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ブータン的である、ということ

【最終回】ビジョン、リーダー、そしてコミュニティ

  • 御手洗 瑞子

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2011年8月25日(木)

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チェレラ峠と祈祷旗ダルシン
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 最終回です。

 いつも、この日経ビジネスオンラインの「ブータン公務員だより」をお読みいただいてどうもありがとうございます。また、いつもたくさんの示唆に富むコメントをいただきどうもありがとうございます。毎回一つひとつ拝読し、「なるほどこういう見方もあったか」と勉強させていただき、次のコラムへの参考にさせていただいてきました。6月中旬にこの連載を始めてから、早いものでもう10回目のコラムとなりました。そして、実は「ブータン公務員便り」は今回が最終回です。

 もともと、10回のつもりで始めさせていただいたコラムでした。でもたまに「今週も面白い! ぜひ1年ぐらいは続けてほしい連載です」とコメントをいただいたり、連載も8~9回目ぐらいになったところでツイッターで「面白い連載が始まったよ! 今後に期待!」などと記事を紹介していただいているのを見ると、「ど、どうしよう…。これ10回ものでもうすぐ終わりですって言えない…」などと思っておりました。ご期待くださったみなさま、申し訳ありません。そして、今まで読んでいただいて本当にありがとうございました。

ベンチャー企業ブータンと大企業日本

 そして今回は最終回。何を書こうか考えました。これまで、産業、人の心のあり方、女性の立場、インドとの関係、都市のバブル…、など様々なことを取り上げましたが、最終回は、私がブータンにいて日々感じる「ブータンを夢の国と言うと語弊があるけれど、なんだかんだ言ってやっぱり、この国がこうして存在できているというのはすごいよなぁ」と思うことをうまく書けるといいなぁと思いました。

 こんなに小さくて、インドと中国という巨大な国に挟まれて、資源もあまりない国でありながら、独自のビジョンの下、国を運営して国民が自信満々に「どうよ、ブータン。いい国でしょ」と自慢できるのは、やはりすごいと思うのです。なぜそんな国の運営ができるのでしょうか。

 きっと学ぶべきことが多いブータンだと思うのですが、一方で、ブータン社会の特徴を挙げて日本のそれと比較するというのは、少し無理があるようにも感じます。それは、設立4年目で従業員数十人規模のベンチャー企業と、ン十年の歴史を誇り、成功体験もしがらみもある社員数千人の大企業を比較するようなものだからです。

 そう、ブータンと日本は、サイズにおいても成熟度においても、ベンチャーと大企業ぐらいに、違いがあります。

タシチョ・ゾン(ティンプーにあるゾン。宗教、行政機能が入っている城)
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 まずサイズです。ブータンの人口は約70万人。日本で言うと、島根県か、東京都大田区、練馬区と同じぐらいです。日本の人口を約1.3億人とすると、185倍の差があります。まさに、20人規模の企業と約4000人規模の企業ぐらいの違いです。

 また、政府の成熟度も異なります。ずっと国王が統治していたブータンが民主主義に移行し、国民選挙で政治家が選ばれたのは、2008年。今からたった3年前のことです。今の首相と内閣は、ブータンで初めての民主選挙に基づき選ばれた首相と内閣ということになります。

 もちろん民主政治が始まる前も国王により統治されていましたが、やはり政府が新しいということの意味は大きいと思います。何をやるにも、前例もこれまでの議論も、ほとんどない。今初めて考えなくてはならない課題がたくさんある。このため何か課題がある場合、前例を調べ、これまでの議論を確認し、関係省庁に問い合わせ…、という動きはあまりありません。「どう対応するか、今このメンバーで考えよう」という姿勢が強いです。そんなところも、何だか国が丸ごとベンチャーっぽいなぁと感じます。

組織としてのブータン

 サイズという意味でも成熟度という意味でも、そんなベンチャー企業みたいなブータンと、大企業のような日本を単純に比較するのは、無茶な気がします。そしてそれを元に「日本はブータンに比べてこんなことができてないから、幸せじゃないんだ!」というような議論が起こったとしても、あまりそれは生産的でない気がします。土台が違うからです。

 ですので、日本と比べる対象としての「国としてのブータン」という概念はいったん横に置いて、ユニークな社会モデル、または組織モデルとしてのブータン、というふうに見てみてはどうかと思います。

 規模も小さく、立地や資源などの条件にも恵まれていないブータンが、国民が「どうだ、俺の国いいだろ」と自慢できるような国であれるのはなぜか。どういった国づくりや運営をしているのか。どういった構造なのか。ブータンの政府で働き、ブータンの中で暮らしながら感じてきたこの国の特徴を、自分なりに考えてみました。

 ブータンを組織モデルとしてとらえた時、特徴は大きく4つあるように思います。

1◆ GNH(国民総幸福度)という、国を運営する上での独自のビジョンを明確に持っている
2◆ グローバルに視野を開きながら自国の文化も深く理解し国の舵取りができる、驚くほど優秀なリーダーたちがいる
3◆ 国民一人ひとりの「幸せ力」が強い
4◆ 国全体が社会というよりコミュニティ

