中国政府がブラマプトラ川――チベットを水源に、インドを経て、バングラデシュを流れる――の流れを変える計画を立てている。中国政府はこの計画を「送水プロジェクト」と呼ぶ。この計画をめぐって、中印両国は数カ月にわたって激しい議論を交わしてきた。
8月4日になって、インドのマンモハン・シン首相は同国上院(ラージヤ・サバー)において、心配の必要はないと言い切った。S・M・クリシュナ外相に対して向けられた質問に、同首相は「インドの国益を損なうことは一切ないとの保証を受けている」と答えた。
ブラマプトラ川の流れが変っても、差し迫った危険はないかもしれない。だが、ブラマプトラ川など中国の領土内に水源を持つ河川が国際政治の火種となるのは時間の問題だと考えられる。中国の一部地域で既に水不足が起きているからだ。
6000以上の湖が枯れ、砂漠化が進んでいる
水需要の急増により中国は、2030年には必要とする水の25%が不足する事態に直面すると予測されている。ムンバイのシンクタンクが、ヒマラヤ地方の水不足の問題について幾つものレポートを発表している、ストラテジック・フォーサイト・グループのサンディープ・ウォズレカー社長は「中国では現在6000以上の湖が干上がっている。黄河流域北部では流域の30%が干上がり、砂漠化が進んでいる」という。
こうした厳しい見通しを考えると、川を人工的に分流して流れを変えることが中国にとって唯一の方法であることは疑う余地がなさようだ。中国は、チベット高原を領土内に有しているため、ガンジス川やインダス川、ブラマプトラ川など南アジアを流れる主要河川について、上流国としての優位性を握っている。
中国からは約10本の川が11カ国に向かって流れている。幸運にも外国から流れてくる川は1本もない。このため、中国は唯一、他国の領土を流れる国際河川を意のままにできる立場にある。
ブラマプトラ川の流れを変えると影響は大きい
もし分流が行われれば、インドやバングラデシュ、パキスタン、ネパールなど下流地域の国々には深刻な影響が及ぶ。インド工科大学ルールキー校の水資源開発・管理学部長のナヤン・シャルマ氏は水の安全保障に関し、政府及び非政府組織とともに様々な角度から研究を行っている。同氏はこう語る。「将来、気候変動や人工的な分流が原因で、ツァンポ川(ブラマプトラ川のチベット自治区内での名称)の流量が少しでも減少すれば、下流地域における水資源の量に影響が及ぶことはまちがいない」。
別の心配もある。中国が同川流域で建設を計画しているダムの多くが、地震多発地帯にある。東チベットのツァンポ川に建設中の高さ116メートルのザンム(蔵木)ダムは、万が一大地震が起これば、インド北東部のアッサム州に壊滅的な被害をもたらす恐れがある。
分流による流量の減少は、同州を流れるブラフマプトラ川流域の地形を変える可能性もある。その結果、少量の雨が降っただけでも、洪水が発生する確率が高まる。
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