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高齢者を特別扱いしない医療保険

韓国の社会保障制度を分析する――その2「医療保険制度」

2011年7月25日(月)

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 前回は韓国の年金制度を取り上げましたが、今回は医療保険を取り上げます。

 年金と同じように高齢化とともに国民負担が増す制度が医療保険制度です。韓国の医療保険の全体像を見て特筆すべき点は、韓国の健康保険では高齢者が特別に優遇されているということはなく、保険料は若干安くなっているとはいえ、ほかの年齢層と医療費の自己負担率が概ね同じとなっていることです。

 日本では通常の自己負担率が30%であるのに対して、70~74歳の前期高齢者が20%、75歳以上の後期高齢者が10%と低くなっていますが(※1)、韓国ではこのような高齢者に対する優遇措置はありません。前回は国民年金が高齢者に厳しい制度になっている点を見ましたが、医療保険も高齢者に厳しい制度と言うことができそうです。今回も日本の医療保険制度と比較しながら、韓国の医療保険について見ていきます。

一元化されたシンプルな構造

 まず医療保険制度の概略を説明します。韓国の公的な医療保険制度は「国民健康保険制度」に一元化されており、加入者は原則的に国内に居住する国民です(※2)日本の医療保険制度は、大企業の従業員やその被扶養者が加入している「組合管掌健康保険(組合健保)」、中小企業の従業員とその被扶養者が加入している「全国健康保険協会管掌健康保険(協会けんぽ)」、公務員等やその被扶養者が加入している「共済組合」、自営業者や無業者等が加入している「国民健康保険」、75歳以上が加入する「後期高齢者医療制度」の5つに大きく分かれていますが、韓国はいたってシンプルです。

 韓国の国民健康保険の加入者は、職場加入者と地域加入者の2つに分類され、職場加入者はさらに、勤労者事業所加入者、公・教事業所加入者に分かれます。勤労者事業所加入者は、常用雇用者が1名以上の事業所に雇用される者で、公・教事業所加入者は公務員及び学校の教職員です。そして地域加入者は職場加入者を除く者となります。高齢者については、無職者や自営業者の比率が高いため、地域加入者が多くを占めています。なお国民健康保険の運営は国民健康保険公団が行います。

 医療保険を考える際には負担と給付の2つの面から見ていく必要があります。まず保険料負担については、職場加入者は、8%の範囲内で財政運営委員会(※3)議決内容を斟酌して大統領令で決めた保険料率を、標準報酬月額に掛けた金額を支払います。2011年時点での保険料率は5.64%であり、これを労使が折半します。日本の医療保険の保険料率は、組合健保は平均で7.45%、協会けんぽは、都道府県ごとにわずかに異なっていますが、平均9.34%と(※4)韓国より高い保健料率となっています。

 これに対して地域加入者の保険料の算定方法は若干複雑です。地域加入者の保険料は世帯単位で徴収されます。所得(70等級)、財産保有(50等級)、自動車保有(7等級)の状況がそれぞれ点数化され、合計点数に単価が掛けられ、保険料が決定します。

 ただし年間所得が500万ウォン以下の世帯については、財産保有(50等級)、自動車保有(7等級)に関する点数に、性、年齢、財産などで分類された生活水準及び経済活動参加率点数(30等級)、所得50万ウォン当たり1点を加えた合計点数に単価が掛けられ保険料が決められます。なお、所得が低い場合、財産に応じて10~30%の軽減、70歳以上の高齢者のみの世帯は、所得が低く財産が一定以下なら30%の軽減がなされます。

 点数の分布を見ると、所得が380点(年間500~600万ウォン)から1万1625点(同4億9900万ウォン以上)、財産が22点(100~450万ウォン)から1475点(30億ウォン以上)、自動車が7~217点です。よって所得のウエートが高く、地域加入者の保険料のかなりの部分は所得で決まることが分かります。

※1 いずれも現役並み所得者は3割負担である。
※2 ただし後述する職場加入者の配偶者や子供などで所得のないものは加入者からは除外される。
※3 保険財政に関連した事項を審議するため、国民健康保険公団に置かれた機関。地域加入者を代表する10名、職場加入者を代表する10名、公益を代表する10名によって構成される。
※4 西沢(2011)199~200ページ。

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「高齢者を特別扱いしない医療保険」の著者

高安 雄一

高安 雄一(たかやす・ゆういち)

大東文化大学経済学部教授

1990年一橋大学商学部卒、同年経済企画庁入庁、調査局、外務省、国民生活局、筑波大学システム情報工学研究科准教授などを経て現職。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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