 このコラムを読んでくださっていた方だと、もうほとんどご存知のことかもしれないのですが、簡単に書きたいと思います。

コメント41件コメント/レビュー

またまた中央アジアキルギスとの比較で恐縮ですが、やはり似ているので。今回も水力発電の話があったので同じ例えにしますが、キルギスは高山を控えているため水資源が豊富で、総電力の95%を水力発電でまかなっています。ブータンも同様自国の利点を活かそうとしている点はそれはそれで素晴らしいことで何ら反論はありませんが、その先にも様々な問題の発生源があることも事実で、それが想定されているのかが気になるのです。キルギスでは水力発電への依存度が増すに連れ、環境変化によって時に大きな電力不足が生じます。物凄いスピードで減少している天山山脈の氷河(キルギスの水資源の基)は将来どのようになるか一国では想定もできませんし、水流のダム化により下流にあるウズベキスタンなどでは綿花栽培用の水不足が深刻化し、代わりの水源であるアラル海がどんどん縮小しているのはよく知られています。(中国でも下流にある国といさかいが絶えませんね) 水力発電事業ではノウハウの面で経験を持つロシア政府や企業がほとんど事業を独占していますし、キルギスの自国経済にどこまで水力発電事業そのものが寄与しているかは微妙です。(もちろん電力供給で寄与していますが、現実一部の人が利権をむさぼっている状況です)キルギスはロシアと中国、そしてアフガニスタン作戦中のアメリカとの間でバランスを取りながら(危険な天秤にかけもしながら)なんとかやっています。でもその状態が長く続けば、コミュニティ社会(部族社会)は利権構造の源にもなるのです。そして部族間の利権争いや民族衝突は、時にバランスがどちらに転ぶかで起こり得ます。どなたか書かれていますが、ネパールとの問題もあるとのこと、完全な夢の国として存在し続けることは、モノが凄いスピードで流入している点を見ても難しいと思います。こういう状況の国は、世界中至る所にあるような気がしてなりません。(2011/08/31)

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いただいたコメント

またまた中央アジアキルギスとの比較で恐縮ですが、やはり似ているので。今回も水力発電の話があったので同じ例えにしますが、キルギスは高山を控えているため水資源が豊富で、総電力の95%を水力発電でまかなっています。ブータンも同様自国の利点を活かそうとしている点はそれはそれで素晴らしいことで何ら反論はありませんが、その先にも様々な問題の発生源があることも事実で、それが想定されているのかが気になるのです。キルギスでは水力発電への依存度が増すに連れ、環境変化によって時に大きな電力不足が生じます。物凄いスピードで減少している天山山脈の氷河(キルギスの水資源の基)は将来どのようになるか一国では想定もできませんし、水流のダム化により下流にあるウズベキスタンなどでは綿花栽培用の水不足が深刻化し、代わりの水源であるアラル海がどんどん縮小しているのはよく知られています。(中国でも下流にある国といさかいが絶えませんね) 水力発電事業ではノウハウの面で経験を持つロシア政府や企業がほとんど事業を独占していますし、キルギスの自国経済にどこまで水力発電事業そのものが寄与しているかは微妙です。(もちろん電力供給で寄与していますが、現実一部の人が利権をむさぼっている状況です)キルギスはロシアと中国、そしてアフガニスタン作戦中のアメリカとの間でバランスを取りながら(危険な天秤にかけもしながら)なんとかやっています。でもその状態が長く続けば、コミュニティ社会(部族社会)は利権構造の源にもなるのです。そして部族間の利権争いや民族衝突は、時にバランスがどちらに転ぶかで起こり得ます。どなたか書かれていますが、ネパールとの問題もあるとのこと、完全な夢の国として存在し続けることは、モノが凄いスピードで流入している点を見ても難しいと思います。こういう状況の国は、世界中至る所にあるような気がしてなりません。(2011/08/31)

御手洗さんにぜひ伺いたいのですが、GNHがあまりに国内外で有名になり、素晴らしいビジョンとされているがために、ブータン国民は「幸せじゃないかも」と言えなくなっているということはありませんか。辛くても、面白く無くても、実は私、幸せじゃないんだ、と言うと「非国民」みたいに思われるとか。少なくとも外国人にはそんなこと言わないようにしましょう!という雰囲気があるとか。だってそのために国の組織があり、公務員が働いていて、外国からアドバイザーを招いたりしているんですから、不幸な国民が増えたら政策の失敗になってしまうんですよね。レポート読んで、いい国だなと思う反面、ホンマかいな、と少し全体主義的なものを感じてしまったのは、私だけでしょうか。(2011/08/28)

連載、お疲れさまでした。大変示唆に富み、大変興味深い記事でした。それはブータンというユニークな環境の紹介という点もあるでしょうが、何よりも筆者の自然な姿勢と高い知性が同居した人格によるものと感じています。ありがとうございました。これで終わりというのが非常に残念です▼リーダーの資質の、最も重要な1つは「自信」だと考える。根拠の有無は問題では無い、というより根拠の無い自信の方が必要。してみれば、今のブータンのお国柄自体が、リーダー育成に必要な一角を既に満たしているのだと思う▼なぜ日本に優秀なリーダーがいると思えないのか?というコメントがあるが、それこそ記事中のベンチャーと大企業の差であると思う。しかも日本は欧米式のリーダー育成は取り入れていないし、取り入れられないし、取り入れようとすべきではない。格差を無くしたら普通はリーダーのような突出した人間は育たない。日本独自のリーダー育成手法を考えるべきだろう。(2011/08/28)

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