「Tech MomのNew Wave from Silicon Valley」

日本に上陸した緑の黒船「Hulu」の“真価”

ネット映像配信の強みは「配信」にあらず

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2011年9月8日(木)

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 9月1日、アメリカで人気のオンライン・ビデオサイト、「Hulu(フールー)」が日本でサービスを開始した。日本でのサービスは、月額1480円で見放題、現在は1カ月無料お試しができる。タイトルとしては、「24」「LOST」などといった人気テレビドラマ・シリーズや映画が中心で、CMは入らない。NTTドコモがマーケティング・パートナーとなっている。

iPadの画面に表示した「Hulu」のウェブサイト(写真提供:Hulu)

 Huluは、アメリカの主要地上波テレビ局(Fox・NBC・ABC)などが出資する合弁会社。親会社のコンテンツを中心に、テレビ番組や映画をネット配信している。

 アメリカでは、ユーザーは無料視聴で、番組の前や途中でCMが入るのが基本。これに特典のついた有料プランも別立てである。コンテンツの品揃えも料金体系も画面のインターフェースも、日本のものとはかなり違う。

 アメリカのテレビ業界は既存プレーヤーと新参者が入り乱れて混沌状態が続いている(関連記事:米国版・荒野の西部劇「テレビ酒場の大乱闘」)。そんな中から台頭し、「テレビ視聴の習慣を一変させた」と言われるHuluとはいったいナニモノなのか。テレビの事情に詳しい専門家、「我が家のティーン息子」の行動をサンプルとして、アメリカでの状況を観察してみよう。

「ユーチューブ対策」から始まったHulu

 2006〜2007年頃、テレビ番組の録画がユーザーによりユーチューブに投稿されて人気を博すケースが相次ぎ、テレビ業界では「ナップスターが壊した音楽業界」と同じ道を歩む危機感が急速に高まった。

 音楽業界では、業界団体が楽曲を無断シェアしたユーザーを提訴することでユーザーを敵に回してしまい、事態がますます悪化した。テレビ業界はそれを間近で見ていたので、ユーザーの無断シェア防止対策だけでなく、自らが主体的に番組をネット配信する試みも開始した。

 アップルの音楽配信サービス「iTunes」を経由した個別番組有料販売や自社サイトでの無料配信などが試され、その一環としてFoxとNBCの2社が2008年にHuluを開始した。そこに後からABC(現在はディズニー傘下)も加わり、ケーブル専門チャンネルのヴァイアコムなども一部番組を提供するようになった。

 現在までのところ、番組の個別有料販売も個別チャンネルごとの無料配信も「そこそこ」程度だが、複数チャンネルを集めたポータルとしてHuluは生き残っている。

 Huluでは、地上波番組のうち、視聴率最上位を占めるスポーツやイベントのライブ番組は扱っていない。連続ドラマ、アニメ、コメディ・ショー、リアリティ・ショーなどの「蓄積型」コンテンツが対象で、通常はテレビ放映の翌日にはHuluにアップされるが、無料版では過去放映を数回前までしか見られない。

 2010年6月からは、有料プラン「Hulu+(フールー・プラス)」も提供している。Hulu+会員になれば、月額7ドル99セントで(1)過去シーズンのアーカイブをすべて見られる、(2)iPadやゲームコンソールなど、パソコン以外の端末でも利用できる、といったいくつかの特典がある。

 会員になれば無制限に番組を見られるが、番組中の広告は通常通りに表示される。Hulu+で見られるタイトル数は膨大で、2011年第2四半期(4〜6月)の財務発表の中で「テレビ番組2万8000本、映画1450本、短いクリップ2万5000本以上」と発表している。

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著者プロフィール

海部 美知(かいふ・みち)

海部 美知エノテック・コンサルティングCEO(最高経営責任者)。ホンダを経て1989年NTT入社。米国の現地法人で事業開発を担当。96年米ベンチャー企業のネクストウエーブで携帯電話事業に携わる。98年に独立し、コンサルティング業務を開始。米国と日本の通信・IT(情報技術)・新技術に関する調査・戦略提案・提携斡旋などを手がける。シリコンバレー在住。子育て中の主婦でもある。ブログ:Tech Mom from Silicon Valley。Twitter ID:@MichiKaifu。著書に『パラダイス鎖国 忘れられた大国・日本』(アスキー新書)がある。



このコラムについて

Tech MomのNew Wave from Silicon Valley

ヒューレット・パッカード、アップル、インテル、グーグル──。世界のIT(情報技術)産業を牽引するこれらの米国企業を輩出し、米ハイテク産業の「聖地」であり続けてきたシリコンバレー。カリフォルニア州サンフランシスコの南方に広がるこの地は、ITバブルの崩壊を乗り越え、今なおハイテクやビジネスの新たなトレンドの発信源として世界の注目を集めている。シリコンバレー在住の経営コンサルタントでブログ「Tech Mom from Silicon Valley」の著者として知られる海部美知氏が、現地で話題のビジネスやハイテクのトレンドをリポートする。

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