。

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