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小学生の給食無償化は税金の無駄遣いか?

福祉をめぐる「ポピュリズム」論争

2011年9月14日(水)

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 2011年8月24日、ソウル市は大騒ぎとなった。「公立の小中学校に通う全生徒の給食を無償にすべきか」というテーマである住民投票が行われたのだ。

 ソウル市教育庁は2011年から、公立小学校の1~3年生に対して給食を無償で提供している。財源は教育庁とソウル市の傘下にある区の予算だ。2012年からは、これを公立小学校の全学年に拡大。2014年までに、公立の小中学校に通うすべての生徒を対象にする予定だ。

 ソウル市教育庁によると、ソウル市の公立小学校1~6年生は約52万8000人。全員に無償で給食を提供するためには年間2298億ウォン(約177億円)が必要となる。加えて、ソウル市の中学生は33万2000人。小中学校を合わせると年間4092億ウォン(約315億円)が必要だ。

 これに対して、ソウル市のオ・セフン市長が突然、見直しを唱え始めた。
 「お金持ちの子供の給食まで無償にするのは過剰福祉」
 「福祉を持続可能なものにして韓国財政の健全性を保つのか? それとも、過剰福祉を選択して、借金を残すのか? これを選択する時期にきている」
 「国家財政を危うくする過剰福祉に歯止めをかけなくてはならない」

財政の規律を優先する市長の発言をきっかけ住民投票へ

 そして無償給食を進めるべきかどうか、国家の未来のために市民に意見を聞いてみようということになった。

 ソウル市長は「所得水準下位50%の子供の給食だけ無償にすべき」という意見。「無償給食を実施しているのはOECD加盟国の中でスウェーデンとフィンランドだけ」「貧乏な子供にだけ無償で給食を提供する。残りの予算で教育競争力を強化すべき」と主張した。

 さらに「この住民投票が成立しなかった場合(投票率が33.3%を下回ると無効になる)には市長を辞める」とまで言い切った。

 ソウル市の与党のハンナラ党は「無料給食は亡国的ポピュリズム(populism)」と無償給食に反対して、市長を援護した。「小学生全員に無償で給食を提供することになれば、税金を値上げせざるを得ない。庶民の暮らしがますます苦しくなる」といった意見である。

 ハンナラ党のホン・ジュンピョ代表は「ギリシャは無差別福祉を行った結果、財政赤字が悪化した」「日本の民主党は子ども手当月2万6000円、高校授業料無償化、高速道路通行料無料を公約したが国家財政の問題で実現できず国民に謝罪した」として、無料給食に賛成する民主党を非難した。

ソウル市野党はそろって無償化に賛成

 一方のソウル市教育庁は「全員無料給食にすべき」という意見。

 ソウル市の野党である民主党もなんとしても無償給食を推進すべきとした。
 「子供たちに貧富の差を感じさせるべきではない。子供たちがみんな平等に無料で給食を食べられるようにすべき」
 「韓国の児童福祉支出はOECD平均より12兆ウォン(約9200億円)も少ない」
 「OECD加盟国の中で児童手当がないのは韓国、メキシコ、トルコ、米国だけである」
 「親の所得で子供を区分してはならない」
 「選別福祉ではなく普遍的福祉を目指すべきである」
 「児童福祉は平等であるべき。子供の頃から差別をあじわわせてはいけない」
 「既に一部の自治体では小学生全員を対象に無料給食を始めている。何の問題も起きていない」

 民主党はさらにこんな主張もした。「ソウル市だけ住民投票をするのはおかしい。住民投票のために税金を使うくらいなら、無料給食に使えばいい。無駄遣いだ」。確かに、ソウル市が公表した住民投票の費用は182億ウォン(約14億円)、投票用紙の印刷費は2億ウォン(約1500万円)であった。

 同じくソウル市の野党の進歩新党も無償給食に賛成した。「ソウル市の住民投票は、ソウル市民だけの問題ではない。韓国の福祉が拡大されるのかどうかを決める投票である。今の政権は福祉拡大という時代の要求に逆らっている」。民主労働党もこれに同調した。「ソウル市長は普遍的福祉を亡国政策と主張する。だが、普遍的福祉が行き届いている先進国ほど国家財政も健全である。世界的金融危機を、福祉予算を減らす言い訳にしてはならない」。

 これに対してソウル市長だけが過剰福祉であると異見を唱えたのだ。

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「小学生の給食無償化は税金の無駄遣いか?」の著者

趙 章恩

趙 章恩(ちょう・ちゃんうん)

ITジャーナリスト

研究者、ジャーナリスト。小学校~高校まで東京で育つ。ソウルの梨花女子大学卒業。東京大学学際情報学府博士課程に在学。日経新聞「ネット時評」、日経パソコン「Korea on the web」などを連載。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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