前回のコラムで、「Hulu(フールー)」などのネット映像配信の価値は、「配信」の部分でなく、検索・過去履歴・オススメ・ソーシャルなどといった「ネット独特のインテリジェンス」にある、ということを書いた。
このようにウェブの世界は、クラウドの中に存在するあらゆるデータを燃料として「インテリジェンス」を作り出す巨大な「発電所」の顔を持つ。そして、それを支える技術が、最近話題の「ビッグデータ」だ。
ビッグデータとは、膨大な量のデータを処理・分析し、その結果を業務に活用する仕組みのこと。金融など、定型的なトランザクションデータが膨大に発生する業界では、従来から自社内でそのデータを処理・分析して、株価の予測やオプション取引の価格づけなど、さまざまな目的に活用していた。
ところが、「ウェブ2.0」「クラウド」「ソーシャル」といった一連のネットの進化の中、ユーザーが生成するデータの増加、コンテンツのデジタル化、API(アプリケーションインタフェース)の公開、政府データの公開などに伴って、デジタルデータの総量が2007年前後から急増してきた。
これらをマッシュアップ(複数のウェブサービスの API を組み合わせ、あたかも1つのウェブサービスのようにすること)して使うアプリケーションも増えて、公開された非定型的なデータを大量に扱うようになった。
ウェブの世界では、データを原料としてサービスを生み出し、ユーザーがそれを使うとさらにデータが吐き出されて、新たなサービスの原料となる。いわば、知識で知識を生み出すことを可能にする「ビッグデータ」は、ウェブ業界の基幹技術であり、それをいかに使いこなしてプロダクトやビジネスモデルに結びつけるかが勝敗を決する。グーグルがヤフーに、フェイスブックがマイスペースに勝ったのは、ビッグデータの使い方の巧拙が大きく影響している。
しかし逆に言えば、もう既に皆が当たり前に使っている技術でもある。それが、なぜ今、改めて「ビッグデータ」という名称を付与されて急に注目を集めているのか。シリコンバレーでのビッグデータの活用状況の動向を、今回と次回の2回にわたってお伝えしようと思う。
ビッグデータの達人と言えるグーグル
ビッグデータの中心的な技術は、「Hadoop(ハドゥープ)」という、膨大なデータを分散処理するオープンソースのソフトウェアフレームワークだ。多くの企業に利用され、開発にも多くの開発者が参加しているが、そのコア技術はグーグルが自社利用のために作った技術に由来している。
グーグルは、ビッグデータそのものを体現したような会社だ。ユーザー側から見る「表の顔」は、検索、Android 携帯、Gメール、マップなど、別々のサービスに見える。しかしフタを開けると、その「中」にある根っこは、絡み合ったビッグデータである。そして、そこから芽を出した多くの植物を加工して異なるサービスにしているのだ。
グーグルがデータをさまざまな方法で収穫し、料理してサービスを作る様子は、スティーブン・レヴィ著『In The Plex : How Google Thinks, Works, and Shapes Our Lives』という本に詳しく述べられている。
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エノテック・コンサルティングCEO(最高経営責任者)。ホンダを経て1989年NTT入社。米国の現地法人で事業開発を担当。96年米ベンチャー企業のネクストウエーブで携帯電話事業に携わる。98年に独立し、コンサルティング業務を開始。米国と日本の通信・IT(情報技術)・新技術に関する調査・戦略提案・提携斡旋などを手がける。シリコンバレー在住。子育て中の主婦でもある。ブログ:

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