「終わりなき戦い」

子どもと水、どちらを捨てるのか

ソマリアの大飢饉、食糧があっても餓死する実態

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2011年9月6日(火)

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 私は今、7月中旬に国連が「飢餓(Famine)」宣言をしたソマリアで働いています。正確に言うと、ケニアのナイロビにある国連児童基金(UNICEF)ソマリア支援センターを拠点に、月の約半分をソマリア国内各地に出張しながら、ソマリア国内で展開している保健・栄養・水衛生支援事業の統括・管理をしています。

ソマリア国内、エチオピア国境にある避難民キャンプで(以下同じ)
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 「飢餓」という言葉から多くの人は「食糧がないために人々が飢えて死亡している」状態を想像するのではないでしょうか。

 実際に、今回の「飢餓」が宣言されたソマリア南部の2地域では多くの人々が飢えて死亡しています。「飢餓」を宣言する基準として、(1)栄養摂取が1人1日あたり2100キロカロリー未満、(2)5歳未満の子どもの中等度以上の栄養不良割合が30%以上、(3)死亡が1日1万人あたり2人以上、という3つの条件があります。

 ソマリアでは2100キロカロリーどころか500キロカロリーにも満たない人はたくさんいます。子どもの栄養不良も50%以上のところ、子どもの死亡も「危機的」といわれる基準の5倍以上のところもあります。

 ただし、(1)の条件は「食糧がない」ためではなく、「食糧があっても入手できない」「食糧があっても栄養不良が発生し、死亡数が増加する」という状況があることを知ってほしいと思います。

約20年間にわたる内戦、無政府状態

 もともと荒涼とした半砂漠が延々と続くソマリアは雨が少なく、大部分の地域で年間降水量は平均500ミリメートル以下、中には100ミリメートル以下という場所もあります。雨季は4〜6月と10〜12月に2回。これらが人々の農業・遊牧による営みを支えています。

 四季を通じて水が流れる川は、エチオピア高原から流れてくるジュバ川とシェベレ川のみで、ほかは雨季に短期間、時に短時間だけ水が流れる水無し川です。僻地の診療所などを訪れるとき、未舗装の道、4輪駆動車でこのような水無し川を渡るのですが、雨季に突然スコールのような雨が降ると、川に水があふれて渡れなくなり、数時間待っているとまた水が引けて渡れるようになります。水が引かずに夜を明かした人もいるようですが…。

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 旱魃自体は今に始まったことではなく、慢性的な旱魃はソマリア各地で見られていました。しかし、ここ1〜2年の旱魃はひどく、それによって農業、遊牧への影響が強く現れました。降雨量の低下については、人口や家畜数の増加により、潅木の過伐採、過放牧などが進み、砂漠化が進んでいることも影響しているとも考えられています。

 この旱魃で確かに農作物が枯れ、家畜が死に、6割以上が遊牧生活、その他も零細農業を営んでいる人々の生活は厳しくなりました。しかし、多くの国ではそれに対して備蓄された食糧やその輸入で急場をしのぐことができます。

 しかし、この国では食糧の計画的な備蓄も輸入も、約20年間にわたる内戦、無政府状態のため機能せず、近年の石油の高騰による物価上昇も含めて、ソマリア国内に食料があっても値段が上昇し続け、多くの人々に買えなくなってしまいました。

 例えば、主食の1つ「ソルガム」の価格が3倍に跳ね上がったところもあります。遊牧民は旱魃で生活の糧であるラクダやヤギを失い、食べるものがないため、市場に行っても高くて買えず、労働で稼ごうにも職がないという状態なのです。

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著者プロフィール

國井 修(くにい・おさむ)

國井 修国連児童基金(UNICEF)ソマリア支援センター 保健・栄養・水衛生事業部長
1988年自治医科大学卒業、公衆衛生学修士(ハーバード大学)、医学博士(東京大学)。内科医として勤務しながら国際緊急援助NGOの副代表として、ソマリア、カンボジア、バングラデシュなどの緊急医療援助に従事。国立国際医療センター、東京大学、外務省、長崎大学・熱帯感染症センター、UNICEF ニューヨーク本部、同ミャンマー事務所などを経て現職。これまで、110カ国以上で緊急援助、開発事業、調査研究、教育に関わった。近著に『国家救援医 私は破綻国家の医師になった』(角川書店)



このコラムについて

終わりなき戦い

国際援助の最前線ではいったい何が起こっているのか。国際緊急援助で世界を駆け回る日本人内科医が各地をリポートする。NGO(非政府組織)やUNICEFの一員として豊富な援助経験を持つ筆者ならではの視野が広く、かつ、今をリアルに切り取る現地報告。

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