「知られざる韓国経済」

韓国で介護難民が少ない本当の理由

社会保障制度を分析する――その3「介護」

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2011年8月8日(月)

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 韓国ではつい最近まで高齢者介護は家族が担うものとされてきました。老人福祉法の第3条には「国家と国民は敬老孝親の美風良俗にともなう健全な家族制度が維持・発展するように努力しなければならない」と規定されています。

 これは高齢者介護については「先家庭保護、後社会福祉」という基本方針を提示したもので(※1)、儒教思想に基づく考え方だと言えます。儒教思想の影響を受けている点では、日本も韓国も同じですが、韓国ではその影響が現在でも日本より強く残っています。

 しかしそのような韓国でも、家族による高齢者介護は様々な限界に直面しています。日本の介護保険法に相当する、老人長期療養保険法案の提案理由で述べられているように、韓国は世界でも例のないスピードで高齢化が進行しています。急激な高齢化により認知症など日常生活が難しい高齢者が増加し、核家族化や女性の社会進出などにより介護が必要な老人を家庭で世話することが難しくなっています。

 家庭の介護費用負担も重くなり、高齢者介護問題は社会全体で解決しなければならない深刻な問題になりました。このため、儒教思想が色濃く残る韓国でも、介護保険を導入することで、高齢者介護を社会で担うことが必要となっているのです。

 このシリーズでは、年金医療保険は、高齢者には厳しく、公費負担はできる限り抑えた制度であることを指摘してきましたが、介護保険はどうでしょうか。結論から言うと、介護保険についてもやはり、総じて高齢者に厳しく、公費負担は少なく抑えられています。

介護保険料は若者含め広く負担

 韓国の介護保険(韓国での名称は「老人長期療養保険」ですが、以下では「介護保険」とします)は、2001年8月15日(光復節)に当時の金大中大統領が導入を発表し、2007年に根拠法律が国会を通過し、2008年7月から事業が開始されました。よって介護保険の歴史はまだ3年ほどしかありません。

 まずは負担と給付の側面から見ていきますが、その前に保険の運営者について触れます。韓国の介護保険の運営者は、医療保険の運営者でもある国民健康保険公団です。これは市町村、あるいはいくつかの市町村がまとまった広域連合が運営する日本と大きく異なる点です。

 次に負担ですが、韓国では健康保険の保険料を負担している者の全てから介護保険料を徴収します。日本の場合は、40歳以上の人から介護保険料を徴収していますが、韓国では保険料の負担を若者まで広く求めていることになります。

 介護保険料は健康保険料額に介護保険料率をかけた金額であり、2011年7月時点の介護保険料率は6.55%です。ちなみに医療保険の保険料率は5.64%であるので、標準報酬月額に対する保険料率は0.37%です。日本では全国健保の場合1.19%であり、韓国の介護保険料は低水準と言えます。

※1 ヒョンウェソン(2008)469ページ

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