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それでも中国は米国債を買い続ける

持ちつ持たれつの米中関係はそんなに脆くない

2011年8月18日(木)

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 ニューヨーク株式市場の動向をみるかぎり、2週間前に起きた大パニックは沈静化の方向へ向かっているように見えるが、高速鉄道事故の処理などの「内憂」に忙殺されている中国当局にとっては、これを契機に「外憂」もまた1つ増えるかもしれない。8月5日(金曜日)、米国株式市場の取引終了後、格付け会社スタンダード・アンド・プアーズ(S&P)が米国債の長期格付けを初めて引き下げることを発表した。

 そして、週明け8日の早朝(日本時間)、主要市場の取引開始前、G7の財務省・中央銀行総裁会議は緊急の電話協議を開き、
[1]金融市場の安定を維持するための「協調行動」を取ること
[2]財政赤字・債務・経済成長に関する課題に対し米欧の断固たる行動を歓迎する
などの内容を盛り込んだ声明を発表した。

 同様に日本政府も米国債の保有や購入を続けていく意向を強調。G7のメンバー国はこの米国の問題に対し当然のように結束する姿勢を示したのである。

ネット上で中国政府への批判が殺到

 一方で、中国の反応にはこうした「温情」は一切なかった。8月6日、国営の新華社通信は、世界最大の米国債保有国として「中国はドル資産の安全を保証するよう米国に要求するあらゆる権利を持つ」と主張し、軍事費や社会保障費の削減を迫ったほか、ドルの発行についても国際社会の監視を受けるべきだと厳しく非難した。

 明らかにG7とは距離を置いた論調である。

 しかし、ニューヨークの株価暴落が上海や香港にも飛び火したことを受け、8月9日の国務院常務会議で、中国政府はG20の財務省・中央銀行総裁会議の声明文を支持する立場を初めて表明した。それと同時に、名指しは避けながらも、「関係国」すなわち米国に対し、責任ある財政政策や金融政策を実施するよう注文をつけた。

 ここ数年、中国による米国債の保有規模は急速に拡大している。それに伴って、米ドル建て資産の安全性を懸念する声が政府関係者を中心に高まってきた。2009年3月14日、全人代閉幕直後の記者会見で、温家宝総理が「正直言って少し心配している」と発言したことが、その実態を物語っているだろう。

 2008年秋、リーマンショックが起きた際、中国が連邦住宅抵当金庫(ファニーメイ) と連邦住宅貸付抵当公社(フレディマック)の債権を合計3000億ドルも保有していることが明るみに出て、ネット上に中国政府への批判が殺到する事態となった。

 こうした世論への配慮もあって、最近、中国では外貨準備の運用先の多様化を進めてきた。今回の格下げが決定される直前も、中国人民銀行の総裁や政策委員などの関係者から、改めて外貨資産運用の多様化や米ドル資産割合の引き下げを検討すべきだとの声明を出していた。そうした中、今回の格下げを受けて、中国のドル資産離れがいよいよ加速するかもしれないと、グローバル金融市場で懸念の声が上がることには何の不思議もない。

大量売却は自分の首を絞める結果に

 確かに、今回の格下げを契機に、中国国内では対米投資の安全性を疑問視する声が一段と高まり、当局に情報開示を求めるなど、世論がより厳しくなることは必至の状況だ。また、米国の国債を購入するより、米国政府が香港や上海で人民元建て債券を発行し、調達した人民元を外貨管理局でドルに両替する方法を提案する学者も現れた。

 一方、外交面では、今後、米国債の売却を交渉のカードとして揺さぶりをかける頻度が増す可能性が排除できない。例えば、4T問題(Tiananmen、Taiwan、Tibet、Trade=天安門、台湾、チベット、貿易)をめぐって米中の激突が起きるたび、米国債の売却を求める声が中国国内の世論として高まってくることは想像に難くない。

 ただし、米国債の価格が下落すれば、最大の保有国である中国が最も損失を被る可能性が高い。大量の売却は自分で自分の首を絞める結果になりかねないことは、中国の関係者がよく分かっているはずだ。

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「それでも中国は米国債を買い続ける」の著者

肖 敏捷

肖 敏捷(しょう・びんしょう)

エコノミスト

フリーのエコノミストとして原稿執筆や講演会などの活動をしている。テレビ東京の「モーニング・サテライト」のコメンテーターを担当中。2010年の日経ヴェリタス人気エコノミスト・ランキング5位。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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