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2歳児ひき逃げ事件「我関せず」映す

中国社会にはびこる「義を見てせざる勇なき人々」

2011年10月28日(金)

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 浙江省の省都・杭州市にある“西湖”は“人間天堂杭州西湖(この世の天国、杭州の西湖)”と称される風光明美な湖であり、2011年6月に中国で41番目の世界遺産に登録された。2011年10月13日の午後、その西湖では小雨が降っていたが、多くの市民や観光客が煙雨に霞む西湖の景色を楽しんでいた。午後4時40分頃、1人の女性が西湖の岸辺から水中に身を投げた。静寂を破る水音に驚いた周囲の人々が慌てて湖面に目をやると、入水した女性はたちまちのうちに岸から20メートルほどの所まで流され、体は水没して見えず、水上に長い黒髪が漂っていた。しかし、周囲の人々はこれをただ眺めているだけで、救助しようという素振りを見せる者すらいなかった。

何ら逡巡することなく湖水に飛び込んだ

 すると突然に30歳位の外国人カップルが岸辺に飛び出して来た。どうするのかと見ていると、外国人女性はあっと言う間に上着を脱ぐとキャミソール1枚になり、何ら逡巡することなく湖水に飛び込んだ。彼女は達者な泳ぎで溺れている女性の所まで達すると、女性の衣服をつかんで岸辺まで泳ぎ戻った。救助された女性は相当量の水を飲んでいたので、一時激しくせき込んで水を吐き出したが、すぐに意識を取り戻した。これを確認した外国人女性は連れの男性と短く言葉を交わすと、上着を着て、名前を告げることなく、何ごともなかったかのように立ち去った。この間、わずか10分足らず。

 この救助劇を目撃した人によれば、外国人カップルは米国人のようだったが、そのてきぱきとした動きとスマートな態度はまるで“武侠小説(武術に長け、義理を重んじる人々を主人公とした小説)”の“女侠(女主人公)”のようだったとのこと。

 この救助劇がメディアを通じて報じられると、人々は近頃まれな“見義勇為(正義感に燃えて勇敢に行動する)”であるとほめたたえ、外国人カップルを捜し出そうと努力したが、結局見つからなかった。なお、救助された女性は杭州市の管轄下にある富陽市の出身で、近頃、生活も仕事もうまくいかずに悩んでいたが、気晴らしをしようと西湖を散策しているうちに空しくなって思わず身を投げたのだという。

 それにしても、困っている人を見たら、間髪を入れずにこれを助け、名前も告げずに去って行くというのは、スーパーマン、バットマン、さらにはスパイダーマンといった米国のヒーローを彷彿させるものがある。しかし、“見義勇為”を中国伝統の心意気と誇っている中国人が、湖水に身を投げた人を見ても、「触らぬ神に祟(たた)り無し」と眺めているだけで救助しようとせず、これに代わって「義を見てせざるは勇なきなり」とばかりに“見義勇為”を実践したのは米国人の女性ヒーローであった。

アクセルを吹かすともう1度ひいて走り去った

 この救助劇からわずか30分後の午後5時30分頃、広東省佛山市南海区にある全国最大の“五金市場(金物市場)”、“広佛国際五金城”<以下「五金城」>で、2歳の女の子がワゴン車と軽トラックによって2度もひき逃げされる事件が発生した。被害者の名前は“王悦”、愛称は“悦悦(悦ちゃん)”、つい数カ月前に幼稚園に通い始めたばかりの女の子であった。

 当日午後、幼稚園から戻った悦ちゃんはもうすぐ7歳になる兄と遊んでいた。しかし、兄が遊びに出かけると、悦ちゃんは2階で洗濯物を取り込んでいた母親の目を盗んで外へ出た。悦ちゃんの家は五金城内で店舗を営んでいるが、悦ちゃんは家を抜け出しては近所に住む同じ年頃の友達の所へ遊びにゆくことが度々あった。その日もこっそりと家を抜け出た悦ちゃんは、両側に店舗が並ぶ幅5メートルほど道路を友達の家へと向かい、自宅から100メートル程の距離にある“新華労働保護用品経営部”という店の手前まで来た所で、前から走ってきた白いワゴン車にひかれたのだった。後に同店の経営者はひき逃げ事件の発生には全く気づかなかったと述べている。

 最初のひき逃げ事件が発生したのは5時25分であった。その時、悦ちゃんは道路の左寄りをよちよち歩いていたが、後ろを振り返りながら歩くうちに道路の真ん中に出てしまった。ちょうどその時、前方から白いワゴン車がゆっくりと走って来たが、運転手は悦ちゃんには全く気づかない様子で、急に加速して悦ちゃんを巻き込み、右前輪で腰の部分をひいた。車が何かを乗り越えた感覚に運転手は異常を感じたようで一時的に車を止めたが、すぐにアクセルを吹かすと右後輪で悦ちゃんを乗り越えるかのようにもう1度ひいて走り去った。

コメント12件コメント/レビュー

他人事ではない。我が国の隣にいる13億人の民族の話である。日本は彼の国の被害を被らないよう対策を取るべきである。(2011/11/01)

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「2歳児ひき逃げ事件「我関せず」映す」の著者

北村 豊

北村 豊(きたむら・ゆたか)

中国鑑測家

住友商事入社後アブダビ、ドバイ、北京、広州の駐在を経て、住友商事総合研究所で中国専任シニアアナリストとして活躍。2012年に住友商事を退職後、2013年からフリーランサーの中国研究者として中国鑑測家を名乗る。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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記事のレビュー・コメント

いただいたコメント

他人事ではない。我が国の隣にいる13億人の民族の話である。日本は彼の国の被害を被らないよう対策を取るべきである。(2011/11/01)

倫理観よりも拝金主義が圧倒的に勝っているのが中国でしょう。10年ほど前にプールで溺れている子供を助けるのにプールサイドで助けるための価格交渉を溺れている子の親とする中国人の話題を聞いたことがあります。再生食用油も同じ次元から考えれば全て納得できます。(2011/11/01)

北京在住の者です。この背景には、親切で助けた人が濡れ衣を着せられてひどい目に遭った、といういくつもの事件が先にあるわけで、そういう正義の人が、納得いく処理を受けないからこういう現象が起きるとしたら、その対処の方が先ではないか、と。親切をしたら報いられる、という通念を作ることのほうが先ではないでしょうか。(2011/10/31)

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三品 和広 神戸大学教授