• BPnet
  • ビジネス
  • IT
  • テクノロジー
  • 医療
  • 建設・不動産
  • TRENDY
  • WOMAN
  • ショッピング
  • 転職
  • ナショジオ
  • 日経電子版

「自由な場所」、大陸にとって香港とは?

「禁書が見られる」「香港の記者は賄賂を受け取らない」

2011年7月28日(木)

  • TalknoteTalknote
  • チャットワークチャットワーク
  • Facebook messengerFacebook messenger
  • PocketPocket
  • YammerYammer

※ 灰色文字になっているものは会員限定機能となります

無料会員登録

close

 現在、香港展覧会議中心の隣に位置するホテルの一室でこの原稿を執筆している。

 筆者はこの地に1週間ほど滞在している。テレビ出演などでしばしば訪れる香港ではあるが、これだけまとまった時間をここで過ごすのは初めだ。

 今回訪れたのは、アジア最大規模と言われる第22回香港ブックフェアー(『2011香港書展』)に出席するためである。共催者であり、香港を拠点に世界中に影響力を持つ中国語の週刊誌《亜洲週刊》に招待された。ブックフェアーにおけるメインイベントの一つである「名作家講座」の講師を務めさせていただいた。

 筆者以外に、中国大陸から7人、香港から4人、台湾から4人の講師が参加し、講演した。共催者が、外国人である筆者を招待したあたりに、香港の国際化の程が表れている。講演の冒頭でも、「この事実が香港ブックフェアーの進歩であることを祈ります」と申し上げた。

 今年は24カ国・地域から526の出版社が出展した。会場に足を運んだお客さんの数は、主催者である香港貿易発展局の関係者によると100万人を確実に突破する見込みだという。昨年は92万人だった。香港の人口は約700万人、7人に1人がブックフェアーに足を運んでいる計算になる。こんな都市がほかにあるだろうか。

香港ならば禁書も手に入る

 「香港人は日ごろ全く本を買わない.。毎年夏になると、フェアーの会場にやってきて、数十冊と大量に本を買い漁って行くんです。あまり健康的な習慣とは言えないですよね」

 香港在住のある著名作家が苦笑いしながら、教えてくれた。確かに、町を歩いてみると、本屋が極端に少ないことに気づく。

 最近は、わざわざ「国境」を越えて中国大陸から来る参加者が激増している。大陸から香港への団体旅行、あるいは個人旅行が、以前と比べて断然便利になったことが関係している。

 香港まで出てくれば、大陸では「禁書」になっている書籍や、そもそも出版が不可能な書籍(前回コラムで紹介させていただいた拙著『愛国奴』もこの一つ)も手にすることができる。これは大きなポイントだ。

 筆者は会場を回りながら、大陸から来た多くの観光客に遭遇した。好奇心旺盛な大学生を中心に、皆興奮していた。
 「やっと自由な場所に来ることができた!」
 「天安門事件がどのように起きて、中国共産党がこの事件をどのように処理しようとしたのかを知りたくて、遼寧省からやって来ました」
 「香港に来て、私たち大陸人が日ごろどれだけ出版の自由が制限された空間で生活しているのかが分かりました」

 香港に比較的長めにステイしてみて、この地がチャイナウォッチにとっていかに重要な戦略的拠点であるかということを再確認した。

自由に語った話が自由に転載される

 香港には、「中国」をテーマにして飯を食っているジャーナリストが五万と居る。「大陸寄り」から「反中国共産党」まで様々なメディアがある。特に中国の内政と軍事問題でなんらかの突発事件が発生した場合、最初に反応するのは香港メディアである場合が多い。「江沢民死去」の情報を最初に報道したのも香港の「亜洲電視」であった。その後、同テレビ局は「誤報」を認めて謝罪した。

 「香港情報」は玉石混合と言われており、どこまで信じていいのか分からない。しかし、オープンな報道が極めて限られている中国大陸で生活している筆者から見ると、「何はともあれ、いろんな情報であふれている」という状況は羨ましい。情報の受け手に、より一層の理性と判断力が求められることは間違いないが。

 滞在期間中、筆者は香港メディアから多数の取材を受けた。日ごろ大陸で受けるインタビューよりも緊張感があった。大陸でも以下のテーマの質問を受ける――天安門事件、中国共産党の正当性、人民元切り上げ、台湾問題、ここ数日紙面を賑わせている中国高速鉄道事故の問題など。しかし「これらのテーマは政治的に敏感な問題。取材しても、まず紙面には載らないですね」というケースが少なくない。

 それに比べて、香港の記者たちはシャープな視点から質問を投げかけてくる。こちらが答えた言葉はお構い無しに紙面に掲載する。オフレコの約束で話した内容が掲載されることも珍しくない。

 最近は、香港メディアが報道した記事を、《参考消息》や《環球時報》などの「官製メディア」が、「外国メディアによる中国報道」としてすぐに転載する。筆者が香港で「自由に」語った内容を、中国大陸メディアが「自由に」転載してしまうのである。もちろん、上記で取り上げた「政治的に敏感」なテーマは回避するけれども。「これは要注意だな」という覚悟をもって香港メディアからの取材に応じなければならない。

コメント0

「加藤嘉一の「脱中国論」現代中国を読み解く56のテーゼ」のバックナンバー

一覧

「「自由な場所」、大陸にとって香港とは?」の著者

加藤 嘉一

加藤 嘉一(かとう・よしかず)

国際コラムニスト

現在米ハーバード大学アジアセンターフェロー。世界経済フォーラムGlobal Shapers Community(GSC)メンバー。中国版ツイッター(新浪微博)のフォロワー数は150万以上。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

日経ビジネスオンラインのトップページへ

記事のレビュー・コメント投稿機能は会員の方のみご利用いただけます

レビューを投稿する

この記事は参考になりましたか?
この記事をお薦めしますか?
読者レビューを見る

コメントを書く

コメント入力

コメント(0件)

ビジネストレンド

ビジネストレンド一覧

閉じる

いいねして最新記事をチェック

日経ビジネスオンライン

広告をスキップ

名言~日経ビジネス語録

韓国がダメでも、日本なら技術を見る「目」が投資家にあるはずだ。

崔 元根 ダブル・スコープ社長